2017年8月17日木曜日

「刷新した」話を「刷新する」と書く日経 企業総合面の記事

「過去の話よりも今後の話の方がニュースとしての価値がある」という考え方が日本経済新聞社の編集局には根強くある。そうした価値観が間違っているとは思わないが、だからと言って過去のことをあたかも今後の話のように書くのはご法度だ。
豪雨被害を受けた福岡県朝倉市 ※写真と本文は無関係です

17日の朝刊企業総合面に載った「ヤマトHD、新事業提案の応募簡単に 契約社員も対象」という記事を題材に、この問題を考えてみたい。

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

ヤマトホールディングス(HD)は新規事業の社内提案制度を刷新する。宅配便のトラック運転手や物流施設の担当者など現場で働く社員から広くアイデアを募り、事業開発の専門家が助言する仕組みを導入する。現場の知恵を生かして継続的に新サービスを生み出す体制づくりを目指す。

1日から「ニューバリューチャレンジ」と題して、新規事業提案の募集を始めた。グループ各社の正社員とフルタイムで働く契約社員が対象で、9月末まで応募を受け付ける。事業開発のノウハウがない社員でも提案できるように、簡単な応募フォームで申し込めるようにした。

有望な提案は事業開発の担当者がメンターとなり、改善点などを助言する。来年1月ごろまでに候補を数件に絞る。その後、新サービスの実証実験につなげ、事業化の可否を判断する。

ヤマトHDには以前から新規事業の提案制度があるが、詳細な事業計画の提出が必要だった。宅配便でスキー用具を送る「スキー宅急便」は現場の発案から生まれた経緯がある。現場の意見を生かして顧客志向のサービスをつくる企業文化を維持するために、新規事業の提案制度を改める


◎既に「刷新」済みでは?

1日から『ニューバリューチャレンジ』と題して、新規事業提案の募集を始めた」のだから、「新規事業の社内提案制度を刷新する」ではなく「刷新した」と過去形にすべきだ。
九州北部豪雨後のJR日田彦山線の陸橋(福岡県東峰村)
          ※写真と本文は無関係です

事業開発の専門家が助言する仕組みを導入する」についても「導入した」と直した方がいい。最後の「新規事業の提案制度を改める」も「改めた」が適切だ。

「新たな制度に基づく募集が今月1日から始まった」と正直に書いているのだから、それを貫けばいいだけだ。なのに妙なごまかしに走ってしまうのは、悪しき伝統の力だろう。

とは言え、過去の話を今後の話のように書いているのは、ある程度の読解力があれば誰でも分かる。そこを考慮せずにこの手の記事を読者に届けても、日経への信頼が落ちるだけだと思える。


※今回取り上げた記事「ヤマトHD、新事業提案の応募簡単に 契約社員も対象
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170817&ng=DGKKZO20058060W7A810C1TI1000

※記事の評価はD(問題あり)。

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