2020年2月12日水曜日

週刊エコノミストで無理のある世代論を展開する小川仁志氏

基本的に「世代論には意味がない」と思っている。連続する世代をどこかで区切って論じる場合は特に説得力がなくなる。年齢が1つ違うだけでは、価値観などに大きな違いは生じないからだ。
福岡県立博多青松高校(福岡市)※写真と本文は無関係

週刊エコノミスト2月18日号に載った「小川仁志の哲学でスッキリ問題解決(21)」という記事はその典型だ。問題の部分を見ていこう。

【エコノミストの記事】

Q 中堅の人材がすぐ辞めてしまいます。つなぎとめておく方法はありますか

A 粋な計らいで手本を示せ

最近、各業界でリストラの動きが活発化していますが、幸い我が社では人員調整には至っていません。むしろ逆に、30~40代の働き盛りの人材確保に苦労しています。特に就職氷河期を体験し、フリーター生活に甘んじていたという人材を数人、中途採用しましたが、少しでも仕事で行き詰まったり、上司からきつく注意されたり、また、休日が取れないなど、以前では考えられなかった理由ですぐ辞めてしまいます。どうすれば、彼らをつなぎとめておけるのか教えてください。(48歳・銀行員)

私も今年50歳なのですが、今の50代以上と、それより若い年代とでは価値観に大きな違いがあると言っていいでしょう。私が新入社員の頃は終身雇用が当たり前で、会社生活が人生のすべてのように言われていました。ところが、その後雇用が流動化していき、会社や仕事以外に人生の喜びを見いだす人が増えてきたのです。

ですから、今の30代から40代の働き盛りの若い人たちに、50代、60代の価値観を押し付けてもかみ合わないのです。いわば50代以上の価値観が会社べったりの一元論で生きているのに対して、40代以下の価値観は会社とそれ以外の生活を同じように大事にする二元論で生きているわけです。



◎50歳と49歳はそんなに違う?

今の50代以上と、それより若い年代とでは価値観に大きな違いがあると言っていいでしょう」と小川氏は言う。だとすると50歳と49歳では「価値観に大きな違いがある」はずだ。これに納得する人はいるのか。

百歩譲って小川氏の言う通り「価値観に大きな違いがある」としよう。しかし相談者は「48歳・銀行員」なので「40代以下の価値観」を持っている。その人に「今の30代から40代の働き盛りの若い人たちに、50代、60代の価値観を押し付けてもかみ合わないのです」と助言しても意味はないだろう。

上司からきつく注意されたり、また、休日が取れないなど、以前では考えられなかった理由ですぐ辞めて」しまうという「30~40代の働き盛りの人材」と相談者は同世代だ。

それともこの「48歳・銀行員」は「50代、60代の価値観を押し付けて」いるタイプだと小川氏は見ているのか。その場合「今の50代以上と、それより若い年代とでは価値観に大きな違いがある」という話はどうなるのか。

そもそも「50代以上の価値観が会社べったりの一元論で生きている」というのも決め付けが過ぎる。「50代以上」にも様々な人がいる。例えば、就職した会社を数年で辞めて実家の寺を継いだ場合「会社べったりの一元論で生きている」と言えるのか。

50代以上」も「40代以下」も個別に見れば均質ではない。そこを無視して「50代以上の価値観が会社べったりの一元論で生きている」と断じると一気に説得力がなくなる。

ちなみに今の50代の多くはかつて「新人類」と呼ばれた。「新人類」とは「従来とは異なる価値観や感性をもつ若い世代を、新しく発見された人種のようにいう語。1980年代半ばから言われ出した語」(大辞林)だ。

実際に「従来とは異なる価値観や感性」を持っていたのかは微妙だが、「会社生活が人生のすべてのよう」な生き方をしないのが「新人類」だと思われていた面はある。小川氏は知らないかもしれないが…。


※今回取り上げた記事「小川仁志の哲学でスッキリ問題解決(21)
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200218/se1/00m/020/029000c


※記事の評価はD(問題あり)。小川仁志氏への評価はDで確定とする。小川氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「スッキリ問題解決」の看板倒れが凄い哲学者・小川仁志氏の悩み相談
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_12.html

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