2021年11月8日月曜日

女性議員を増やしたいと願う日経 天野由輝子記者に考えてほしい3つのこと

女性議員を増やそうという議論には意味がないと感じている。しかし、増やそうと訴える記事がなぜか後を絶たない。8日の日本経済新聞朝刊女性面に天野由輝子記者(女性活躍エディター)が書いた「『2535』実現に向け議論を」という記事を材料に、この問題を考えてみたい。

錦帯橋

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

「2535」という数字がある。国は2025年までに、国政や地方選挙の候補者に占める女性を35%に高める目標を掲げているのだ。22年夏の参院選、23年春の統一地方選を経て、次の衆院選までに今回の倍の水準の候補者を立てる必要がある。政治分野の男女共同参画推進法は男女均等を努力義務にとどめており、早くも実現が不安視されている。

国には企業などの指導的地位に占める女性比率の目標を修正した経緯がある。20年に30%に高めるとしていたのに「20年代の可能な限り早期に30%」とゴールポストを動かした。今回も女性比率が低かった与党を中心に根本的な議論や総括をしなければ、2535の実現はさらに遠くなる。その結果、女性を重要な意思決定の場に加えようとする世界の潮流から取り残されてしまう


◇   ◇   ◇


天野記者には以下の3点を考えてほしい。


(1)そもそも目標設定は正しい?

国は2025年までに、国政や地方選挙の候補者に占める女性を35%に高める目標を掲げている」らしい。この「目標」設定は正しいのか。そもそも「国政や地方選挙の候補者に占める女性」の比率に関して「目標」を設定すべきなのか。そこをまず考えてほしい。

個人的には「特定の属性の人たちを政治の場に誘導しようとするのは好ましくない」と考えている。極端な例で考えれば分かるはずだ。国会議員に立候補する場合、女性であれば1人1000万円の報奨金が国からもらえて、男性が立候補する場合は逆に1000万円の手数料を取られるとしよう。

この政策には「候補者に占める女性」比率を高める効果があるはずだ。しかし、クオータ制などと同じように明らかな性差別だ。男女平等の原則を崩してまで女性を政治の場に誘導すべきなのか。

努力義務にとどめて」いれば大きな害はないが「」が「女性候補者を増やしたい」などと目標を掲げることには危険なものを感じる。

天野記者は政府が「目標」を設定すると無条件に「達成すべきもの」として受け入れてしまうタイプなのか。だとしたら、かなり危うい。


(2)「世界の潮流から取り残され」たらダメ?

このままでは「女性を重要な意思決定の場に加えようとする世界の潮流から取り残されてしまう」と天野記者は嘆く。しかし、「世界の潮流から取り残され」るとなぜダメなのかは教えてくれない。

国には個性があっていい。「世界の潮流から取り残され」てはダメだと考えるのは、同調圧力を気にしがちな日本人にありがちな発想だ。別に「取り残され」てもいいではないか。

取り残され」ると大きなデメリットがあるなら分かる。しかし天野記者はそこに触れていない。例えば「世界の潮流」が徴兵制導入に傾いたら、日本も徴兵制にすべきだろうか。

そこは徴兵制の良し悪しを検討して決めるべきだろう。「世界の潮流」を見て多数派に同調しようとするのは愚かな意思決定だ。女性議員の問題でも同じことが言える。


(3)「女性よ頑張れ」となぜ訴えない?

この手の記事でいつも思うのが「なぜ女性に頑張れと訴えないのか」という問題だ。「女性=何も問題ない存在」との前提で社会構造や政策を変えようと考える筆者が目立つ。

日本で女性議員が少ないのは、単純に言えば女性にやる気が乏しいからだ。

女性が新党を立ち上げて大量の女性候補者を擁立し、その候補者に女性有権者がこぞって投票する。これだけで女性議員は大幅に増やせる。

選挙権も被選挙権も男女平等だ。有権者という括りで言えば、女性は多数派に当たる。なのに女性議員が少ないとすれば、まず考えるべきは女性のやる気のなさだ。

「女性には何の問題もない。社会構造とか何か他に問題があるはずだ」との考えに固執している限り本質は見えてこない。

まず女性自身の問題を考えてみる。そこから逃げていないか。天野記者には自問してほしい。


※今回取り上げた記事「『2535』実現に向け議論を

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211108&ng=DGKKZO77289040V01C21A1TY5000


※記事の評価はD(問題あり)。天野由輝子記者への評価はDを維持する。天野記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「育児男女差→出生率低下に影響」が苦しい日経1面「チャートは語る」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/10/1.html

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