2019年4月5日金曜日

基礎力の欠如が見える日経「ハイデイ日高が税引き益1%増」

業績関連記事を書くための基礎が身に付いていないと思える記事が、5日の日本経済新聞朝刊 投資情報面に載っていた。「ハイデイ日高が税引き益1%増 今期単独31億円」というベタ記事だ。全文を見た上で問題点を指摘したい。
筑後川沿いの桜と菜の花(福岡県久留米市)
           ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

ラーメン店「日高屋」を展開するハイデイ日高は4日、2020年2月期の単独の税引き利益が前期比1%増の31億円になる見通しだと発表した。季節メニューの充実などで既存店の売上高は前期並みを見込む。一方、人件費が膨らむほか、米など食材費が増加。売上高原価率は27.3%と前期比0.3ポイント上がる

売上高は435億円と前期比4%増える見通し。日高屋や焼き鳥店「焼鳥日高」の出店を増やす。人件費増に対応し、券売機を新店に加え既存店にも順次、試験的に導入する予定だという。



◎増益理由が…

ハイデイ日高」の「2020年2月期の単独の税引き利益が前期比1%増の31億円になる見通しだ」というのが記事の柱だ。「ほぼ横ばい」「増益」のどちらで見るか微妙だが、ここでは「増益」の前提で話を進める。

その場合「なぜ増益見通しになるのか」は必須だ。しかし、記事からはその理由が読み取れない。

既存店の売上高は前期並み」で「人件費が膨らむほか、米など食材費が増加。売上高原価率は27.3%と前期比0.3ポイント上がる」らしい。ここまで読むと減益になりそうな雰囲気だ。

売上高は435億円と前期比4%増える見通し」なので、「新店の寄与で増益確保」という話かもしれない。ただ、あくまで推測だ。肝心の材料を読者に提示していないのに「人件費増に対応し、券売機を新店に加え既存店にも順次、試験的に導入する予定だという」などと重要性の低い話を書いて記事を締めてしまう。

記事の書き方としては「持っている材料をとりあえず並べてみました」といったレベルだ。

業績関連記事を書く基礎的な技術を身に付けていれば、どうなるか。以下のようなプロセスを経て構成が決まるはずだ。

(1)「増益と見るか横ばいと見るか」を決める。ここでは「増益」とする。

(2)あくまで「微増益」なので、これを「健闘」と捉えるか「苦戦」と捉えるかを決める。ここでは「苦戦」とする。

(3)「増益ではあるが1%増と苦戦しそうだ」と読者に伝えるための構成を考える。

ざっとこんな感じだ。構成としては「既存店売上高は横ばい。新店の寄与で増益は確保するものの、人件費や食材費の増加で原価率が上昇して利益の伸びを抑える」といった流れか(繰り返すが「新店の寄与で増益確保」はあくまで推測)。

この記事を書いた記者は、こうした点をあまり考えずに行数を埋めたのだろう。そしてデスクもきちんと指導できなかった。日経編集局内の誰かが「まだ基礎が身に付いていないよ」と記者に教えてあげてほしい。


※今回取り上げた記事「ハイデイ日高が税引き益1%増 今期単独31億円
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190405&ng=DGKKZO43338800U9A400C1DTA000


※記事の評価はD(問題あり)。

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