2017年12月28日木曜日

「2017年まで」ウーバーを敵なしと見る日経ビジネスの根拠

今は2017年12月だ。この月に出た雑誌に「2017年まで、ライドシェアの世界で飛ぶ鳥を落とす勢いだった米ウーバーテクノロジーズ」と書いてあったら、「ウーバー」が「飛ぶ鳥を落とす勢いだった」のはいつまでだと感じるだろうか。日経ビジネス12月25日・1月1日合併号の「今週のピックアップ~記者の眼 ウーバー失速の原因を看破していた競合トップ」という記事では、その点が気になった。
白壁通り(福岡県うきは市)※写真と本文は無関係です

日経BP社への問い合わせと同社からの回答を続けて見てほしい。

【日経BP社への問い合わせ】

日経ビジネス編集部 大西孝弘様

12月25日・1月1日合併号の「今週のピックアップ~記者の眼 ウーバー失速の原因を看破していた競合トップ」という記事についてお尋ねします。記事の冒頭に「2017年まで、ライドシェアの世界で飛ぶ鳥を落とす勢いだった米ウーバーテクノロジーズ」との記述がありますが「2017年まで」で正しいのでしょうか。

記事ではウーバーについて「自滅しています」と記しています。であれば2017年には「飛ぶ鳥を落とす勢い」ではなくなっているはずです。記事の末尾に「詳しくは『日経ビジネスオンライン』をご覧ください」とあるので、そちらも確認しました。そして以下の記述を見つけました。

2017年はライドシェアの勢力図が激変した年だった。2016年までは米ウーバーテクノロジーズの独走態勢になりつつあったが、スキャンダルによって自滅。代わりに各地域発祥のライドシェア企業が盛り返した

上記の説明を信じれば、ウーバーが「ライドシェアの世界で飛ぶ鳥を落とす勢いだった」のは「2016年まで」です。ちなみに日経ビジネスオンラインの記事の冒頭には「2017年まで、ライドシェアの世界で飛ぶ鳥を落とす勢いだった米ウーバーテクノロジーズ」との記述は見当たりません。

今週のピックアップ」に出てくる「2017年まで」は「2016年まで」の誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

付け加えると「2016年まで、ライドシェアの世界で飛ぶ鳥を落とす勢いだった米ウーバーテクノロジーズ」と訂正しても問題は残ります。ウーバーが中国事業を売却すると明らかになったのは2016年8月です。現地の競合企業に事業を売却する形で撤退を決めたのですから、この時点で「飛ぶ鳥を落とす勢い」とは言えません。訂正記事を掲載する場合は、その点も考慮してください。



【日経BP社の回答】

米ウーバーテクノロジーズがいつまで「飛ぶ鳥を落とす勢い」だったのかにつきましては、いくつか見方があると思います。
風治八幡宮(福岡県田川市)※写真と本文は無関係です

記事を執筆した記者は、潮目が変わったのは2017年2月頃だと判断しております。理由は以下の通りです。

当時までは、同社は様々なトラブルを抱えながらも成長を続けていました。しかし2017年2月、元社員が社内でのセクハラ被害をブログで告発したことから、米国でウーバーのアプリをスマートフォンから削除する「サービス不買運動」が広がりました。これを契機に様々な不祥事が次々と明るみになり、不買運動が広がり、事業拡大にブレーキがかかりました。

こうした背景から、日経ビジネスオンラインでは「2017年はライドシェアの勢力図が激変した年だった。2016年までは米ウーバーテクノロジーズの独走態勢になりつつあったが、スキャンダルによって自滅…」と表現しました。

また、記事で主に言及している米国では、ウーバーに対する不買運動が起きるまで、ウーバーの利用者が急増してリフトとの差が広がり、独走態勢になりつつあった、と理解しております。

日経ビジネスの紙面では、紙幅の制限から少ない文字数で表現するため、文章を変えております。2017年2月までは同社の攻勢が続いていたことを表すため、「2017年まで、ライドシェアの世界で飛ぶ鳥を落とす勢いだった米ウーバーテクノロジーズ…」としました。

ご指摘をふまえ、今後とも読者に分かりやすい表現で、執筆や編集に努めたいと思っております。


◇   ◇   ◇

苦しい弁明なのは読んでもらえれば分かるので、ここで詳しく触れるつもりはない。回答では認めていないが、大西記者は「2016年まで」とするつもりが「2017年まで」と表記してしまったのだとは思う。

とは言え、上記の弁明は苦しいながらも破綻はしていない。22日(金)に問い合わせをして、回答が届いたのが27日(水)なので、時間をかけて弁明を考えたのだろう。こちらの推測通りならば単純なミスなので、強く責めるつもりもない。「次からは気を付けてね」といった程度の話だ。


※今回取り上げた記事「今週のピックアップ~記者の眼 ウーバー失速の原因を看破していた競合トップ


※記事の評価はD(問題あり)。単純ミスの可能性が高く、回答も届いた点を考慮して大西孝弘記者への評価は暫定C(平均的)を据え置く。

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