2017年4月22日土曜日

「読者騙し」が悪質な 日経「KDDI、通販本格展開」

日本経済新聞の記事で「本格」の文字を見つけたら要注意とは以前にも述べた。22日の朝刊企業2面に載った「KDDI、通販本格展開 出店企業に新システム」もその1つだが、悪質度では日経でも上位に来る。中身を見る限り、これから「本格展開」を始めるといった話ではない。
三池炭鉱宮原坑(福岡県大牟田市)
    ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

KDDI(au)はインターネット通販「Wowma!(ワウマ)」のサービスを本格展開する。出店企業が購買履歴や決済を管理しやすいよう新たなシステムの導入を始め、利用者が買い物がしやすいようワウマのアプリも配信する。KDDIは利用者と出店企業を増やし、2019年度にワウマの取引額を現状の3倍の1500億円に引き上げる

KDDIは16年12月にDeNAの運営するEC事業「DeNAショッピング」を買収し、同社と共同で運営していた「auショッピングモール」と統合。今年1月にワウマが誕生した。化粧品や日用品を購入できるが、競合と比べ商品数や出店企業が十分ではなかった。

KDDIは今年秋にも中小規模の企業でも出店しやすいよう、取引の管理にかかる手間を減らすシステムを導入する。

◇   ◇   ◇

インターネット通販『Wowma!(ワウマ)』のサービスを本格展開する」と判断すできる材料は見つけられただろうか。「ワウマ」は「現状」でも年間500億円規模の取引額がある。実験的にやっている事業でもない。「auショッピングモール」と統合したのも「今年1月」と過去の話だ。既に「本格展開」しているとしか思えない。

出店企業が購買履歴や決済を管理しやすいよう新たなシステムの導入を始め、利用者が買い物がしやすいようワウマのアプリも配信する」という計画はあるようだ。だからと言って「現状では『本格展開』に至っていない」と主張するのは無理がある。

今回の場合、ニュース記事としての柱は「システムの導入」のはずだ。だが、これを前面に押し出してもベタ記事にしかならないだろう。だから無理に「本格展開」と付けて3段の記事に仕立てたのではないか。

気持ちは理解できなくもないが、ここまでやると記者としての倫理観を疑われる。本来ならば企業報道部のデスクが記者を指導すべきだ。しかし、デスク自身も記者時代にこの手の書き方に慣れ過ぎていて問題を感じないのだろう。


※今回取り上げた記事「KDDI、通販本格展開 出店企業に新システム
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170422&ng=DGKKZO15629900R20C17A4TJ2000


※記事の評価はE(大いに問題あり)。「本格」の使い方に問題がある日経の記事については、以下の投稿も参照してほしい。

「松屋フーズはラーメン店に本格参入」に見える日経の騙し
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_15.html

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