2021年9月27日月曜日

自らは「民間の知恵」を出さない日経 藤井彰夫論説委員長に「望むこと」

27日の日本経済新聞朝刊オピニオン2面に藤井彰夫論説委員長が書いた「核心~『第100代首相』に望むこと」という記事に絡めて「日経の論説委員長に望むこと」を記してみたい。記事の終盤を見ていこう。

耳納連山と夕陽

【日経の記事】

(新首相への)3つ目の要望が「新政策ビジョン」の策定だ。平成時代はバブル崩壊後の混乱からの再生にもがき苦しんだ30年だった。戦後の高度成長を支えた昭和モデルは賞味期限をすぎたのに新たな成功モデルはつくれなかった。

暗い未来予測だけでなく日本を元気にする将来ビジョンがあったほうがよい。絵空事ではなくデータや根拠に裏付けられた実効性が伴うものだ。策定には霞が関だけでなく民間の知恵も結集したい。政府内に政策会議が乱立しているが、思い切って再編し将来ビジョンをつくる会議を設けてはどうだろうか。


◎日経が「将来ビジョン」を打ち出そう!

日経の論説委員の多くは社説であっても明確な社論を打ち出したがらない。判断が難しい問題になると「しっかり議論を」で逃げてしまう。これでは意味がない。藤井論説委員長も例外ではないようだ。

今回の記事でも「暗い未来予測だけでなく日本を元気にする将来ビジョンがあったほうがよい」とは言うものの、具体策は示していない。

策定には霞が関だけでなく民間の知恵も結集したい」と思うのならば、まずは「民間の知恵」の1つとして日経が「日本を元気にする将来ビジョン」を打ち出してほしい。その上で新首相に「将来ビジョン」の策定と実行を迫るべきだ。

日本を元気にする」という抽象的な表現も引っかかる。これが「日本の経済成長力を高める」という意味ならば、有効な「ビジョン」を打ち出すのは困難だし、打ち出す必要もないと個人的には思う。

しかし藤井論説委員長は「あったほうがよい」との立場だ。日経には多くの記者もいて「知恵」も出せるはずだ。論説委員長という役職にありながら「将来ビジョンをつくる会議を設けてはどうだろうか」などと政府頼みでいいのか。

追加で注文を付けておきたい。記事は以下のように続いて終わる。


【日経の記事】

東京五輪・パラリンピックは時代の分水嶺になるのではないか」と冨山和彦・経営共創基盤グループ会長は言う。昭和への郷愁を残した五輪と、若いアーティストらの活躍が目立ったパラリンピックの開会・閉会式を比べ、ネット上では後者に新時代の息吹を感じたという意見が目立った。オリパラを通じ若い日本人アスリートの活躍に勇気づけられた人も多い。大谷翔平選手や藤井聡太三冠の活躍には目を見張るものがある。

必要なのは若者たちがいきいきと活躍できる昭和から令和への経済社会のバージョンアップだ。自民党総裁選から総選挙までの2カ月間は日本の将来にとって極めて重要な時期だ。与野党とも大きな将来ビジョンを示し、骨太な政策論争を繰り広げてほしい。


◎色々と分からないことが…

上記のくだりは説明が足りなさ過ぎて何が言いたいのかよく分からない。

東京五輪・パラリンピックは時代の分水嶺になるのではないか」とのコメントを使っているが「オリパラ」を境にどう「時代」が変わるのか謎だ。

強引に解釈すれば「オリパラ」前は「若者たちがいきいきと活躍でき」ない時代で、これからは違うということか。しかし「大谷翔平選手や藤井聡太三冠の活躍」は「オリパラ」前に起きている。

しかも「五輪」は「昭和への郷愁を残し」ていたらしい。「新時代の息吹を感じ」られたのが「パラリンピックの開会・閉会式」限定ならば、「時代」の変化も限定的となりそうなものだ。なのに「オリパラ」が「時代の分水嶺になる」のか。

必要なのは若者たちがいきいきと活躍できる昭和から令和への経済社会のバージョンアップだ」という書き方も上手くない。これだと「若者たちがいきいきと活躍できる」が「昭和」を修飾しているように見える。

必要なのは、若者たちがいきいきと活躍できる令和へと、昭和モデルを脱却して経済社会をバージョンアップさせることだ」などと直せば問題は解消する。

さらに疑問は残る。「大谷翔平選手や藤井聡太三冠の活躍」にも見られるように「令和」では「若者たちがいきいきと活躍できる」状況が既に実現している。なのになぜ「令和への経済社会のバージョンアップ」が「必要」なのか。

実は「若者たちがいきいきと活躍できる」環境は整っていないとの認識なのか。しかし、そう取れる記述は見当たらない。

色々と疑問が残る中で「与野党とも大きな将来ビジョンを示し、骨太な政策論争を繰り広げてほしい」と「しっかり議論を」型の結論に至ってしまう。

まずは日経の論説委員長として日本の将来に関する「大きな将来ビジョンを示し」てほしい。それが一読者として藤井論説委員長に「望むこと」だ。


※今回取り上げた記事「核心~『第100代首相』に望むこと

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210927&ng=DGKKZO76028760U1A920C2TCT000


※記事の評価はD(問題あり)。藤井彰夫論説委員長への評価はC(平均的)からDへ引き下げる。藤井論説委員長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

現状は「自由貿易体制」? 日経 藤井彰夫編集委員に問う
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/07/blog-post_9.html

北欧訪問の意味がない日経 藤井彰夫論説委員「中外時評」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_12.html

農産物の「自由貿易」は望まない日経 藤井彰夫編集委員の矛盾
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/09/blog-post_28.html

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