2021年12月7日火曜日

ミス放置常習犯の日経が「過ちて改めざる、これを過ちという」と説いても…

読者からの間違い指摘を無視してミスを放置する。これが好ましくないのは社内の多くの人間が理解できるはずなのに、プライドが邪魔するのか悪しき伝統を捨てられない。それがメディアとしての日本経済新聞の立ち位置だ。そんな日経が他者を批判して説得力が生まれるだろうか。これを踏まえて、7日の朝刊1面コラム「春秋」の全文を見ていこう。

夕暮れ時

【日経の記事】

野球日本代表の監督に就任した栗山英樹さんが、自著にこんなことを書いていた。「自分が進退をかけることで、選手のためになれることがあるんだったら、そんなに幸せなことはない」(「稚(ち)心(しん)を去る」)。さらに、責任は「取る」ものではなく「果たす」ものであると続く。

日本ハムを10年率い、その間最下位も経験した。負ければクビ、の厳しい世界。でも辞めればいいというものではない。重責を担う自覚を常に持ち、チームを成長させる努力を尽くす。そんな意味と読んだ。「選手のため」の先にはファンの顔も浮かんでいたはず。指揮官としてどうあるべきか自問自答してきたのだろう。

同じような覚悟があったのか聞いてみたい。システム障害を繰り返したメガバンクの経営陣と無免許運転の罪で在宅起訴された元都議に、である。辞めるのは無理からぬこと。ただATMの前に立った利用者の不安や、すったもんだの辞職劇で有権者が抱いた都政への不信感はなお拭えない。辞めて一件落着とはなるまい。

脱税容疑で逮捕されたマンモス大学の元理事長と彼の暴走を許した幹部らもしかり。大学が先週公表したコメントには「もっとも重要なことは本学の体制変革」とあった。その言葉が実現して初めて責任を果たしたことになるのだろう。栗山監督が愛読する論語にもこう書いてある。「過ちて改めざる、これを過ちという


◎他者を批判する前に…

システム障害を繰り返したメガバンクの経営陣と無免許運転の罪で在宅起訴された元都議」「脱税容疑で逮捕されたマンモス大学の元理事長と彼の暴走を許した幹部ら」。春秋の筆者は様々な人へ批判の矛先を向け「野球日本代表の監督に就任した栗山英樹さん」と「同じような覚悟があったのか聞いてみたい」と記している。

ならば自らに問うてみてはどうか。日経はメディアとして「どうあるべきか自問自答してきた」のか。その結果が、ミス放置は当たり前との悪しき伝統なのか。それで読者への「責任を果たしたことになる」のか。

過ちて改めざる、これを過ちという

その言葉は日経自身に向けられるべきだ。

人のふり見て我がふり直せ

追加でこの言葉を日経には贈りたい。ミス放置の悪しき伝統から脱却して「初めて」メディアとしての「責任を果たしたことになる」のではないか。


◇   ◇   ◇


せっかくなので11月18日に問い合わせた間違い指摘を再掲しておく。2週間以上経ってもやはり回答はない。


【日経への問い合わせ】

18日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「円の実力、低下傾向続く~実質実効レートが50年ぶり水準に接近 円安、成長に寄与せず」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

21年になると円の実質実効レートは9%下げ、主要通貨で独歩安になった。ドルは5%上昇し、ユーロは3%の下落にとどまる。新型コロナウイルス禍からの経済回復過程で、日本の物価が海外と比べて上がらないことが影響している

独歩安」とは「為替相場で、単独の通貨のレートだけが下がること」(デジタル大辞泉)です。「主要通貨」を「」「ドル」「ユーロ」とした場合、「」が「主要通貨で独歩安になった」のならば「ドル」と「ユーロ」は「上昇」しているはずです。しかし「ユーロは3%の下落」。つまり「」の「独歩安」ではありません。「ドル」の「独歩高」です。

」が「主要通貨で独歩安になった」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

せっかくの機会なので、もう1つ指摘しておきます。

円の実質実効レート」が下がった要因について「日本の物価が海外と比べて上がらないことが影響している」と書いています。この説明は間違いではないものの不適切です。

物価上昇率が低い国の通貨は名目レートが上昇するのが基本です。本来ならば「日本の物価が海外と比べて上がらない」場合は名目レートが円高となり調整されます。その調整が進まないから「円の実質実効レート」が低下していると見るべきでしょう。

なぜ調整が起きないのか。そこを解説しないと「円の実質実効レート」が下がっている理由は見えてきません。

日本の物価が海外と比べて上がらないことが影響している」のならば、物価が上がれば「円の実質実効レート」も上がっていくはずだと多くの読者は思うでしょう。しかし、相対的に物価上昇率が高くなれば名目レートに下押し圧力がかかると考えるべきです。

記事の筆者は、物価動向が名目レートに与える影響を無視したまま「円の実質実効レート」の下落を論じているのではありませんか。

問い合わせは以上です。「独歩安」に関しては回答をお願いします。日経では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表するメディアとして責任ある行動を心掛けてください。


◇   ◇   ◇


※今回取り上げた記事「春秋」

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211207&ng=DGKKZO78213070X01C21A2MM8000


※記事への評価は見送る

0 件のコメント:

コメントを投稿