2017年8月27日日曜日

日経「野菜卸値高値続く」は“東京目線”が強すぎる

東京で記事を書いていると、どうしても“東京目線”が強くなりがちだ。しかし、東京とは全く事情が異なる地域も当たり前に存在する。全国の読者に届ける記事ならば「全国的にはどうか」という視点が欠かせない。26日の日本経済新聞朝刊企業1面に載った「野菜卸値高値続く キュウリ・レタス…日照不足で」という記事には、その視点が感じられなかった。
九州北部豪雨後のJR日田彦山線(大分県日田市)
       ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

日照不足による野菜の高値が続いている。8月中旬時点の東京市場の平均卸価格は、キュウリやレタスなどが上旬に比べ軒並み上昇した。産地での病害や生育遅れで、市場の入荷量が減少している。

キュウリは1キロ310円と28%高かった。福島県などの産地で病害が発生し入荷量が減った。レタスは同114円と上旬に比べ13%上昇した。「日照不足で傷みが目立つ」(青果卸)

ピーマンは同386円と15%高い。主産地の岩手県で生育が遅れ、入荷量の減少が響いた。キャベツも同90円と50%高い。

今週に入っても主な野菜の卸価格は上昇している。東京・大田市場の25日の卸値はキュウリが1週間前に比べ5%上昇するなど、高値の品目が目立つ。

スーパーでは販売手法を見直す動きが目立つ。袋詰めの代わりに1個売りを増やすといった対応で単価を抑える工夫をしている。

9月ごろから学校給食が始まるため「店頭価格も一段と上昇する可能性がある」(都内スーパー)との見方が出ている。


◎首都圏経済面の記事なら…

これが首都圏経済面の記事ならば分かる。全国一律の企業面でこれはないだろう。価格情報は東京のみ、産地を含めても東日本の話だ。全国的に日照不足が続いている訳でもないのに「日照不足による野菜の高値が続いている」と冒頭から言い切ってしまうところに“東京目線”が出ている。

ちなみに23日のNHKの「天候不順で野菜の小売価格も上昇」という記事では冒頭で以下のように伝えている。

【NHKの記事】

北日本や関東で長雨や日照時間の短い状態が続いた影響で、スーパーなどでの野菜の小売価格が先週、値上がりし、きゅうりやトマトは平年より1割以上高くなっていることが農林水産省の調べでわかりました。

北日本の太平洋側や関東では、先月下旬ごろからぐずついた天気となる日が多く、日照時間が平年を大幅に下回ったり気温が低くなったりして、一部の野菜で生育や収穫作業に遅れが出ています。

◇   ◇   ◇

これならば「北日本や関東」以外に住んでいても全国配信のニュースとして素直に受け取れる。日経の記事だと「書いている記者は日本中どこも日照不足だと思っているんじゃないのか」と疑いたくなってしまう。

ついでに言うと「9月ごろから学校給食が始まるため『店頭価格も一段と上昇する可能性がある』(都内スーパー)との見方が出ている」という最終段落の説明はよく分からなかった。学校給食が始まるとスーパーの店頭価格が上がりやすくなるのか。学校給食用に野菜が取られるとしても、その分は家庭用の需要が減るので、全体の需要に大きな変化は起きない気がする。

何らかの理由で「学校給食が始まると野菜の需要が全体として増える」という関係が成り立つのかもしれないが、そこは仕組みを説明してくれないと困る。


※今回取り上げた日経の記事「野菜卸値高値続く キュウリ・レタス…日照不足で
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170826&ng=DGKKZO20422230V20C17A8TJ1000

※記事の評価はD(問題あり)。

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