2019年4月25日木曜日

「JDIに注がれた血税が消える」?FACTAで大西康之氏が奇妙な解説

ジャーナリストの大西康之氏が書く記事は相変わらず問題が多い。FACTA5月号に載った「『JDI敗退』官邸官僚は万死」という記事にも首を傾げたくなる記述が目立つ。
流川桜並木(福岡県うきは市)※写真と本文は無関係です

まずは冒頭部分を見ていこう。

【FACTA】

ジャパンディスプレイ(JDI)は4月12日、台湾の電子部品メーカーの宸鴻光電科技(TPK)など台中勢3社から800億円の金融支援を受けると発表した。2012年に発足した「日の丸液晶連合」は平成で終わり「中華液晶連合」として「令和」に生き残りをかける。「日の丸」にこだわり続けた結果、3千億円を超える血税が「無駄金」になった。JDIに出資するのはTPKの他、台湾金融大手の富邦グループ、中国大手ファンドの嘉実基金管理グループの3社。400億円強を現金で出資し、残りは新株予約権付社債を取得する。台中3社のJDIへの出資比率は49・8%になり「日の丸企業」ではなくなる。

「日の丸企業でなくなることが悪い」と言っているのではない。このグローバル化の時代、どこの資本がマジョリティーを握るかはさしたる問題ではない。問題は設立から7年の間に「日の丸液晶を守れ」の掛け声でJDIに注がれた血税が消えることだ


◎「血税が消える」?

この記述からは「JDIに注がれた血税が消える」ことは決まっていて、その額は「3千億円を超える」と判断できる。しかし記事を読み進めると「INCJはJDIの上場とその後の株売却で2千億円の投資のうち1600億円を回収、700億円の売却益を得た」と出てくる。

血税が消える」どころか「1600億円を回収、700億円の売却益を得た」らしい。投資としては大成功とも言える。「INCJ」から「JDI」への融資などもあるようだが、債権放棄に応じたといった話は聞かないし、大西氏もそうは書いていない。今回の記事では何を以って「JDIに注がれた血税が消える」と言っているのか謎だ。

JDI」がいずれ経営破綻すると大西氏は見ているということか。ならばそう書くべきだ。かつて「もはや行き着く先は決まっている。東芝の経営破綻だ」と東芝の破綻を大胆に予言して見事に外した大西氏の読みを素直に信じる気にはもちろんなれないが…。

記事の続きを見ていこう。

【FACTAの記事】

JDIは19年3月期で5期連続の最終赤字が決まっている。一般的な上場企業なら3期連続で事実上の銀行管理になり、5期連続なら法的または私的整理のプロセスに入る状況である。すでに現預金は底をついており「有機ELなど新規事業への投資」の名目で官製ファンドの産業革新機構(INCJ)から調達した資金も、日々の運転資金で消えてしまった。 経営がうまくいかない最大の原因は「官の介入」だ。



◎そんな原則ある?

一般的な上場企業なら3期連続で事実上の銀行管理になり、5期連続なら法的または私的整理のプロセスに入る状況である」との説明が引っかかった。そんな原則があるのか。

常識的に考えればケースバイケースだろう。自己資本が厚く無借金の会社であれば「3期連続」で「最終赤字」になっても「事実上の銀行管理」にはなりにくい。

上場企業に親会社がある場合もそうだ。子会社の赤字が続いても、親会社の経営がしっかりしていれば「事実上の銀行管理」になる可能性はゼロに近い。

経営がうまくいかない最大の原因は『官の介入』だ」との説明も納得できなかった。記事では「寄り合い所帯のJDI経営陣が牽制しあっているうちに、いつの間にか実権を握った男がいる。社外取締役の谷山浩一郎である」と書き、「谷山浩一郎」氏による経営の問題点を指摘していくが、最後になって「だがJDI迷走の責任を谷山一人に負わせるのは酷である。谷山は経産省やその先にある官邸の意向を忖度して動いたに過ぎない」となってしまう。

実権を握った」のが「谷山浩一郎」氏で、同氏が勝手に「官邸の意向を忖度」したのならば、「経営がうまくいかない最大の原因は『官の介入』」とは言えない。「谷山浩一郎」氏の問題だ。

実際に「官の介入」があったのならば「谷山浩一郎」氏が「実権を握った」とは言えない。「実権」は「官邸官僚」にあったはずだ。「谷山浩一郎」氏は「官邸の意向を忖度して動いた」のではなく「官の介入」で操られていたことになる。

「どっちなの?」と大西氏に聞きたくなるが、本人もよく分かっていないのだろう。分かっているとしたら説明が下手すぎる。


※今回取り上げた記事「『JDI敗退』官邸官僚は万死
https://facta.co.jp/article/201905003.html


※記事の評価はD(問題あり)。大西康之氏への評価はF(根本的な欠陥あり)を維持する。大西氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経ビジネス 大西康之編集委員 F評価の理由
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_49.html

大西康之編集委員が誤解する「ホンダの英語公用化」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_71.html

東芝批判の資格ある? 日経ビジネス 大西康之編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_74.html

日経ビジネス大西康之編集委員「ニュースを突く」に見える矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_31.html

 FACTAに問う「ミス放置」元日経編集委員 大西康之氏起用
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/facta_28.html

文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」が空疎すぎる大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_10.html

文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」 大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_12.html

文藝春秋「東芝 倒産までのシナリオ」に見える大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/blog-post_74.html

大西康之氏の分析力に難あり FACTA「時間切れ 東芝倒産」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/facta.html

文藝春秋「深層レポート」に見える大西康之氏の理解不足
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_8.html

文藝春秋「産業革新機構がJDIを壊滅させた」 大西康之氏への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_10.html

「東芝に庇護なし」はどうなった? 大西康之氏 FACTA記事に矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/facta.html

「最後の砦はパナとソニー」の説明が苦しい大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/12/blog-post_11.html

経団連会長は時価総額で決めるべき? 大西康之氏の奇妙な主張
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/01/blog-post_22.html

大西康之氏 FACTAのソフトバンク関連記事にも問題山積
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/facta.html

「経団連」への誤解を基にFACTAで記事を書く大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/facta.html

「東芝問題」で自らの不明を総括しない大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_24.html

大西康之氏の問題目立つFACTA「盗人に追い銭 産業革新機構」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/09/facta.html

FACTA「デサント牛耳る番頭4人組」でも問題目立つ大西康之氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/facta4.html

大西康之氏に「JIC騒動の真相」を書かせるFACTAの無謀
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/jicfacta.html

FACTAと大西康之氏に問う「 JIC問題、過去の記事と辻褄合う?」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/facta-jic.html

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