2020年2月1日土曜日

記事の柱を意識してる? 日経 細川幸太郎記者「LG系、TV液晶韓国生産中止」

ニュース記事を書く時は「何が柱なのか」を意識する必要がある。1日の日本経済新聞朝刊企業・アジアBiz面に細川幸太郎記者が書いた「TV液晶韓国生産中止~LG系、中国勢攻勢で採算悪化」という記事は、そこが欠けている。
筑後川橋(福岡県久留米市)
     ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

液晶パネル世界最大手の韓国LGディスプレーは31日、国内でのテレビ向け液晶パネルの生産を中止する方針を明らかにした。韓国北部にある工場のラインを年内に止める。液晶パネルは中国勢が生産を増やして市況が悪化しており、採算改善の見通しが立たないためだ。同日発表の2019年12月期の連結決算は8年ぶりに営業損益が赤字に転落し、赤字額も過去最大となった。

生産中止は同日の決算発表後の電話会見で、徐東熙(ソ・ドンヒ)最高財務責任者(CFO)が明らかにした。徐氏は「液晶パネル市場の変化に適応するため生産能力の最適化を進める」と話し、収益悪化に歯止めがかからないテレビ向けパネルから自動車や産業用パネルへの転換を模索するという。

韓国の坡州(パジュ)にある工場を止め、テレビ向け液晶パネルは中国広州市の自社工場で生産を続ける

LGDの19年10~12月期の連結決算は、営業損益が4220億ウォン(約390億円)の赤字(前年同期は2790億ウォンの黒字)で、売上高は8%減の6兆4220億ウォンだった。液晶パネルの市況悪化が最大の要因。19年通期の営業損益は1兆3590億ウォンの赤字だった。

さらにLGDは10~12月期に資産の評価損で1兆6000億ウォンの特別損失を計上した。そのうち1兆4000億ウォン分が、米アップルのiPhone向けの有機ELパネルラインの減損だ。LGDは19年からiPhone向けに有機ELパネルの供給を始めたものの品質が安定せず納入量が伸び悩んだ。


◎肝心なところが…

液晶パネル世界最大手の韓国LGディスプレーは31日、国内でのテレビ向け液晶パネルの生産を中止する方針を明らかにした」と冒頭で記し、見出しでも「TV液晶韓国生産中止」と打ち出している。どう考えても「TV液晶韓国生産中止」が記事の柱だ。しかし、記事の約半分を決算の説明に費やしており、「生産中止」に関する情報が乏しい。何が記事のメインなのか、あまり考えずに書いたのだろう。

LGディスプレー」が「坡州(パジュ)にある工場を止め」るとどの程度の生産減になるのかは絶対に入れたい情報だ。「テレビ向け液晶パネルは中国広州市の自社工場で生産を続ける」ようなので、こちらの生産規模も知りたい。

中国広州市の自社工場」は競争力が高く「中国勢」に十分対抗できるのか。「坡州(パジュ)にある工場を止め」ても「液晶パネル世界最大手」の地位は確保できるのか。その辺りも気になるところだ。

しかし、記事の後半は決算内容の説明に終始している。決算に触れるなとは言わない。しかし、それは「TV液晶韓国生産中止」に関してしっかり書き込んでからでいい。今回のレベルで「しっかり書き込んだ」と思っているのならば、認識が甘すぎる。

ついでに言うと、決算についてもなぜ「営業損益」で書いているのかとの疑問が残った。「10~12月期に資産の評価損で1兆6000億ウォンの特別損失を計上した」のならば、その影響も反映される最終損益ベースで説明する方が適切ではないか。

最終損益での「赤字額も過去最大となった」のかは知りたい。


※今回取り上げた記事「TV液晶韓国生産中止~LG系、中国勢攻勢で採算悪化


※記事の評価はD(問題あり)。細川幸太郎記者への評価もDを据え置く。細川記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「北朝鮮、日本上空越える『発射』を示唆」で感じた日経とNHKの実力差
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/nhk.html

適法でも「ライドシェア起訴」? 理解に苦しむ日経 細川幸太郎記者の記事
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_9.html

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