2020年11月9日月曜日

データの見せ方がご都合主義的な日経 佐伯遼・富田美緒記者「チャートは語る」

8日の日本経済新聞朝刊総合2面に載った「チャートは語る~マイナス利回り、欧州覆う コロナ第2波 強まる景気懸念」という記事には無理を感じた。中身を見ながら具体的に指摘したい。

耳納連山の電波塔※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

世界の金利低下に拍車がかかっている。米ブルームバーグによると利回りがマイナス圏の債券残高は6日に17兆ドル(約1700兆円)を超え、過去最大となった。震源地は欧州だ。新型コロナウイルス感染の第2波が広がり、景気不安から安全資産である国債に資金が向かっている。中央銀行がさらなる金融緩和に前向きなことも国債への資金シフトを促しているが、景気低迷の長期化でマイナス金利が長引く懸念もある。

金融情報会社リフィニティブのデータをもとに世界主要62カ国・地域の10年債利回りを調べたところ、53%にあたる33カ国がマイナスから0%台となった。先進国・新興国ともにこぞって緩和に向かった直後の6月(30カ国)より増えた。


◎大きな変化はないような…

世界の金利低下に拍車がかかっている」根拠として「利回りがマイナス圏の債券残高」が「過去最大となった」ことを挙げている。嘘はないのだろう。だが記事に付けたグラフを見ると「10年債利回り」がマイナスとなっている「国・地域」の割合は2019年以降、20%程度でほぼ横ばいだ。

筆者ら(佐伯遼記者と富田美緒記者)はこれでは都合が悪いと考えたのだろう。対象を「0%台」にまで広げて「6月(30カ国)より増えた」と説明している。この辺りはご都合主義的なデータの使い方だ。

続きを見ていこう。


【日経の記事】

中でも欧州の金利低下が目立つ。ドイツが一時マイナス0.6%台後半と約8カ月ぶりの水準に低下したほか、フランスも10年物がマイナス0.4%に沈んだ。6月時点では1%台だった南欧諸国でも低下が進み、イタリアは0.6%台、ギリシャは0.8%台だ。


◎間違ってはいないが…

欧州の金利低下が目立つ」のも間違いではないだろう。だがプラス圏にあった国がマイナスに転じた例は示していない。「マイナス利回り、欧州覆う」という見出しも誤りとは言えない。ただ「コロナの前からそうなのでは?」と言いたくなる。

プラス圏の国が今年に入ってどんどん消えているならば「マイナス利回り、欧州覆う」という見出しでしっくり来る。しかしプラス圏の国はプラス圏の中で「金利低下」が起きているだけのようだ。

世界の金利低下に拍車がかかっている」と言うと大きな動きが起きているように見える。実際には「欧州中心に金利低下傾向が続いている」といったレベルではないか。そもそも先進国では低金利が定着している。そこから「金利低下に拍車」を掛けるのはかなりハードルが高い。

小さな動きを大きく見せようとする「努力」が今回の記事の無理を生んでいる気がする。


※今回取り上げた記事「チャートは語る~マイナス利回り、欧州覆う コロナ第2波 強まる景気懸念

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201108&ng=DGKKZO65970410X01C20A1EA2000


※記事の評価はD(問題あり)。佐伯遼記者への評価はDで確定とする。富田美緒記者への評価はDを据え置く。両記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経「外貨投資、思わぬ落とし穴」 佐伯遼記者への疑問https://kagehidehiko.blogspot.com/2015/08/blog-post_54.html

トリプルB格も「低格付け債」? 日経 富田美緒記者に問うhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2018/01/blog-post_13.html

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