2020年1月6日月曜日

2020年も苦しい日経 大林尚上級論説委員「核心~選挙巧者のボリスノミクス」

2020年も日本経済新聞の大林尚上級論説委員は苦しい内容の記事を読者に届け続けるのだろう。6日の朝刊オピニオン面に載った「核心~選挙巧者のボリスノミクス」という記事を読むと、そう思わずにはいられない。
のこのしまアイランドパークのコスモス(福岡市)
           ※写真と本文は無関係です

今回のテーマは「ボリスノミクス」。「シンガポールのような割り切った規制と税制によって外資の呼び込みに弾みをつける。これを仮にボリス(※英国のボリス・ジョンソン首相)の経済政策『ボリスノミクス』と名づけよう」と切り出した大林上級論説委員は、以下のように話を進めている。


【日経の記事】

英国はビッグバン(金融大改革)の発祥国だ。その旗をふったサッチャーにならい、ITと金融サービスが融合したフィンテックを操るスタートアップを英政府が全力で後押しするのも、ボリスノミクスだ。チャレンジャー銀行と呼ばれる個人取引に特化したアプリ銀行は、その政府方針が生みだした。店を持たず、預金者は取引のすべてをスマートフォンのアプリですませる。英当局は矢継ぎ早に銀行免許をあたえている

そのひとつmonzo(モンゾ)の場合、口座を開くときの本人確認は運転免許証をスマホにかざせば2分とかからない。ほどなくデビットカードが届く。日常の支払い、送金、給与振り込みなどはアプリで完結する。友達との割り勘もさっとできる。

利用者のメリットは2点。まず、取引すると間髪をおかず明細がスマホに届く。週末も支払いや送金が滞りなくすんだのが確認できる。使う側の安心と銀行側の信用を保つしかけだ。もうひとつは、手数料をほとんど取られない。英国外で支払いに使ったときの為替手数料はゼロだ。

ヘビーユーザーのある会計士は「モンゾは暮らしを変えた」と話す。確実、柔軟、安価の3拍子をそろえたチャレンジャー銀行は、既存行には大いなる脅威。「ただのプリペイドカード会社があっという間に銀行業を営むようになる。当局のフィンテック支援あればこそだ」。こう語るのは、口座をもてない低所得者に、手取り給料を小口化して決済サービスを提供するドレミング英国法人の吉房純輝・最高経営責任者だ。日本銀行出身の吉房氏は、当局の本気度が日本に乏しいのを知る。


◎「ボリスノミクス」と呼べる?

ボリス・ジョンソン首相が就任後に始めた経済政策を「ボリスノミクス」と呼ぶならば分かる。しかし、ずっと前から続いていてジョンソン首相も継承しているだけならば「ボリスノミクス」と称するのは無理がある。

大林上級論説委員は「フィンテックを操るスタートアップを英政府が全力で後押しするのも、ボリスノミクスだ」と言い切り「チャレンジャー銀行」の1つとして「monzo(モンゾ)」を紹介している。

他のメディアの記事を見ると「モンゾ」は2015年に創業したようだ。ジョンソン首相の就任は19年。「チャレンジャー銀行」に「英当局」が「矢継ぎ早に銀行免許をあたえている」とすれば、それはジョンソン首相が始めたこととは考えにくい。なのに「ボリスノミクス」と言えるのか。

それに、「ボリスノミクス」とは「シンガポールのような割り切った規制と税制によって外資の呼び込みに弾みをつける」ものだったはずだ。

チャレンジャー銀行」に関して、英国がどんな「割り切った規制と税制」を採用したのか大林上級論説委員は教えてくれない。「外資の呼び込み」に成功した話も出てこない。

モンゾは暮らしを変えた」という「ヘビーユーザーのある会計士」のコメントも説得力に欠ける。「利用者のメリットは2点」で、「まず、取引すると間髪をおかず明細がスマホに届く」らしい。

百歩譲ってこれが便利なサービスだとしても「暮らしを変え」る力があるとは思えない。それに、店舗での「取引」でレシートなどの「明細」を「間髪をおかず」にもらえることは珍しくない。個人的には、「取引すると間髪をおかず明細がスマホに届く」としても、そんなに便利だとは感じない。

手数料をほとんど取られない」のは助かるが、これも「暮らしを変え」る力があるか疑問だ。また、何を収益源にしているのか記事で説明していないのも感心しない。

記事の前半で行数稼ぎとも思えるフリを長々とする余裕があるのならば、この辺りはしっかり書き込んでほしかった。

それを大林上級論説委員に求めるのは酷なのかもしれないが…。


※今回取り上げた記事「核心~選挙巧者のボリスノミクス
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200106&ng=DGKKZO53929300X21C19A2TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。大林尚上級論説委員への評価はF(根本的な欠陥あり)を維持する。大林氏については以下の投稿も参照してほしい。

日経 大林尚編集委員への疑問(1) 「核心」について
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_72.html

日経 大林尚編集委員への疑問(2) 「核心」について
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_53.html

日経 大林尚編集委員への疑問(3) 「景気指標」について
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post.html

なぜ大林尚編集委員? 日経「試練のユーロ、もがく欧州」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_8.html

単なる出張報告? 日経 大林尚編集委員「核心」への失望
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_13.html

日経 大林尚編集委員へ助言 「カルテル捨てたOPEC」(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_16.html

日経 大林尚編集委員へ助言 「カルテル捨てたOPEC」(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_17.html

日経 大林尚編集委員へ助言 「カルテル捨てたOPEC」(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_33.html

まさに紙面の無駄遣い 日経 大林尚欧州総局長の「核心」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_18.html

「英EU離脱」で日経 大林尚欧州総局長が見せた事実誤認
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_25.html

「英米」に関する日経 大林尚欧州総局長の不可解な説明
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/blog-post_60.html

過去は変更可能? 日経 大林尚上級論説委員の奇妙な解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_14.html

年金に関する誤解が見える日経 大林尚上級論説委員「核心」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/11/blog-post_6.html

今回も問題あり 日経 大林尚論説委員「核心~高リターンは高リスク」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_28.html

日経 大林尚論説委員の説明下手が目立つ「核心~大戦100年、欧州の復元力は」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/100.html

株安でも「根拠なき楽観」? 日経 大林尚上級論説委員「核心」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_20.html

日経 大林尚上級論説委員の「核心~桜を見る会と規制改革」に見える問題
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_25.html

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