24日の日本経済新聞朝刊総合・経済面に載った「データの世紀~国またぐ情報、日本は劣勢 米欧中3極競う」という記事では分析に無理を感じた。一部を見ていこう。
筑後川の夕暮れ |
【日経の記事】
アジアの新興国の躍進が著しい。01年時点と比べると、シンガポールのデータ量は約3千倍、ベトナムは約23万倍になった。対照的に日本は約225倍にとどまる。16年までに両国にデータ量で抜かれ、さらに差をつけられた。
日本の出遅れについて、世界のデータ流通に詳しい経済協力開発機構(OECD)経済産業諮問委員会の横沢誠氏は「日本型のデータビジネスはグローバルに開発されていない」と指摘する。
日本はヤフーや楽天、LINEなど有力なネット企業を抱えるが、LINEなど一部が東南アジアに進出しているのを除き、大半は国内での展開にとどまっている。グーグルやフェイスブックなど世界的にサービスを提供する企業を持たないことが、日本の越境データの伸びに直結しなかった可能性がある。
東南アジアではシンガポールなどが国際ビジネス拠点として急成長している。中国系の動画サービスが急速に普及していることも、東南アジア諸国と中国のデータ量の押し上げにつながった一因とみられる。
中略)データ量が増えた国では、いずれも巨大IT(情報技術)企業が育っている。中国は「BAT」と呼ばれる百度(バイドゥ)、アリババ集団、テンセントなどが次々に世界に進出した。シンガポールも政府主導の外資導入策で国際ビジネスが盛んになった。
◎ベトナムから「巨大IT企業が育っている」?
「グーグルやフェイスブックなど世界的にサービスを提供する企業を持たないことが、日本の越境データの伸びに直結しなかった可能性がある」と書いているが、それはデータ量が急増した国として取り上げた「シンガポール」や「ベトナム」も同じだろう。
「データ量が増えた国では、いずれも巨大IT(情報技術)企業が育っている」とも解説している。「ベトナム」にはGAFAや「BAT」に匹敵する「巨大IT企業」があるのか。「シンガポール」に関しても具体的な「巨大IT企業」の名前を挙げずに「政府主導の外資導入策で国際ビジネスが盛んになった」とごまかしているのは「巨大IT企業」が育っていないからではないのか。
記事によると「中国系の動画サービスが急速に普及していることも、東南アジア諸国と中国のデータ量の押し上げにつながった一因」らしい。裏返せば国内のサービスで国内需要をカバーすれば「越境データの伸び」は抑えられるはずだ。日本の「越境データの伸び」が鈍いとすれば、そうした要因もあるのではないか。
国内のIT企業が健闘しているから「越境データの伸び」が鈍いとしたら「国またぐ情報、日本は劣勢」という単純な見方で良いのかとの問題も出てくる。その辺りに記事では触れていない。分析としては甘いと言わざるを得ない。
※今回取り上げた記事「データの世紀~国またぐ情報、日本は劣勢 米欧中3極競う」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201124&ng=DGKKZO66547700U0A121C2NN1000
※記事の評価はD(問題あり)
今、根拠となる背景データを調べているのですが、まずこのランキング自体前提条件が特異なものである可能性は否定できません。ただ、このページの批判自体にも無理があるように私には思えます。
返信削除件(くだん)の国々では、自国をベースとしたデータ産業かどうかは問わず、「いずれも巨大IT企業(の越境利用)が育っている」と読めるのでは?
その越境利用については米中だけでなくGrabなど東南アジア諸国をまたがってサービスをする巨大ITも独自に育っています。批判文の通り日本のタクシーアプリは扱いデータは大きくても越境データにはカウントされませんが、記事もそれを含んで表現しているので、読み方の問題と思います。
この状態の中でも現金主義でスマホ決済が進まないですし、日本企業のデータビジネスは海外に広げようという積極的な意図は東南アジア勢と比べても薄いことに警鐘を鳴らすのがこの記事の本質で、そこはそう表現されていると思います。
その点こちらの批判も主旨は全く同じなのではないかと思います。むしろこのような「データに関するデータ」の正確性について批判をするのが意味があるのではないでしょうか。