久留米城跡の桜(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係 |
【日経の記事】
4番目の誤算はより根深い。実体経済を動かす消費者や企業に、マイナス金利への戸惑いが隠せないからだ。
日銀が3月に実施した生活意識に関するアンケート調査で、現在の金利が「低すぎる」と答えた人の割合は65%と3カ月前の調査から13ポイント余り増えた。マイナスにならなくとも預金金利は下がる。年金や保険の利回り低下が意識される流れだ。
「日本は高齢者の割合が高い。借入金利の低下を喜ぶ人よりも不安を感じる人の方が多い」と東短リサーチの加藤出氏は言う。マイナス金利は心理に働きかけ「いずれ物価が上がる」と思ってもらう政策。ところがそれが長引きそうだと思われると、将来を気にして逆に消費心理を冷やしかねない。
市場の動きを映す予想物価上昇率はマイナス金利の導入前より0.5ポイントほど低下した。名目長期金利も0.2ポイント程度下げたが実質金利の引き下げは日銀の思い通りには実現していない。
日本経済の実力である潜在成長率がゼロ近くに低迷するなかで、日銀が孤軍奮闘してもなかなか物価や景気を上向かせるのは難しい。実体経済に効果が及ぶまで「半年も1年もかからない」と断言する黒田総裁だが、言うほど視界は開けていないだろう。
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マイナス金利政策の導入による追加緩和は効き目が乏しいどころか、むしろ逆効果だ。なのに今後も「追加緩和をためらうべきでない」とは、どういうことか。薬の効き目が乏しいので何度も量を増やしたが、それでも目立った効果はない。むしろ副作用が大きくなってきた。そんな時に病状が悪化したら、また似たような薬の量を増やせと言うのか。正直言って気が知れない。
「黒田日銀が人々や市場のココロを再びつかめるかどうか、6月は正念場だ。景気や物価に漂うモヤモヤ感がさらに強まれば追加緩和をためらうべきでない」と書いた後、菅野編集委員は以下のように述べている。「市場や銀行とのほころんだ対話の修復も不可欠だ。政府も日本経済の足腰を強くする改革に真剣に取り組み、日銀の孤立を防がなければならない。試練の克服には総力戦がいる」。
政府による「日本経済の足腰を強くする改革」と併せて実行すれば追加緩和も効果があると菅野編集委員は言いたいのだろう。併せて実行すれば効果が期待できるとの根拠は乏しそうだが、とりあえず受け入れてみる。その場合も「政府が日本経済の足腰を強くする改革に真剣に取り組み、日銀の孤立を防ぐと保証しない限り、日銀は追加緩和に踏み切るべきではない」などと訴えるのが自然な流れだ。「日銀が孤軍奮闘してもなかなか物価や景気を上向かせるのは難しい」と菅野編集委員自身が感じているのだから。
今回の記事に関して、追加で2つ指摘しておきたい。
◎これは「ヘリコプター・マネーの考え方」?
【日経の記事】
追加緩和が必要な場合の手法についての意見は分かれる。日本経済研究センターの岩田一政理事長は「中銀に赤字が生じ財政コストがかかる量的緩和はもう難しい」と、政府の財政出動とマイナス金利拡大の組み合わせを主張する。若田部昌澄早大教授は財政出動で増発した国債を日銀が買い増す「ヘリコプター・マネー」の考え方。「6月に追加緩和と補正予算編成、来春の消費増税の見送りを決める可能性は高い」と指摘する。
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「えっ! 次の追加緩和ではついにヘリコプターマネーもあり得るの?」と驚いてしまった。さらっと怖いことを書いている。しかし、「財政出動で増発した国債を日銀が買い増す」のであれば、これまでもやってきたのではないか。定義にもよるが、これまで日本はヘリコプターマネー政策を実行していないはずだが…。
◎これは「弱含み」?
【日経の記事】
円高が海外展開企業の収益を悪化させる懸念から、1万8000円に迫った日経平均株価も1万6000円台に弱含んだ。
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「弱含み」とは「相場が下降しそうな気配を見せている状態」を指す。1万8000円に迫るところまで行って、1万6000円台(一時は1万6000円を割り込んでいる)まで下げたのならば、「弱含んだ」ではなく「反落した」「押し戻された」などとした方が適切だろう。
※記事の評価はC(平均的)。菅野幹雄編集委員の評価も暫定でCとする。
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