12日の日本経済新聞朝刊 金融経済面に載った「野村アセット、運用一任~独立系アドバイザー経由、SBI証券と」という記事には筋の悪さを感じた。全文は以下の通り。
錦帯橋 |
【日経の記事】
野村アセットマネジメントは独立系金融アドバイザー(IFA)を通じ、運用を金融機関に一任するファンドラップの提供を始める。まず、SBI証券の口座で金融商品を取り扱うIFAと組む。拡大するIFA市場を通じて長期資産形成の需要を取り込む狙いがある。
サービス名は「ゴールベースラップ」で、最低投資金額は1千万円。IFAの利用者がリスク許容度を5段階で答えると、野村アセットが運用する株や債券などを組み入れたバランス型ファンドに投資できる。運用報酬は税込みで年率2%程度。対象ファンドの保有で発生する実質的な信託報酬の平均合計額を加えても、全体の費用は年2%強となる見込みだ。
IFAにはSBI証券傘下のSBIマネープラザなど金融事業者に加え、保険代理店や小売りなど事業会社の間でも登録する動きが相次いでいる。口座管理の金融機関も今後、SBI証券から他の証券会社などに広げる考えだ。
フィンテック企業の日本資産運用基盤グループ(東京・中央)や金融情報会社QUICKが開発したシステムも活用する。
◎日経グループ案件だと明示しよう!
最後に「フィンテック企業の日本資産運用基盤グループ(東京・中央)や金融情報会社QUICKが開発したシステムも活用する」とサラッと書いている。多くの読者は「QUICK」が日経グループの会社とは知らないだろう。今回の記事は自社モノとも言える。その類の記事を載せるなとは言わない。しかし、載せるならば自社モノだと読者にきちんと伝わる書き方をしてほしい。
この記事には他にも問題を感じる。
そもそも、どこに新規性があるのだろう。「IFAと組む」ことなのか。しかし「IFAと組む」初の事例といった記述は見当たらない。「QUICK」が絡むから3段見出しを付けたのだろうが、それに見合うニュース性は記事から伝わってこない。
「運用報酬は税込みで年率2%程度。対象ファンドの保有で発生する実質的な信託報酬の平均合計額を加えても、全体の費用は年2%強となる見込みだ」と、あたかも低コストのように書いているのも感心しない。信託報酬0.1%前後のインデックスファンドが多数あるのに「ファンドラップ」に「年率2%程度」の「運用報酬」を支払う合理性はない。
しかも投資家は「バランス型ファンド」に誘導される。低いリターンしか見込めない「債券」での運用にも費用がかかる「バランス型ファンド」は「運用報酬」が低くても選ぶべきではない。
「独立系金融アドバイザー(IFA)」という肩書を見て「独立性が高い人のようだから助言を信じてもいいのかも」などと思ってしまうカモを相手にコストの高い投資商品を売り付けるというのが「ゴールベースラップ」の狙いだろう。「野村アセットマネジメント」や「SBI証券」は事業によって利益を上げる必要があるので、この手の商品を出すのも分かる。
しかし、日経は読者(特に投資初心者)に寄り添う姿勢が欲しい。自社モノといえども、そこは譲れないとの矜持を持つメディアに生まれ変わってほしい。
※今回取り上げた記事「野村アセット、運用一任~独立系アドバイザー経由、SBI証券と」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220412&ng=DGKKZO59891420R10C22A4EE9000
※記事の評価はE(大いに問題あり)
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