2018年11月13日火曜日

森井裕一東大教授の記事の拙さを直せない週刊エコノミストの罪

簡潔に分かりやすく記事を書くことを学者に求めるのは酷だ。説明下手な書き手も多い。学者に記事を書いてもらう場合、その辺りは執筆を依頼したメディアが気を配るべきだ。週刊エコノミスト11月20日号に載った「メルケル首相が党首辞任を表明 流動化するドイツ政治」という記事は、そこが足りない。

東京・渋谷のスクランブル交差点
    ※写真と本文は無関係です
筆者の森井裕一東大教授は事実関係の認識を誤ってはいないと思う。書き方が拙いだけだ。週刊エコノミストの担当者がしっかりしていれば、問題のない記事に仕上げられたはずだ。

編集部には以下の内容で問い合わせを送った。

【エコノミストへの問い合わせ】

東京大学大学院 総合文化研究科教授 森井裕一様  週刊エコノミスト編集長 藤枝克治様

11月20日号の「メルケル首相が党首辞任を表明 流動化するドイツ政治」という記事についてお尋ねします。記事では「ヘッセン州で10月28日に実施された州議会選挙」に触れて「CDUが得票率27・2%と前回13年の選挙時に比べ11・1%も得票を減らし、その票が緑の党や反移民・難民の右翼ポピュリスト政党『ドイツのための選択肢(AfD)』に流れた」と解説しています。

これを信じれば「CDU」が得た票は「前回13年の選挙時に比べ11・1%」減っているはずです。しかし「11・1」とは「得票」ではなく「得票率」に関する数字ではありませんか。ロイターでは「CDUは第1党の座は維持するものの、得票率は27.2%と前回2013年に勝利した際の38.3%から大幅に落ち込む」(つまり得票率11.1ポイントの低下)と伝えています。

投票総数が前回と同じだと仮定すると「CDU」は30%近くも「得票を減らし」ているはずです。「前回13年の選挙時に比べ11・1%も得票を減らし」との説明は誤りではありませんか。「CDUの得票率は27・2%と前回13年の選挙時に比べ11・1ポイントも低下し~」などと書くべきだったと思えます。

せっかくの機会なので、語順の問題にも触れておきます。記事には「これを受けてメルケル首相は選挙翌日に12月に予定されているCDU党大会で党首再選を目指して立候補しないと表明した」との記述があります。

選挙翌日に12月に」と時期に関する情報が続く部分に読みにくさを感じました。「選挙翌日に~表明した」の間に「12月に予定されている」を挟んでいるのが原因です。

これを受けてメルケル首相は12月に予定されているCDU党大会で党首再選を目指して立候補しないと選挙翌日に表明した」と語順を変えるだけで、かなり読みやすくなります。「これを受けてメルケル首相は選挙翌日に、12月に予定されているCDU党大会で党首再選を目指して立候補しないと表明した」と読点を入れる手もありますが、前者をお薦めします。

森井様は記事を書くプロではないので、この辺りは編集部の責任で手直しすべきでしょう。問い合わせは以上です。回答をお願いします。

週刊エコノミストでは読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。11月6日号の「バルト海と西バルカンで火花 EUvsロシアの軍事的緊張」という記事では、国際政治アナリストの岩川柊子氏が「モンテネグロ」を「NATOには未加盟」と書いていました。これは間違いではないかと指摘しましたが、回答は届いていません。11月13日号と11月20日号でも訂正の掲載が確認できませんでした。読者から購読料を徴収しているメディアとして責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「メルケル首相が党首辞任を表明 流動化するドイツ政治
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20181120/se1/00m/020/027000c


※記事の評価はD(問題あり)。森井裕一氏への評価も暫定でDとする。

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