2017年8月13日日曜日

「グアム島にミサイル打ち込む」と誤解を与える日経の記事

日本経済新聞によると「人気観光地グアムに北朝鮮が弾道ミサイルを発射する計画を表明した」そうだ。13日の朝刊総合5面に載った「旅行各社、グアムツアーの動向注視 中止はせず 北朝鮮がミサイル発射計画」という記事では、「グアム沖」とか「グアム周辺」ではなく「グアムに」と言い切っている。
豪雨被害を受けたJR日田彦山線(大分県日田市)
      ※写真と本文は無関係です

これを読んで「北朝鮮は海ではなくグアム島に弾道ミサイルを打ち込むつもりなのか」と誤解する人はまれだとは思う。だが、雑な表現は避けてほしい。

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

人気観光地グアムに北朝鮮が弾道ミサイルを発射する計画を表明したことで、日本の旅行会社は影響を懸念している。大手でツアー中止や目立ったキャンセルは出ていないが、お盆休みで海外旅行にでかける人も多く、動向を注視している。

近畿日本ツーリスト、エイチ・アイ・エス(HIS)ではツアーが予定通り実施され、問い合わせが殺到している状況でもないという。旅行の安全に関する各種情報が出ていないかをきめ細かくチェックし、動きがあれば顧客に伝える。ある大手旅行会社の担当者は「国際情勢が緊迫すると不安に思う顧客は多い。かき入れ時だけに痛い」と話していた。

◇   ◇   ◇

ちなみに同じ日の朝刊総合2面の記事では「米領グアムへのミサイル発射計画を公表した北朝鮮」「北朝鮮による米領グアム周辺への弾道ミサイル発射予告」といった書き方をしており、こちらは問題がない。総合5面の記事に関しては「企業担当の記者が書いたものだから」との弁明が聞こえてきそうだが、読者には関係ない話だ。

付け加えると、「日本の旅行会社」に関する情報も具体性に欠ける。「大手でツアー中止や目立ったキャンセルは出ていない」と言うが、「大手」の範囲は不明だ。例えば大手5社に取材したのであれば「大手5社(A社、B社、C社、D社、E社)でツアー中止や目立ったキャンセルは出ていない」といった書き方をしてほしい。

問い合わせが殺到している状況でもない」という情報も漠然としすぎている。普段の2~3倍の問い合わせが来ていても「問い合わせが殺到している状況でもない」と言える場合はある。こんな説明では情報としての意味がほとんどない。問い合わせ件数は「普段と同程度」かもしれないし「普段よりはるかに多い」かもしれないのだから。

また「ツアー中止や目立ったキャンセルは出ていない」「問い合わせが殺到している状況でもない」といった話を出した後で「かき入れ時だけに痛い」というコメントを使っても説得力は出ない気がする。


※今回取り上げた記事「旅行各社、グアムツアーの動向注視 中止はせず 北朝鮮がミサイル発射計画
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170813&ng=DGKKZO19942100S7A810C1EA5000

※記事の評価はD(問題あり)。

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