23日の日本経済新聞朝刊グローバル市場面に載った「Review2021(1)投資信託 『指数連動』けん引 流入最高~4.8倍160兆円、緩和マネー追い風 株価形成ゆがめる懸念」という記事に首を傾げたくなる記述があった。そこを見ていこう。
有明海のカモメ |
【日経の記事】
パッシブはアクティブや個別株投資に比べ手数料が低く、管理の手間もかからないため、パッシブ株式ファンドを初めて購入した個人も多かったとみられる。
◎個別株より手数料が低い?
「パッシブ」型ファンドは「個別株投資に比べ手数料が低く」なると書いているが、そうだろうか。売買手数料は微妙だが「個別株」は信託報酬などが不要なので「手数料」の面では「パッシブ」より有利ではないのか。
「パッシブ」は「アクティブや個別株投資に比べ」て「管理の手間もかからない」とも思えない。買ってそのまま保有し続ける前提で言えば「パッシブ」でも「アクティブ」でも「個別株」でも「手間」はほとんど変わらないはずだ。
日経は「パッシブ」運用に言及する場合「個別企業の分析を通じた適正な株価が形成されにくくなる懸念がある」と解説する傾向がある。今回もそうだ。この件についても少し考えてみたい。
【日経の記事】
ただ、年々パッシブ株式ファンドへ投資が偏る中、個別企業の分析を通じて適正な株価をつける市場機能がゆがむ懸念が強まっている。通常、経営が優れた企業の株価は高く、不振であれば安く評価されるが、パッシブ株式ファンドを買えば、指数対象の銘柄すべてを買うことになる。株価下落を見込んで不振企業の株を空売りしてもパッシブ買いで株価が下がりにくくなるなど、市場での収益機会が減る恐れもある。
◎「収益機会」はむしろ増えるのでは?
「パッシブ株式ファンドへ投資が偏る」と「適正な株価をつける市場機能がゆがむ」としよう。それは「アクティブ」投資家にとってチャンスだ。「パッシブ株式ファンド」による機械的な売買によって株価は適正水準から上にも下にも動きやすくなる。下に行ったら買いを入れればいいし、上に行ったら「空売り」する手もある。
記事で言うように、業績悪化局面なのに「パッシブ買いで株価が下がりにくくなる」こともあるだろう。だが逆も期待できる。「空売り」対象企業の業績が予想したほど悪化しなかったのに「パッシブ」の売りが出て株価が意味もなく下がるかもしれない。
あまり材料がないのに株価が上下するのならば裁定機会は増えると見るべきだ。自分が「アクティブ」運用の投資家ならば「市場での収益機会が減る恐れ」は抱かないが…。
※今回取り上げた記事「Review2021(1)投資信託 『指数連動』けん引 流入最高~4.8倍160兆円、緩和マネー追い風 株価形成ゆがめる懸念」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211223&ng=DGKKZO78678590S1A221C2ENG000
※記事の評価はD(問題あり)
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