2020年5月5日火曜日

韓台の「スマホ監視」を日経 青木慎一科学技術部長は称賛するが…

日本経済新聞の青木慎一科学技術部長が5日の朝刊1面に書いた「アナログ行政、遠のく出口」という記事について思うところを述べてみたい。まずは前半部分を見ていこう。
桜と菜の花(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係

【日経の記事】 

新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が5月31日まで延長されることが決まった。感染拡大を抑えるにはやむをえないが、検査の拡充や医療体制の強化など経済再開に不可欠な対策が一向に進んでいない。硬直的な行政システムに問題がある。ITや民間活力の導入という21世紀の世界標準から取り残されてしまったままでは、ウイルスとの闘いに勝つことは難しい。

いち早く感染を封じ込めた台湾と韓国。成功の要因には、ビッグデータやスマートフォンの積極活用がある。台湾は公的保険や出入境管理などの記録を結びつけ、感染リスクがある人を素早く発見し、スマホで健康状態を監視した。韓国は人工知能(AI)などを活用し、検査の大幅な拡大につなげた。濃厚接触者の発見や監視などもスマホを活用する。こうした取り組みは出口戦略でも大きな武器になっている。

一方、日本の対策はアナログだ。保健所の職員などが電話で患者を聞き取り、感染経路を調べる。初めのころは機能したが、感染者が急増すると追えなくなってきた。検査についても1日2万件の目標にはほど遠い状況なのに、民間の受託検査機関の能力を生かせていない



◎監視されるくらいなら…

個人的には新型コロナウイルスをあまり恐れていない。「いつか自分も感染するだろうな。その時に重症化しないように健康には気を付けておかないと」ぐらいの認識だ。なので、厳しい感染防止策は望んでいない。

その立場から言えば「スマホで健康状態を監視」「濃厚接触者の発見や監視などもスマホを活用」といった話を聞くと「台湾と韓国」ではなく「日本」に住んでいて良かったと感じる。

「何よりも感染防止が重要」という考えを否定するつもりはない。ただ、個人への「監視」が行き届いている点を手放しに評価されると少し怖くなる。

ついでに1つツッコミを入れたい。「民間の受託検査機関の能力を生かせていない」のは「日本の対策はアナログ」だと言える事例の1つなのか。「アナログ」とかデジタルの問題ではない気がする。

記事の後半にも気になる部分があった。

【日経の記事】

スピード感に欠く対応は霞が関の縦割り行政に問題がある。感染症対策は厚生労働省がほぼ一手に担い、他省庁は関与しない

強い権限をもった行政システムが20世紀の日本の成長を支えたが、その成功体験が21世紀モデルへの転換を阻んだ。オンラインによる診療や教育に出遅れたのも、20世紀型の行政から抜けきれなかったからだ。その足元を新型ウイルスに突かれた。このまま出口への戦略が見えないままでは、経済が活力を取り戻すのも難しくなる。



◎「縦割り」の問題ある?

縦割り行政」が問題なのは「類似した行政が別々の機関で行われ、手続きが二度手間になったり、行政機関同士の綱引きで行政事務が変更になったりする弊害が生まれている」(百科事典マイペディア)からだ。

しかし「感染症対策は厚生労働省がほぼ一手に担い、他省庁は関与しない」のであれば「縦割り行政」の問題は感じられない。「行政機関同士の綱引き」も起きていないはずだ。

強い権限をもった行政システムが20世紀の日本の成長を支えたが、その成功体験が21世紀モデルへの転換を阻んだ」との解説も納得できない。「行政システム」が今も「強い権限をもった」ままならば「感染症対策」を強力に推し進められたはずだ。

オンラインによる診療や教育」に関しても、多少「出遅れた」としても「強い権限」を用いて一気に挽回できそうだ。この辺りは青木部長の認識に問題があるのか、説明が不十分なのか分からないが「なるほど」と思える内容ではない。

最後に1つ。「強い権限をもった」の「もった」は「持った」と漢字表記してほしい。平仮名表記のメリットはないはずだ。



※今回取り上げた記事「アナログ行政、遠のく出口
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200505&ng=DGKKZO58781700U0A500C2MM8000


※記事の評価はC(平均的)。青木慎一科学技術部長への評価も暫定でCとする。

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