少子化対策に関する記事は最近になって改善傾向が見られる。以前は「子育てと仕事を両立しやすくなる支援策を拡充しろ。欧州を見習え」といった的外れなものが多かったが、事実で裏付けられないことが徐々に浸透してきたようだ。だからと言って説得力のある記事が増えてきたとも言い難い。
夕暮れ時 |
東洋経済 解説部コラムニストの野村明弘氏が4日付で東洋経済オンラインに書いた「『人口減』をむしろ味方につける経済大改革の方策~もはや昭和ではない、『同性婚』『婚外子』も鍵に」という記事もその1つだ。
「少子化対策は難しい。先進的な子育て支援で先行した欧州だが、一部では再び合計特殊出生率が低下する傾向が見られる」とは書いている。「出生率を抑制している古い社会構造」の1つとして「自分以上の所得の男性を求める女性」と明示しているのも評価できる。
「男性が主に稼いで女性は働くにしてもパート程度」という社会であれば「自分以上の所得の男性を求める女性」ばかりでも問題はない。しかし男性も女性も同じように働く社会になっても「自分以上の所得の男性」にしか女性が目を向けなければ、子供を作る男女のペアは成立しにくい。
個人的には少子化は放置でいいが、少子化を克服しようとするならば「自分以上の所得の男性を求める女性」に意識改革を迫るのは理に適っている。
ここからは問題のある部分を見ていこう。「先進的な子育て支援で先行した欧州」を見習ってもあまり意味がないと分かっても「だから出生率の高い新興国・途上国を見習いましょう」となる論者はほとんどいない。なので対策が一気に具体性を欠いてしまう。野村氏もそうだ。
【東洋経済オンラインの記事】
確実にいえるのは、少子化と人口減少は、私たちの社会の制度や慣習が抱える問題の映し鏡ではないかということだ。人が生きにくい社会なら人は増えない。であれば、そうした制度や慣習を現代の生活に合った形に変えていくことを優先政策とすればよいのではないか。
それは決して、人口対策ありきの「産めよ殖やせよ」ではない。人が生きやすい社会に近づけば、自然と人は増えるだろう。
◎「人が生きにくい社会なら人は増えない」?
「人が生きにくい社会なら人は増えない」という考えに同意はしないが、とりあえず受け入れてみよう。だったら話は簡単だ。「人が増えている社会」を手本にすればいい。
先進国よりも新興国・途上国の方が人は増えているし、終戦直後の日本は今より圧倒的に人が増えやすい社会だった。「人口増加率が高い国を見習え!終戦直後のベビーブーム期に戻れ!」でいいはずだ。
人口が増え続けるアフリカの国々より、少子化に悩む欧州諸国の方が「人が生きやすい社会」だと見る場合「人が生きにくい社会なら人は増えない」という考え方は修正を迫られる。
「人が生きにくい社会でも人は増え得るし、人が生きやすい社会でも人は減り得る」と考えるのが適切ではないか。
※今回取り上げた記事「『人口減』をむしろ味方につける経済大改革の方策~もはや昭和ではない、『同性婚』『婚外子』も鍵に」
https://toyokeizai.net/articles/-/600512
※記事の評価はD(問題あり)。野村明弘氏への評価もDを据え置く。野村氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。
日本経済の「最悪の結末」を描けていない東洋経済コラムニスト 野村明弘氏https://kagehidehiko.blogspot.com/2022/05/blog-post_16.html
「現在世代の消費」に使うと「将来世代に残るのは借金だけ」と誤解した東洋経済の野村明弘氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/11/blog-post_17.html
アジア通貨危機は「98年」? 東洋経済 野村明弘記者に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/09/98.html
「プライマリーケア」巡る東洋経済 野村明弘氏の信用できない「甘言」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_28.html
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