2017年4月24日月曜日

山本俊成氏を信じるな! 週刊ダイヤモンド「保険 地殻変動」

保険の分野で「この人の言うことは絶対に信じるな」と断言できる「専門家」を見つけた。ファイナンシャル・マネジメント代表の山本俊成氏だ。週刊ダイヤモンド4月29日号の特集「保険 地殻変動!」の中で「リスク回避型の人に向く外貨保険の考え方と使い方 」という記事を書いていて、その内容に問題が多すぎる。記事の中で山本氏は「外貨建て保険」のメリットを強調するが、それらには全く説得力がない。
文化池と桜(福岡県八女市)※写真と本文は無関係です

記事の一部を見てみよう。

【ダイヤモンドの記事】

個人が外貨投資を検討する場合、一般的な商品として、「銀行の外貨預金」「証券会社の外貨建てMMF」「外貨建て保険」「為替証拠金取引(FX)」が考えられる。無論、そこにはリスクもある。

真っ先に挙げられるのは為替リスク。購入したときよりも外貨の価値が下がれば当然、資産価値も下がる。また、円建ての預金のようなペイオフがないため、銀行が経営破綻した場合は資産が減ってしまう可能性もある。高額な為替手数料もデメリットに数えることができるだろう。

リスクと隣り合わせの外貨投資に、二の足を踏む人は少なくない。かといって、これからの円建て商品では、もはや大きな資産形成は不可能に近いことも確かだ。

リスクはほどほどに資産を大きく増やしたい」──。外貨建て保険はそんな人にこそ向いている。先に挙げた外貨投資商品の中で、実は外貨建て保険が最も投資リスクが小さい商品なのだ。その理由は次の4点にまとめられる



◎「ほどほどのリスク」で大きく増やせる?

『リスクはほどほどに資産を大きく増やしたい」』──。外貨建て保険はそんな人にこそ向いている」という説明がまず怪しい。基本的には「資産を大きく増やしたい」ならば、それに応じた「大きな」リスクを取る必要がある。「外貨建て保険」ならば、「リスクは低めでリターンを高くできる」と受け取れるような書き方をしている時点で、まず疑いの目を向けたくなる。

続きを読むと、疑惑は確信に変わる。

【ダイヤモンドの記事】

まず何といっても「保障付き」である点だ。たとえ外貨の運用状況が芳しくなかったとしても、生命保険としての保障が得られることを考えれば、為替差損のリスクを減じられることになる。



◎生命保険で「為替差損のリスクを減じられる」?

これは謎の論理だ。色々な意味でおかしい。為替差損が出た時に「生命保険としての保障」が損失を埋めてくれるわけではない。これは2つを切り離して考えれば分かる。外貨建て資産を持っている人が新たに生命保険へ加入するとしよう。この場合、「良かった。生命保険への加入で為替差損リスクを減らせた」と感じるだろうか。
熊野神社(福岡県うきは市)※写真と本文は無関係です

仮に生命保険への加入で為替差損のリスクを減らせるのであれば、外貨投資は「外貨建て保険」である必要はない。「FX+生命保険」でもいいはずだ。「外貨建て保険」の生命保険部分は保険会社が我が身を削って契約者に提供してくれるわけではない。契約者から受け取る保険料が原資だ。投資部分とごっちゃになって分かりにくい「外貨建て保険」を選ぶ必要はない。

さらに記事の問題点を指摘していこう。

【ダイヤモンドの記事】

第二に、他の外貨商品と同じく「通貨分散」できること。実は、これこそが一番のメリットといえる。リスクを減じ、安全に資産運用をする有効な方法として「分散投資」があるが、外貨投資をすることにより資産の通貨分散が図れるからだ。資産を全額、日本円で保有していた場合、円の価値が下がってしまうと資産全体の価値が下がるが、外貨に分散することで通貨下落リスクを低減できる。

加えて、複数の通貨を持つことで、より有利な通貨を活用する選択肢を得ることができるため、円安の場合は外貨を、円高の場合は円を使うことで有利な資産活用が可能になるというわけだ。



◎他と比べた優位性は?~その1

2番目の理由では、FXなどに対する「外貨建て保険」の優位性を説明することを諦めてしまっている。「他の外貨商品と同じく『通貨分散』できること。実は、これこそが一番のメリットといえる」というだけでは、FXなどではなく「外貨建て保険」を選ぶ理由にならない。

実は外貨建て保険が最も投資リスクが小さい商品なのだ。その理由は次の4点にまとめられる」と書いたのだから、「4点」は「最も投資リスクが小さい商品」だと裏付けるものであるべきだ。しかし「2番目の理由」で挫折してしまった。

残りの2つも同様だ。

【ダイヤモンドの記事】

第三の理由は、時間分散で「ドルコスト平均法」が使える点だ。生命保険契約を月払い契約にすることで、保険料を毎月積み立てていくことにより時間分散を図れるドルコスト平均法を活用できる。この結果、毎月購入する外貨の為替レートを平準化でき、為替差損のリスクを下げられるのだ。

最後に、「銘柄分散」ができること。銘柄分散とは、マーケットの違う複数の投資対象に分散することで、特定のマーケットが悪化した場合でも、全ての資産価値が下がることを防ぐ分散投資の手法である。すでに外貨預金などの外貨投資をしている人も、生命保険の外貨建て商品の投資を組み込むことによって銘柄分散が図れ、資産価値が下がるリスクを減らすことが可能になる。


◎他と比べた優位性は?~その2

ドルコスト平均法」が使えて「銘柄分散」ができることも、「外貨建て保険」を「最も投資リスクが小さい商品」と位置付ける理由らしい。だが、FXなどでも「ドルコスト平均法」は使えるし、山本氏が言う「銘柄分散」もできる。他の外貨投資に対する優位性の根拠とはならない。

ちなみに「ドルコスト平均法」を用いても外貨投資のリスクは減らないと思うが、話が長くなるのでここでは論じない。

今回の特集では保険商品に関してランキングをいくつも載せており、「ランキング対象商品の選出者」には山本氏も入っている。投資に関するある程度の知識があれば、山本氏の書いた記事を読んで「この人はダメだ」と気付くはずだ。なのに特集では保険の専門家としてお墨付きを与えている。その点で特集の担当者(中村正毅記者、藤田章夫副編集長、宮原啓彰記者)の責任も重い。


※今回取り上げた特集「保険 地殻変動!」
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/20038

※当該記事の評価はE(大いに問題あり)。山本俊成氏への評価も暫定でEとする。

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