2020年3月28日土曜日

日経 河浪武史・後藤達也記者の「FRB資産 最高570兆円」に注文

28日の日本経済新聞朝刊総合5面に載った「FRB資産 最高570兆円~低格付け市場、なお不安定」という記事には引っかかる部分がいくつかあった。まず最初の段落だ。
筑後川橋と菜の花(福岡県久留米市)
       ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

米連邦準備理事会(FRB)が2008年の金融危機時を上回る資金供給を続けている。25日時点の総資産は5兆2542億ドル(約570兆円)と過去最高を更新した。2週間で9423億ドル(約103兆円)増え、ピーク時の日銀の年間増加額(約80兆円)を上回った。国債の大量購入や短期市場の資金供給に取り組むが、企業金融の一角はなお不安定だ。FRBはリスクのある社債などを購入する資金供給策も検討している。



◎「最高」より「最大」の方が…

25日時点の総資産は5兆2542億ドル(約570兆円)と過去最高を更新した」と書き、見出しも「FRB資産 最高570兆円」と「最高」を使っている。個人的には「最大」を推したい。「最高」だと「FRBの総資産が増えるのは良いこと」という印象を受けるからだ。「最大」の方が中立的な感じがする。

2008年の金融危機時を上回る資金供給を続けている」と記したのに「2008年の金融危機時」との比較がないのも感心しない。「ピーク時の日銀の年間増加額(約80兆円)を上回った」と書く前に「FRB」の「金融危機時」の動きがどうだったのかを伝えてほしい。

今回の記事で最も気になったのが最後の段落だ。そこでは以下のように解説している。

【日経の記事】

中央銀行が損失リスクを負えば、通貨そのものの信頼を損ねる可能性がある。そのため主要中銀の資金供給策は、対象を安全性の高い資産に限ってきた。ただその発想は08年の金融危機時、日銀がCP購入を渋って「中銀の独りよがり」と手厳しく批判された。経済の危機と中銀の健全性をどう両立するか。答えの出ない局面が再び訪れた。



◎日銀のETF購入は?

上記の説明だと「主要中銀の資金供給策」は今でも「対象を安全性の高い資産に限って」いると取れる。だが日銀はどうか。日経も18日の記事で「日銀が金融市場への資金供給を増やしている。(中略)上場投資信託(ETF)も1日分として過去最大の約1200億円を購入した」と書いている。

日銀が購入している「ETF」は「安全性の高い資産」とは言い難い。「主要中銀」の一角である日銀はリスクの高い資産の買い入れで既に大きな「損失リスク」を負っているのではないか。それとも日銀を「主要中銀」ではないと見ているのだろうか。

ついでに言うと「経済の危機と中銀の健全性をどう両立するか」という文は舌足らずだ。「危機」は維持すべきものではない。「経済危機の克服と中銀の健全性をどう両立するか」などとすべきだ。


※今回取り上げた記事「FRB資産 最高570兆円~低格付け市場、なお不安定
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200328&ng=DGKKZO57316780X20C20A3EA5000


※記事の評価はD(問題あり)。河浪武史記者と後藤達也記者への評価はDを据え置く。


※河浪記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「インフレはドル高招く」と日経 河浪武史記者は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/12/blog-post_14.html

「米利上げ 独走強まる」に無理がある日経 河浪武史記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_32.html

米ゼロ金利は「2008年の金融危機以来」? 日経 河浪武史記者に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/2008.html


※後藤記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「先進国の金利急低下」をきちんと描けていない日経 後藤達也記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_87.html

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