2019年4月24日水曜日

強引な「まとめ物」 日経「川重など油圧機器増産」の問題点

無理のある「まとめ物」はやめた方がいいと繰り返し訴えているが、日本経済新聞の紙面からなくなる気配はない。24日の朝刊企業2面に載った「川重など油圧機器増産 北米・アジアなど 建機需要増に対応」という記事も内容がかなり苦しい。全文を見た上で具体的に指摘したい。
浦山公園の桜(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係

【日経の記事】

世界的な建設機械需要の高まりを背景に、油圧機器各社が生産体制を増強する。川崎重工業は2019年中にも米国で建機向けの生産を始める。KYBも約40億円を投じ日本と中国で増産する。北米やアジアなどのインフラ投資が活況な中、世界的に生産拠点を増やし貿易リスクにも備える。

川重は数億円を投じ米ミシガン州の販売・サービス拠点に建機向けポンプのラインを設け、年4千~5千台程度を生産する。

土木作業に使う油圧ショベル向けではなく、ホイールローダーや農業向けのトラクターなど新分野のポンプ需要を開拓する。「納入する機種の種類を増やし、需要変動に対応しやすくする」(嶋村英彦精密機械ビジネスセンター長)狙いだ。

中国やインド、英国でも増産を進めている。米生産開始で油圧機器の生産拠点は世界6極体制となり、世界全体の生産能力を21年度には18年度比で25%増やす。

KYBは長野県の小型ショベル工場で建屋を新設。コントロールバルブの生産能力を年間10万台前後と2割増やし秋にも稼働する。中型ショベル向けのモーターも日本、中国の工場合わせて6割増の年15万台にする

英調査会社のオフ・ハイウェイ・リサーチによれば世界の建設機械需要は18年に前年比26%増え過去最高の112万台に達した。19年以降は需要の伸びが一服しそうな状況だ

◇   ◇   ◇

気になった点を挙げてみる。

(1)なぜ2社?

これも繰り返し指摘しているが、まとめ物で2社は辛い。最低でも3社、できれば4社は欲しい。でないと「この業界ではそういう流れなんだな」と納得できない。


(2)話が違ってない?

世界的な建設機械需要の高まりを背景に、油圧機器各社が生産体制を増強する」と冒頭で打ち出しているが、最後に「19年以降は需要の伸びが一服しそうな状況だ」と述べている。

油圧機器各社が生産体制を増強する」のは「19年以降」だ。「需要の伸びが一服しそうな状況」で「各社が生産体制を増強する」のは解せない。過去の計画をいまさら止められないのか、あるいは「油圧機器各社」が愚かなのか。その辺りを記事は何も教えてくれない。


(3)「年4千~5千台」と言われても…

年4千~5千台程度を生産する」と書いているが、全体の生産規模に触れていないので「年4千~5千台」がどれほどのものか評価しづらい。

さらに言うと「農業向けのトラクターなど新分野のポンプ需要を開拓する」のであれば「世界的な建設機械需要の高まりを背景に」という説明とあまり整合しない。「農業向けのトラクター」は「建設機械」ではないだろう。


(4)いつの話?

KYB」について「中型ショベル向けのモーターも日本、中国の工場合わせて6割増の年15万台にする」と書いているが、「年15万台にする」時期は不明。whenに触れない日経の悪い癖が出ている。

まとめ物の企業ニュース記事を書く基礎的な能力が身に付いていない記者が書いて、それを指導すべき企業報道部のデスクも問題意識を持たずにそのまま紙面に載せてしまった--。今回の記事には、そんな印象を持った。


※今回取り上げた記事「川重など油圧機器増産 北米・アジアなど 建機需要増に対応
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190424&ng=DGKKZO44096000T20C19A4TJ2000


※記事の評価はD(問題あり)。

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