2019年4月14日日曜日

日経ビジネス白井咲貴・長江優子記者に感じた女性活躍への「偏見」

日経ビジネス4月15日号に載った「スペシャルリポート~読者と考えた 御社の女性が活躍しない3つの理由」という記事では、女性関連の記事によく出てくる「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」を取り上げている。これを取り除く大切さを筆者ら(白井咲貴記者と長江優子記者)は説くが、記事からはむしろ女性活躍に関する筆者らの「偏見」を感じた。
久留米成田山の桜 ※写真と本文は無関係です

まず見出しの「御社の女性が活躍しない3つの理由」から考えていこう。この見出しには「女性が活躍していない会社がまだまだある」との前提を感じる。もちろん「ない」とは断定できない。しかし、記事を最後まで読んでも「女性が活躍しない」会社の具体例は出てこない。そもそも「女性が活躍しない」会社はあるのか。仮にあるとして、筆者らは具体的に把握しているのかとの疑問が残る。

何を基準に「活躍しない」かどうかを判断するのかも気になる。これは記事から何となく分かる。

【日経ビジネスの記事】

政府は、15年に閣議決定した「第4次男女共同参画基本計画」で、20年までに民間企業での課長相当に占める女性比率を15%、部長相当を10%程度とする目標を掲げた。だが、実績は乏しい。17年時点で課長相当は10.9%、部長相当は6.3%にとどまる。役員に至っては、10%の目標に対し3.7%だ。

掲げる目標が高いわけではない。世界各国の女性管理職比率を見てみると、日本は12.9%にもかかわらず、米国は43.8%、欧州諸国も30%を超えている国が少なくない。役員で見ると、日本の3.7%に対し、フランスは34.4%。英国など欧州諸国は軒並み20~30%台で、経営層に女性は深く浸透している。

男女雇用機会均等法をきっかけに少しずつ女性が働きやすい環境づくりが進んできた日本。それでも平成の30年が終わろうとする今も、海外と比べると、十分に女性が能力を発揮できる環境になっているとはいえない。何が女性のキャリア形成を阻んでいるのか。

日経ビジネスは読者と共に課題を探る「オープン編集会議」を立ち上げ、有識者への取材や、メンバー同士の議論を通じて、問題点を探ることにした。メンバーは会社員、起業家、専業主婦経験者など男性を含む多様なバックグラウンドを持つ22人。参加者の問題意識は下記の囲み記事に記したが、女性のキャリアを阻む要因は、大きく分けて3つに絞り込まれた。


◎管理職以外は活躍してない?

ざっくり言えば「女性管理職比率が低いから日本の女性は活躍していない」と読み取れる。ここに筆者らの「偏見」が垣間見える。

アナウンサーで考えてみよう。男性のAさんは大学卒業後にずっと同じテレビ局に勤めアナウンサーとして仕事をし、50歳でアナウンス部長になった。女性のBさんは30歳でフリーになり、その後は会社員時代を大きく上回る収入を得て50歳の今もアナウンサーの仕事をしている。

この場合、「男性のAさんは活躍したが女性のBさんは活躍できなかった」となるのか。常識的に考えれば、どちらもアナウンサーとして「活躍」したはずだ。「女性管理職比率」を見て、女性は活躍しているとかしていないとか判断する方がおかしい。

白井記者と長江記者には自分たちに引き付けて考えてほしい。もしずっと記者を続けて最後まで管理職にならなかったら「私たちは活躍できなかった」と思うのか。

記事の最後にも「偏見」を感じた。


【日経ビジネスの記事】

16年のOECDのデータによると、日本の大卒で就業していない女性の比率は2割に達する。能力とやる気があるのに活躍できていない潜在的な働き手はまだまだいる。そうした人材の力をどう引き出すか。平成の30年に積み残してきた社会課題を解決するために企業がやるべきことは少なくない。



◎「働いていない=活躍してない」?

上記のくだりからは「就業していない女性活躍できていない潜在的な働き手」との前提を感じる。個人的には「就業していない女性」の多くが育児や介護で「活躍」している気がする。
流川桜並木(福岡県うきは市)
       ※写真と本文は無関係です

女性関連記事を書く女性のほとんどはいわゆるキャリアウーマンだ。なので、どうしても「専業主婦は活躍していない」との前提で記事を書いてしまいがちだ。その前提が自分にあることに気付いていないならば、それこそ「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」だ。

「家事や育児を活躍とは見なさない。働いてなきゃ活躍しているとは言えない」--。白井記者と長江記者はそう思っているのだろうか。

最後に「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」に関する説明にもツッコミを入れておきたい。

【日経ビジネスの記事】

こういった風潮の原因は、「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」と呼ばれる。「女性は出世したがらない」「子供のいる女性は育児に集中したいだろう」という思い込みが、女性の活躍を妨げている。これは男性のみならず、女性自身が持っている固定観念ともいえるから、根が深い。



◎「女性は出世したがらない」は「偏見」?

まず「女性は出世したがらない」との認識は「偏見」とは言い切れない。「全ての女性は出世したがらない」と信じているならば「偏見」だが、「女性は男性に比べて出世したがらない傾向がある」と思っている場合「偏見」ではない。そうした傾向を裏付ける調査もある。

子供のいる女性は育児に集中したいだろう」に関しては「子供のいる全ての女性は育児に集中したいだろう」との意味ならば、そんな認識を持っている人がいるのかとの疑問が湧く。白井記者と長江記者はそんな人物に出会ったことがあるのか。身近にいなくても、噂にでもそういう人がいると聞いたのか。これに関しては、こちらも根拠はないが「そんな人ほとんどいないのでは…」と言いたくなる。


※今回取り上げた記事「スペシャルリポート~読者と考えた 御社の女性が活躍しない3つの理由
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00117/00024/


※記事の評価はD(問題あり)。白井咲貴記者への評価は暫定でDとする。長江優子記者への評価はDを据え置く。長江記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「日本ワインも需要増に追いつかず」が怪しい日経ビジネス
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_26.html

「オリオン買収」に関する日経ビジネス長江優子記者の誤解
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/blog-post_7.html

「サントリー 紅茶飲料に参入」に無理あり 日経ビジネス 長江優子記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_12.html

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