FACTA7月号は創刊15周年記念号らしい。最近は記事の質低下を感じることもあり、素直に祝意を示す気にはなれない。例えば「コロナで赤っ恥『高島屋』村田社長」という記事。「『高島屋』村田社長」のダメさを伝えたいのだろうが、まともな材料が見当たらない。
夕暮れ時の筑後川 |
ここで言う「コロナで赤っ恥」とは「日本百貨店協会(百協)は政府や大阪府に、宣言中の休業要請を回避する要望書を提出した」ものの認められなかったことを指しているようだ。どこが「赤っ恥」なのか理解に苦しむ。行政の対応に不満があれば「要望書」を出すのはおかしくない。百貨店への「休業要請」は理不尽な面もある。
「要望」が政府や自治体に「黙殺」されたとしても、何も行動しないよりはいい。その意味で「百協の会長を務める」「高島屋社長の村田善郎」氏に責めるべき点は見当たらない。
では、他に何か問題があるのだろうか。当該部分を見ていこう。
【FACTAの記事】
百協の会長を務めるのは高島屋社長の村田善郎だ。村田は柏店店長や企画本部長などを経て2019年に社長に就任。社内では能吏として知られ、労働組合にも長期専従し委員長まで務めた。百協の会長には20年に就いている。
理路整然とした語り口、物腰の柔らかさ、組合時代に培った交渉能力——。高島屋社内だけでなく百貨店業界関係者も一目を置く村田は百協会長になって以降、百貨店復権に向けて猛烈に動いてきた。経済産業省の幹部とのパイプを生かし、同省で3月に立ち上げた「百貨店研究会」は成果の一つだろう。
研究会のテーマは表向きDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や働き方改革だが裏テーマがある。コロナ禍で苦しむ百貨店を国が支援することへ道筋をつけようというものだ。オブザーバーとして公正取引委員会も入り、規制緩和や様々な支援策が検討される予定だった。ところが、村田が尽力した行政との蜜月関係の構築は、緊急事態宣言とその後のドタバタであえなく崩れ去りそうな様相だ。
百協の関係者は「村田さんを応援したいんだけれど、担いでいいのかどうか不安だ」と語る。
村田は高島屋社内で会長の鈴木弘治に頭が上がらない。03年から社長、14年から会長を務める鈴木は文字通り高島屋の「ドン」。鈴木が組合委員長時代に村田が部下だったという関係もあり、鈴木にとって村田は「子飼い」なのだ。
高島屋の21年2月期決算は339億円の最終赤字に沈んだ。業績不振もあり、鈴木と村田の間の隙間風が強まっているとの見方が消えない。村田自身、「いつまで社長を続けられるか分からない」と冗談とも本気ともつかない発言をするため、業界が村田の下で一致団結とならない。
◎「鈴木弘治」氏を責めるべきでは?
「業界が村田の下で一致団結とならない」のは、元々「会長の鈴木弘治」氏の「子飼い」だからだと筆者は見ているようだ。だとしたら問題は「村田」氏の側にない。問題視すべきなのは「鈴木」氏だ。
「ドン」がいつまでも権力を手放さないから「村田さんを応援したいんだけれど、担いでいいのかどうか不安」と思われてしまうのではないか。「ドン」に逆らえば「社長を続けられ」なくなるのが「高島屋」の権力構造ならば「村田」氏にできることは限られている。
しかし、なぜか「鈴木」氏の長期政権を問題視せず「村田」氏を前面に押し出して批判記事を書いている。実質ナンバー2の「子飼い」に当たる人物に焦点を当てても、あまり意味がない。論じるならば、中心に据えるべきは「鈴木」氏だろう。
記事の結論部分も見ておく。
【FACTA】
業界団体トップがドンに首根っこを抑えられ、業界盟主は業績悪化から抜け出せず。これだけ人材が払底していれば行政がバカにするのも無理はない。百貨店に淘汰の波が押し寄せるのも時間の問題だ。
◎まだ「波」は来てない?
「百貨店に淘汰の波が押し寄せるのも時間の問題だ」との書き方から判断すると、まだ「淘汰の波が押し寄せ」ていないと筆者は信じているのだろう。そごうが経営破綻してから20年以上が経過し、その後も業界は縮小傾向にある。まだ「淘汰の波」が来ていないと思い込んでいるのならば、筆者は「百貨店」について知らなさすぎる。
※今回取り上げた記事「コロナで赤っ恥『高島屋』村田社長」https://facta.co.jp/article/202107013.html
※記事の評価はD(問題あり)
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