日本経済新聞の「円の実力、低下傾向続く~実質実効レートが50年ぶり水準に接近 円安、成長に寄与せず」という記事には2つの問題を感じた。日経には以下の内容で問い合わせを送っている。
大阪城 |
【日経への問い合わせ】
18日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「円の実力、低下傾向続く~実質実効レートが50年ぶり水準に接近 円安、成長に寄与せず」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。
「21年になると円の実質実効レートは9%下げ、主要通貨で独歩安になった。ドルは5%上昇し、ユーロは3%の下落にとどまる。新型コロナウイルス禍からの経済回復過程で、日本の物価が海外と比べて上がらないことが影響している」
「独歩安」とは「為替相場で、単独の通貨のレートだけが下がること」(デジタル大辞泉)です。「主要通貨」を「円」「ドル」「ユーロ」とした場合、「円」が「主要通貨で独歩安になった」のならば「ドル」と「ユーロ」は「上昇」しているはずです。しかし「ユーロは3%の下落」。つまり「円」の「独歩安」ではありません。「ドル」の「独歩高」です。
「円」が「主要通貨で独歩安になった」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
せっかくの機会なので、もう1つ指摘しておきます。
「円の実質実効レート」が下がった要因について「日本の物価が海外と比べて上がらないことが影響している」と書いています。この説明は間違いではないものの不適切です。
物価上昇率が低い国の通貨は名目レートが上昇するのが基本です。本来ならば「日本の物価が海外と比べて上がらない」場合は名目レートが円高となり調整されます。その調整が進まないから「円の実質実効レート」が低下していると見るべきでしょう。
なぜ調整が起きないのか。そこを解説しないと「円の実質実効レート」が下がっている理由は見えてきません。
「日本の物価が海外と比べて上がらないことが影響している」のならば、物価が上がれば「円の実質実効レート」も上がっていくはずだと多くの読者は思うでしょう。しかし、相対的に物価上昇率が高くなれば名目レートに下押し圧力がかかると考えるべきです。
記事の筆者は、物価動向が名目レートに与える影響を無視したまま「円の実質実効レート」の下落を論じているのではありませんか。
問い合わせは以上です。「独歩安」に関しては回答をお願いします。日経では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表するメディアとして責任ある行動を心掛けてください。
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※今回取り上げた記事「円の実力、低下傾向続く~実質実効レートが50年ぶり水準に接近 円安、成長に寄与せず」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211118&ng=DGKKZO77663310X11C21A1EA1000
※記事の評価はD(問題あり)
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