2020年2月26日水曜日

完成度が低すぎる日経 増田咲紀記者「東エレク、株価に底堅さ」

日本経済新聞朝刊 投資情報面のトップ記事をニュースで作らないのは好ましい。無理な業績先取りをしないためにも、分析記事で紙面を埋めるのに賛成だ。しかし26日の「東エレク、株価に底堅さ~5G半導体大きい潜在性 市況の回復時期探る」という記事は完成度が低すぎる。筆者の増田咲紀記者の実力不足ももちろんあるだろうが、証券部デスクの責任も重い。
九州大学病院(福岡市)※写真と本文は無関係です

最初の段落から見ていこう。

【日経の記事】

半導体銘柄の代表格、東京エレクトロンの業績を巡り、株式市場では回復期待が根強い。新型コロナウイルスによる~肺炎が拡大している影響が及びはするものの、次世代通信規格「5G」など向けに半導体の需要が徐々に戻ってくるとの見立てだ。実際、東エレク株は25日、相場全体の下げにつれ安したところで押し目買いが入り、チャートは始値より終値が高い「陽線」を描いた



◎1日だけの「底堅さ」?

東エレク、株価に底堅さ」と打ち出しているが、「底堅さ」が見られたのは「25日」だけのようだ。例えば「2月に入って半導体関連銘柄は軒並み20%以上の下げとなっているのに、東エレクだけは3%程度しか下がっていない」などと書いてあれば「底堅さ」を実感できるのだが、1日限定の話だと「たまたまでは?」と思ってしまう。

しかも「25日」の日経平均株価は1000円以上の下落となった後で下げ渋り781円安で終えている。「東エレク」も似たような動きだ。「相場全体の下げにつれ安したところで押し目買いが入り、チャートは始値より終値が高い『陽線』を描いた」としても驚くには当たらない。なのになぜ「東エレク、株価に底堅さ」でトップの記事を作ろうとしたのか。

付け加えると「半導体銘柄の代表格、東京エレクトロン」と冒頭で書いているものの、半導体製造装置メーカーだとは最後まで説明していない。これだと「東エレク」をよく知らない読者は半導体メーカーだと誤解してしまう。この辺りにも作り手の実力不足が垣間見える。

記事の続きを見ていこう。第2段落から「東エレク」に関する分析が始まるかと思ったら、なぜか「半導体業界」の話が延々と続く。

【日経の記事】

新型肺炎の影響は半導体業界にも広がり始めている。中国の一部の半導体工場は従業員や部品の確保が難しく、稼働率が低迷しているもよう。中国では店舗閉鎖などで消費も冷え込み、20年に本格化すると見込まれていた5Gスマートフォンの立ち上げが遅れつつある。米アップルは1~3月期の売上高が予想を達成できないと発表した。

ここから先を市場関係者はどう見ているのだろうか。複数の証券アナリストに聞き取ったところ、「(半導体市況は)回復期が終わり繁忙期に入った」(野村証券の和田木哲哉氏)など楽観的な声が目立った。2020年の半導体市場は19年(4089億ドル=45兆円強)比で2~10%成長するとの見方が多い。

スマホの販売不振などを受け、世界の半導体メーカーは18年以降投資を抑制し、半導体販売もマイナス成長が続いた。とはいえ、20年以降、どこかのタイミングで半導体メーカーは投資の拡大に動く必要がある。市況反転のタイミングは肺炎の影響で後ずれを余儀なくされているが、「2~3月は緩やかな伸びとなるだろう」(大和証券投資信託委託の岩手幸久エコノミスト)との声があった。

慎重論も残る。肺炎の影響が長期化し、サプライチェーンの混乱が夏ごろまで続く場合、20年の半導体市場は前年比で小幅のマイナスからプラス6%増になると予想する。スマホ工場などの稼働が低迷した状態が続き、半導体市場の逆風になるとの見方だ。ただ、慎重派のアナリストも5Gなどに絡んで半導体需要がいずれ拡大するとみており、「回復はタイミングの問題」との声が多く聞かれた。

半導体関連企業は肺炎問題が収束した後の需要増を見越してさまざまな手を打ち始めている。半導体製造装置のディスコは投資家向け広報(IR)も含めた間接部門の社員が工場へ応援に向かい、在庫を積み増している。

韓国サムスン電子は西安工場(陝西省西安市)で予定通り設備を増強するため、「韓国から人員を送り込んだり、現地での人材集めに力を入れたりしている」との観測がある。東エレクは中国の混乱が長引けば、中国に依存する一部の部品の調達先を切り替えるという。



◎「東エレク」はどこへ?

半導体市場全体の分析から「ディスコ」や「サムスン電子」へと話が移っていくが、「東エレク」は登場しない。残りは最終段落だけだ。増田記者はきちんと分析できているだろうか。

【日経の記事】

先行きには不透明さが残るものの、東エレクなどの業績は「肺炎の問題が収束すれば顧客からの引き合いが高まり、挽回していくだろう」(国内証券)といった声が市場では根強い。この日、朝方に一時5%安まで売られた東エレク株はその後、大きく下げ渋って2%安で取引を終えた。



◎これだけ?

東エレクなどの業績は『肺炎の問題が収束すれば顧客からの引き合いが高まり、挽回していくだろう』(国内証券)といった声が市場では根強い」と書いて、後は「25日」の株価をなぞって終わりだ。

東エレクなどの業績」なので「東エレク」に絞った分析は結局ない。だったらなぜ「半導体銘柄の代表格、東京エレクトロンの業績を巡り、株式市場では回復期待が根強い」と冒頭で打ち出したのか。

半導体銘柄」の中でも特に「回復期待が根強い」からトップ記事にしたのではないか。「東エレク」固有の強みがあるから「回復期待が根強い」のではないか。

何のために「東エレク」に焦点を当てるのか。そこを意識せずに取材して記事をまとめているので、こんな内容になってしまう。増田記者と担当デスクは「なぜこんな完成度になってしまったのか」をしっかり反省してほしい。


※今回取り上げた記事「東エレク、株価に底堅さ~5G半導体大きい潜在性 市況の回復時期探る
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200226&ng=DGKKZO56048920V20C20A2DTA000


※記事の評価はD(問題あり)。増田咲紀記者への評価は暫定C(平均的)から暫定Dへ引き下げる。増田記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「GAFAがデータ独占」と誤解するのは日経グループの癖?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/gafa.html

ヤフー・アスクルの件を「親子上場」の問題と捉える日経の無理筋
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post.html

1 件のコメント:

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