梅の花(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
【日経ビジネスの記事】
何も考えずに元本保証の預貯金にお金を入れておけば数%の金利が付く時代もあったが、それは遠い昔。いまや普通預金金利が年0.001%という銀行も少なくない。100万円を1年間預けても、利息は単純計算でわずか10円だ。マイナス金利時代に突入し、個人は資産運用と向き合わざるを得なくなっている。
では、どう資金を運用すればいいのだろうか。そもそもマイナス金利は、金融商品に大きな影響を与えている。銀行預金のような金融商品であるMMF(マネー・マネージメント・ファンド)。取り扱っていた資産運用会社は新規募集を停止するだけでなく、最近では相次ぎ償還している。主に短期の公社債で設計するという商品設計上、金利低下で利回りが見込めないためだ。貯蓄性を重視した一時払い終身保険の取り扱いをやめる保険会社も出ている。
とはいえ、初心者がいきなり個別株や先物取引などに手を出すのも難しい。そこで現実的な選択肢として浮かぶのが株式や債券などを組み込んだ投資信託だ。証券会社が販売を独占していた投信は、1998年に銀行などの窓口でも販売できるようになった。「個別株投資はリスクが高い」「忙しいので運用はプロに任せたい」といった個人投資家のニーズを吸い上げて市場が拡大。現在では個人投資家が資産運用する際の主力商品の1つとなっている。
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記事の冒頭で杉原記者は「マイナス金利の導入で低リスクの運用商品は姿を消した」と断定している。上記のくだりで触れたMMFの募集停止などがその根拠なのだろう。しかし「姿を消した」と言い切ってしまうのは明らかな誤りだ。日経BP社には以下の問い合わせを送っておいた。
【日経BP社への問い合わせ】
日経ビジネス3月21日号の「スペシャルリポート~もう『カモ』とは呼ばせない マイナス金利下の投信運用術」という記事についてお尋ねします。筆者の杉原淳一記者は記事の書き出しで「マイナス金利の導入で低リスクの運用商品は姿を消した」と説明しています。これを額面通りに受け止めれば、低リスクの運用商品は現状では存在しないはずです。
しかし、個人向け国債の募集は3月も続いていますし、募集停止の方針も出ていません。MRFもマイナス金利政策の影響が及ばないように日銀が配慮しており、なくなる見込みは現状では薄そうです。個人向け国債やMRFは「低リスクの運用商品」ではないのでしょうか。さらに言えば、銀行預金も「低リスクの運用商品」として残っていますし、預金金利がマイナスになったわけでもありません。
個人向け国債やMRFを「低リスクではない」と考えるのも難しそうです。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。
御誌は読者からの間違い指摘を握りつぶす対応が常態化しつつあります。メディアとして説明責任をしっかり果たしていただけるよう重ねてお願いします。また、1週間経過しても回答がない場合、記事の説明は誤りと判断させていただきます。
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「いまや普通預金金利が年0.001%という銀行も少なくない。100万円を1年間預けても、利息は単純計算でわずか10円だ」と杉原記者は強調するが、普通預金の金利がほぼゼロという状況は最近始まったことなのか。マイナス金利政策によって預金金利がぼぼゼロからさらにゼロに近付いたからと言って、「マイナス金利時代に突入し、個人は資産運用と向き合わざるを得なくなっている」と考える必要があるのか。「金利はほぼゼロでいいから、安全性の高い銀行預金に金融資産は入れておきたい」と判断している個人が方針を改めなければならないような変化は起きていないはずだ。
しかし、杉原記者はMMFの募集停止などを持ち出した上で「とはいえ、初心者がいきなり個別株や先物取引などに手を出すのも難しい。そこで現実的な選択肢として浮かぶのが株式や債券などを組み込んだ投資信託だ」と誘導していく。「証券会社や銀行の回し者なの?」と聞きたくなるような書き方だ。
本当に「マイナス金利の導入で低リスクの運用商品は姿を消した」のならば、低リスクではない投信に誘導する手もある。しかし、預貯金も個人向け国債も「低リスクの運用商品」として残っている。それを知らないのならば、この手の記事を書く資格がないし、知っているのにあえて触れずに投信へと誘導するのならば、「金融業界の回し者」と思われても仕方がない。
この記事には他にも問題を感じた。それらについては(2)で触れる。
※(2)へ続く。
追記)結局、回答はなかった。
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