2017年4月8日土曜日

「複利」の解説に異議あり 日経「ゼロから解説」

8日の日本経済新聞朝刊マネー&インベストメント面に載った「ゼロから解説~『複利』を投資の味方に 投信、毎月分配型は利点生かせず」という記事は疑問の残る内容だった。まずは問題のくだりを見てみよう。
猫バスと桜(福岡県うきは市 JAにじ耳納の里)
      ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

では、複利効果を生かすにはどんな方法があるのでしょうか。株式の場合、もらった配当金でその株式を買い増す「再投資」をすれば、その分だけ株数が増え、配当利回りを複利にすることができます。「米国には配当金を自動的に再投資するDRIPという制度を設ける上場会社があり、多くの個人株主が利用している」(尾藤氏)そうです。

日本では、毎月分配金が出る投資信託が売れ筋になっていますが、投資助言会社イデア・ファンド・コンサルティングの吉井崇裕社長は「運用の元本を減らしてしまう分配金は複利の天敵」と警鐘を鳴らします。元本を取り崩して分配金を出すような毎月分配型ファンドでは複利の効果が働かないからです

複利を生かしやすいとして吉井氏が勧めるのが、株式ファンドのうち、値動きが株価指数に連動するインデックス型です。長期でみて期待利回りが高いうえ、運用期間中ずっと資産から差し引かれ続ける信託報酬という手数料が比較的安いからです。信託報酬の負担は長期になるほど、マイナスの複利効果が働いて運用の重荷になります。

◇   ◇   ◇

株式の場合、もらった配当金でその株式を買い増す『再投資』をすれば、その分だけ株数が増え、配当利回りを複利にすることができます」と書いた後で、「元本を取り崩して分配金を出すような毎月分配型ファンドでは複利の効果が働かない」と解説している。これは無理がある。毎月分配型ファンドでも分配金を再投資に回せば、記事で言う「複利」にはなる。

「税金や売買手数料がゼロで、分配金の全額を再投資する」という条件であれば「分配金は複利の天敵」とはならない。一方、税金や手数料がかかる場合、配当も分配金も「複利」効果を得る上では邪魔だ。記事では「毎月分配型ファンド」がダメで「インデックス型」がいいように書いている。間違いとは言わないが、投信で「複利」効果を得るためには、分配金ゼロがベストで分配金が多いほどダメと解説すべきだろう(信託報酬が低い方がいいのは、記事の言う通り)。

「複利」に関しては、毎月分配型ファンドの中でも「元本を取り崩して分配金を出すような」ものが特にダメだと考える理由はない。運用から得られた利益を基に分配金を出していても、「複利」効果を減じるという意味では同じだ。課税対象にならない分だけ特別分配金(元本を取り崩して出す分配金)の方がマシとも言える。

ついでに言うとインデックス型の投信について「長期でみて期待利回りが高い」と言い切っているのが気になった。こういう書き方をするならば、何と比較して「期待利回りが高い」のかは明示してほしい。アクティブ型との比較なのか債券型との比較なのか。手数料を考慮しなければ、インデックス型とアクティブ型で期待利回りに大きな差は生じないはずだが…。


※記事の評価はD(問題あり)

0 件のコメント:

コメントを投稿