2019年11月18日月曜日

水無田気流氏のデータの扱いに問題あり 日経「ダイバーシティ進化論」

詩人・社会学者の水無田気流氏に言わせれば、「スウェーデン」は「出生率が回復している先進国」で日本は違うのだろう。しかし、この2つは非常に両立しにくい。「スウェーデン」を「回復」組に入れるのならば、日本も入れるしかないと思える。
福岡市立福岡女子高校  ※写真と本文は無関係です

そこに無理があるので、日本経済新聞の女性面に書いた記事の辻褄が合わなくなっている。

以下の内容で問い合わせを送ってみた。

【日経への問い合わせ】

水無田気流様  日本経済新聞社 女性面編集長 中村奈都子様

18日朝刊女性面に載った「ダイバーシティ進化論~寡婦控除めぐる対立 何示す? 『規範的家族像』に固執」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

日本の出生数は90万人を割り込む見通しだ。少子化対策として何一つ有効な政策手段を取ってこなかったことの証左といえる。出生率を回復させたスウェーデンは18年現在、女性の平均初婚年齢が33.9歳、第1子出産時の平均年齢は29.3歳だ。出生率が回復している先進国はいずれも、婚外子出生率が5割を超える

18年の出生数91.8万人、最低を更新 出生率は1.42」という6月7日付の日経の記事では「(日本の)出生率は05年に最低の1.26を記録してから緩やかに回復し、ここ3年は1.4近辺で推移する」と説明しています。

水無田様が「出生率を回復させた」例として挙げている「スウェーデン」は2000年から10年ほどの回復期を経て、その後やや低下傾向となっています。それを「出生率を回復させた」例としているのですから、日本も「出生率を回復させた」と見てよいでしょう。

問題は「出生率が回復している先進国はいずれも、婚外子出生率が5割を超える」との記述です。記事でも触れているように、日本での「婚外子出生率は2%台と極めて低い」はずです。当然に「婚外子出生率が5割を超え」てはいません。

出生率が回復している先進国はいずれも、婚外子出生率が5割を超える」との説明は誤りではありませんか。日本という例外があるはずです。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

付け加えると「少子化対策として何一つ有効な政策手段を取ってこなかったことの証左」として、なぜ「出生数」を持ち出したのも引っかかります。「出生率」で見ると「少子化対策として何一つ有効な政策手段を取ってこなかった」という説明と整合しないからではありませんか。

出生数」で見るのが適切との判断ならば、「スウェーデン」などに関しても「出生率」ではなく「出生数」を基に論じるべきです。ご都合主義的にデータを用いていませんか。

せっかくの機会なので以下の説明にも注文を付けておきます。

出生率が回復している先進国はいずれも、婚外子出生率が5割を超える。結婚と出産と同居開始のタイミングがカップルごとに自由に選択できる社会が背景にある。一方で日本は今なお『法律婚・同居・出産』の三位一体型だ。女性は平均29.4歳で結婚し、30.7歳で第1子を出産する。婚外子出生率は2%台と極めて低い

日本では「結婚と出産と同居開始のタイミングがカップルごとに自由に選択」できないと取れる書き方ですが、結婚可能な年齢に達していれば「結婚と出産と同居開始のタイミング」は「自由に選択」できます。「結婚」から一定期間以内に「同居開始」せよといった法的規定はないはずです。

日本は今なお『法律婚・同居・出産』の三位一体型だ」との説明は曖昧で分かりにくい面がありますが、基本的には間違いでしょう。そもそも「結婚」しても「出産」しない夫婦は当たり前にいます。そうした「カップル」の存在はどう位置付けているのですか。

法律婚・同居・出産」をほぼ同時期にするのが「三位一体型」との認識ならば、明らかに違います。長く「同居」してから「法律婚」に踏み切る「カップル」も珍しくありません。「結婚」のスタイルは水無田様が考える以上に多様化しているのではありませんか。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。

最後に、中村様にお願いです。日経では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界最強のビジネスメディア」であろうとする新聞社の一員として責任ある行動を心掛けてください。


◇   ◇   ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「ダイバーシティ進化論~寡婦控除めぐる対立 何示す? 『規範的家族像』に固執
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191118&ng=DGKKZO52215650V11C19A1TY5000

記事の評価はE(大いに問題あり)。水無田気流氏への評価はEを据え置く。同氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経女性面「34歳までに2人出産を政府が推奨」は事実?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/34.html

日経女性面に自由過ぎるコラムを書く水無田気流氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_5.html

日経女性面で誤った認識を垂れ流す水無田気流氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/blog-post_30.html

「男女の二項対立」を散々煽ってきた水無田気流氏が変節?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_58.html

水無田気流氏のマネーポスト批判に無理がある日経「ダイバーシティ進化論」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/blog-post.html

水無田気流氏の「女性議員巡る容姿偏向報道」批判は前提に誤り?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_14.html

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