問題のくだりは以下のようになっている。
筑後川(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
「この工場もダメか」。カジュアル衣料大手、ストライプインターナショナル(岡山市)取締役の長瀬泰典(45)が手にするリストには、千を超える中国など海外工場の名前が並ぶ。そのほとんどは赤や灰色に塗られている。監査不合格。これまで合格したのはたった1割だ。
最新の流行を早く、安く――。世界を席巻するファストファッション。担い手は新興国の工場だ。だが2013年、バングラデシュで縫製工場の建物が崩壊して千人以上が亡くなる事故が発生。劣悪な労働環境が明るみに出ると、批判の矛先はアパレル産業に向かった。
同社もファストファッションで成長したが、社長の石川康晴(45)は「ビジネスモデルを大きく変えるしかない」と腹をくくった。その一歩が、14年9月に始めたブランド「KOE」だ。理念は「着る人も、つくる人も、幸せになる服」。児童労働や強制労働、公害のない工場とだけ取引する。
理念の浸透はこれからだ。1月下旬、記者は都内の店で購入客に話を聞いたが、知っている人はいなかった。時間がかかるのは覚悟のうえ。KOEは、労働に見合う価格で商品を買い取り、生産者の生活向上を支える「フェアトレード(公正な貿易)」が広がる欧米で普及をめざす。
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まず、「ストライプインターナショナル」に関しては、旧社名が「クロスカンパニー」だと記事に入れた方がいい。社名変更は3月1日で新社名は浸透していないし、旧社名はかなり知られている。その辺りの配慮ができないところが日経らしい。
ここから本題に入ろう。ストライプインターナショナルはビジネスモデルを大きく変えて「児童労働や強制労働、公害のない工場とだけ取引する」そうだ。裏返すと、これまでは児童労働や強制労働が当たり前の工場で製品を作らせていたのだろう。意地悪な見方をすれば、生産を委託する工場で児童労働や強制労働があっても見て見ぬふりをして低価格を実現するビジネスモデルを採用していたと言える。
しかも「児童労働や強制労働、公害のない工場とだけ取引する」のは「KOE」というブランドだけのようだ。素直に考えれば、他のブランドでは児童労働や強制労働があっても見て見ぬふりを今も続けているのだろう。
本当にそうならば、ストライプインターナショナルは結構ひどい会社に見える。これはあくまで記事を素直に解釈すればという話だ。記事の書き方に問題があって状況を正しく伝えきれていない可能性も高いが…。
ついでに「語順」について触れておこう。
【日経の記事】
ロスアルトス店(カリフォルニア州)で放し飼いで育った鶏の卵などを購入していたジョニー・エバンズ(40)は「一定の基準を満たした生産者からしか仕入れないから信用する」と語る。
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上記の書き方だと「ロスアルトス店で鶏を放し飼いしている」とも解釈できる。筆者は「ロスアルトス店で~購入していた」と伝えたいのだろう。今回の場合、読者に誤解を与える危険性は小さいが、危険性ゼロの方が好ましいのは当然だ。「放し飼いで育った鶏の卵などをロスアルトス店(カリフォルニア州)で購入していたジョニー・エバンズ」と語順を変えれば問題は簡単に解決する。
世に出る前に社内の多くの人間がチェックしている朝刊1面の連載でこうした記述が最後まで残ってしまうのは、日経の実力の低さの表れだろう。
※記事の評価はD(問題あり)。
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