起きては困ることについては考えないーー。週刊ダイヤモンド7月3日号に日本総合研究所 国際戦略研究所理事長の田中均氏が書いた「G7サミットの宣言は中国との『衝突の序曲』なのか」という記事を読んで、そう感じた。
熊本港 |
中国に関しては「行動そのものが穏健化していく可能性が全くないわけではない」とした上で以下のように記している。
【ダイヤモンドの記事】
日本はどうすべきか。
米国追随に徹するだけということがあってはならない。
米国はすでに2022年中間選挙に向けて政治的動きが強くなっている。バイデン大統領はオバマ政権の副大統領として「中国に弱腰」だったとの批判に極めて神経質となっている。対中強硬姿勢を変えることはないだろう。
日本は中国の覇権的行動を阻止すべく、日米安保体制を強化していく必要はある。だが同時に、中国との関係を断ち切るわけにはいかない。
過去四半世紀にわたり成長しない日本経済を支えてきたのは外需であり、特に中国との経済の相互依存関係だった。東南アジア諸国も中国を第一のパートナーとして重視しており、この地域の貿易・投資が縮小していくのは日本経済の展望をさらに厳しくする。
米国と外交や安全保障などで共同歩調を取る必要はもちろんあるが、同時に中国を巻き込みルールに基づく経済圏を構築していくことが日本にとって必須となる。
◎問題はその先なのに…
中国に「穏健化」を促していくのは悪くない。そうすれば「中国との関係を断ち切る」ことなしに「米国追随」路線も維持できるだろう。問題は「穏健化」と逆の展開になった時だ。
「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と米国インド太平洋軍のデービッドソン司令官も語っているようなので、この可能性が現実になった場合を想定しておく必要はある。なのに田中氏は、そこに触れていない。
「米国追随に徹するだけということがあってはならない」「中国との関係を断ち切るわけにはいかない」との前提で考えてみよう。この場合は「中国が台湾を侵攻」しても「中国との関係を断ち切る」ことはできない。米国が軍事力を行使して台湾を守ろうとするならば、日本は米国と一線を画す立場を鮮明にすべきだ。つまり「中国の覇権的行動を阻止すべく、日米安保体制を強化していく」選択はなくなる。
では、米国と共に軍事力を行使して台湾を守る選択をした場合はどうなるか。この場合「中国との関係を断ち切る」覚悟は要る。
米国が軍事力を行使してでも台湾を守るとの前提では、台湾有事は日本にとって大きなジレンマとなる。米国を選べば中国を捨てることになる。中国を選べば米国の怒りを買う。その時にどういう選択をすべきかを田中氏はなぜ論じないのか。
「起きては困ることは起きない前提で考える」という思考回路になっていないか。「国際戦略研究所理事長」として、それでいいのか。自問してほしい。
※今回取り上げた記事「G7サミットの宣言は中国との『衝突の序曲』なのか」
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