2017年8月23日水曜日

東洋経済に載った木内登英氏のインタビュー記事が興味深い

週刊東洋経済8月26日号に載った「ニュース最前線02~2%物価目標が間違い 日銀は出口戦略示すべき」というインタビュー記事は興味深い内容だった。「民間エコノミスト出身の審議委員」として「日本銀行の金融政策決定で反対意見を述べてきた」木内登英氏(現・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト)に大崎明子記者が話を聞いている。木内氏の話は納得できるものばかりだった。
九州国際重粒子線がん治療センター(佐賀県鳥栖市)
            ※写真と本文は無関係です

日銀の金融政策の「問題点はどこにあるのか」との問いに対し、木内氏は以下のように答えている。

【東洋経済の記事】

目標設定の仕方自体が間違っていた。

金融政策の役割とは、日本銀行法のとおり、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」こと。つまり、最終目標は日本経済を安定成長させ、国民の生活をよくすることだ。この点が忘れられ、「物価目標至上主義」に陥ったことが問題だった。

◇   ◇   ◇

その通りだ。「物価の安定」が重要だとしても、物価上昇率が2%である必要はない。0%や1%の方が「物価の安定」という意味では好ましいとの見方もできる。

なのに、国債市場の価格決定機能を失わせた上に、金融政策の正常化を難しくするリスクを取ってまで、2%にこだわる意味はない。木内氏が言うように「『2%』に固執すると、達成のために政策が長期化する、あるいは政策を拡大させることになる」。

2%という数字に市場は懐疑的だ」との大崎記者の問いには木内氏はこう返している。

【東洋経済の記事】

(中略)国によって差があるが、日本では成長期待が物価を左右する度合いが強い。1980年代から潜在成長率が下がるにつれインフレ率も低下。日本のインフレ率は現在ゼロ〜1%で安定している。日本の潜在成長率は年1%未満なので、今のインフレ率とは整合性がある。「デフレがしみ付いている」というのは間違い。「デフレ脱却」とは、安倍晋三政権が仮想敵を作って求心力を高めるための政治的スローガンにすぎない。

◇   ◇   ◇

これもその通りだ。個人的な生活実感としても物価は下がっていないし、消費者物価指数を見てもそうだ。一般の生活者にデフレ心理は染み付いていない。日銀の「生活意識に関するアンケート調査(2017年6月)」を見ると、「1年後の物価」に関して上昇予想が75.4%で、下落予想はわずか2.4%だ。「インフレ心理が染み付いている」と言った方がいい。消費者物価指数と生活者意識の両面から見ても、「脱却」すべき「デフレ」は見当たらない。
九州北部豪雨後の朝倉光陽高校周辺(福岡県朝倉市)
             ※写真と本文は無関係です

「日銀の審議委員にもちゃんとした人がいたのだな」とは思う。ただ、「黒田東彦総裁就任後、しばしば総裁の提案に反対票を投じた」木内登英氏と佐藤健裕氏が「7月に任期満了で退任した」して反対派がいなくなったとも言われており、おかしな金融政策はさらに続くのだろう。そう考えると気が重くなる。

木内氏に関しては野村総合研究所に戻ってエコノミストを続けるらしいので、東洋経済でも重用してほしい。この人の分析には耳を傾けたい。


※今回取り上げた記事「ニュース最前線02~2%物価目標が間違い 日銀は出口戦略示すべき

※記事の評価はB(優れている)。大崎明子記者への評価も暫定でBとする。

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