2020年11月7日土曜日

「増産」に関する情報がなさすぎる日経「日鉄、EV向け鋼板増産」

5日の日本経済新聞朝刊企業2面に載った「日鉄、EV向け鋼板増産~400億円で新加工設備」という記事は悪い意味で凄い。「増産」を伝えるニュース記事なのに、どの程度の「増産」になるのか全く触れていない。

石橋文化センター(久留米市)
    ※写真と本文は無関係です

全文は以下の通り。


【日経の記事】

日本製鉄は瀬戸内製鉄所広畑地区(兵庫県姫路市)に400億円程度を投じ、電気自動車(EV)に使う高性能鋼板を増産する。環境規制を背景にEVの高性能化に役立つ鋼板の需要は増えている。トヨタ自動車など自動車大手がEVへの投資を一段と増やす中で、供給能力を高める。

投資するのはEVモーターの中心部に使う「電磁鋼板」。EVは、省エネ性に優れて長い距離を走行できるモーターが必要になる。磁性をコントロールする高性能な電磁鋼板を使うことで、モーターの省エネ化につながる。より薄く軽量化にもつながる電磁鋼板の需要は世界的に伸びており、日鉄は21年以降に瀬戸内製鉄所広畑地区に投資して、新たな加工設備を導入する方針だ

日鉄は19年以降、広畑地区のほか、九州製鉄所八幡地区(北九州市)で電磁鋼板向けに設備投資をしてきた。今回の追加投資で、同社の電磁鋼板関連の投資は総額で1000億円を超える。

国内ではJFEスチールも西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)で設備増強を検討している。

鉄鋼各社が投資を急ぐのは、新興国などでの電力需要の高まりに加え、世界的にEVの普及拡大を見込んでいることが大きい。


◎他社の話を入れる前に…

電気自動車(EV)に使う高性能鋼板を増産する」という話を柱に据えて記事を書くならば、どの程度の「増産」になるかは必ず入れるべきだ。それが分からないのならば「増産」で見出しを立てるのは諦めてほしい。

仮に「増産」がものすごく重要なニュースで、取材してもどの程度の「増産」か分からなかったのだとしよう。その場合は「分からない」と記事中で明示すべきだ。

できれば現状でどの程度の生産量なのかも入れたい。しかし、そうした情報もない。「増産」の時期は「21年以降」だと言うことは分かるが、「21年以降」はあくまで「投資」の時期なので「増産」が始まる時期には触れていない。情報がなさすぎだ。

鉄鋼各社が投資を急ぐのは、新興国などでの電力需要の高まりに加え、世界的にEVの普及拡大を見込んでいることが大きい」と最初の段落とのダブり感がある情報を盛り込むぐらいならば「日本製鉄」が「電気自動車(EV)に使う高性能鋼板」の市場でどのぐらいのシェアを持っているのかといった話を入れたい。

国内ではJFEスチールも西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)で設備増強を検討している」といった他社の話に触れるのは「日本製鉄」の情報をしっかり伝えてからだ。


※今回取り上げた記事「日鉄、EV向け鋼板増産~400億円で新加工設備」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201106&ng=DGKKZO65896760V01C20A1TJ2000


※記事の評価はE(大いに問題あり)

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