2019年4月2日火曜日

日経 菅野幹雄氏「トランプ再選 直視のとき」の奇妙な解説

2日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に菅野幹雄氏(本社コメンテーター)が書いた「『トランプ再選』直視のとき」という記事は説得力に欠ける内容だった。記事の内容を見ながら、具体的に指摘したい。
ビューホテル平成と桜(福岡県うきは市)
        ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】 

新元号が「令和」に決まり、英国は欧州連合(EU)の無秩序離脱という惨事の瀬戸際にある。世界で歴史が動くなか、米国のこの判断も今後の針路を左右する。

◎気持ちは分かるが…

気持ちは分かるが、強引に「新元号」を持ってきた感じはある。それはいいとして、問題は以下のくだりだ。

【日経の記事】

20年11月3日の米大統領選挙まで1年7カ月。民主党の対抗候補も始動したばかりだ。大統領選の結果をうんぬんするのはもちろん早すぎる。だが私はトランプ氏再選という多くの国が内心歓迎しない展開を、今から「逆説」として直視しておくべきだと考える


◎どっちなの?

大統領選の結果をうんぬんするのはもちろん早すぎる」と菅野氏は言う。「別に早すぎないような…」と思って読み進めると「私はトランプ氏再選という多くの国が内心歓迎しない展開を、今から『逆説』として直視しておくべきだと考える」と言い出してしまう。「うんぬんするのはもちろん早すぎる」と書いた直後に自ら「うんぬん」してどうする。

ついでに言うと「トランプ氏再選という多くの国が内心歓迎しない展開」を「直視」するのは「逆説」ではないだろう。「逆説」についてデジタル大辞泉では「一見、真理にそむいているようにみえて、実は一面の真理を言い表している表現。『急がば回れ』など。パラドックス」と説明している。

例えば「多くの国がトランプ氏の再選を歓迎しないからこそ、トランプ氏は2期目を託すにふさわしい人物と言える」といった話ならば「逆説」でいいだろう。しかし、今回の記事はそうした類の話ではない。

例えば「台風直撃は住民にとって歓迎できない事態だ。だからこそ台風の直撃を直視する必要がある」というのは「逆説」と言えるだろうか。菅野氏の言う「逆説」はこれに似ている。

菅野氏はさらに奇妙な解説をしていく。

【日経の記事】

都合の悪い未来は見たくないものだが、現段階でトランプ氏再選の事態を見据え、それに備えておく意味はある。

確実に起こりうるのは米欧関係の決定的な冷却、そして多国間の連携や国際機関の弱体化だ。安全保障でもトランプ氏が米軍の日本や韓国への駐留の見直しなどに動くかもしれない。FRB理事に大統領選の経済顧問を指名したのは、組織の独立性も顧みず周辺を「トランプ色」の人事で染めようとする予兆だ。


◎「確実に起こりうる」?

確実に起こりうるのは米欧関係の決定的な冷却」と菅野氏は言う。現状は「決定的な冷却」に当たるのか不明だが、そこまで「冷却」していないとしよう。1期目には「決定的な冷却」に至らなかったのに、2期目で「決定的な冷却」に「備えておく」べきだろうか。
久留米城跡の桜(福岡県久留米市)
       ※写真と本文は無関係です

安全保障でもトランプ氏が米軍の日本や韓国への駐留の見直しなどに動くかもしれない」と心配するのも謎だ。もちろん可能性はゼロではない。しかし、これも1期目で「日本」では大した動きがなかったのに、2期目での「見直し」を警戒する理由が分からない。

日本」への「駐留の見直し」が基地返還などを伴う「駐留」の大幅削減ならば個人的には大歓迎だが、「トランプ氏再選」でもそういう事態にはならないと予言しておきたい。

FRB理事に大統領選の経済顧問を指名したのは、組織の独立性も顧みず周辺を『トランプ色』の人事で染めようとする予兆だ」との説明も引っかかる。「組織の独立性も顧みず周辺を『トランプ色』の人事で染めようとする」行為そのものではなく、まだ「予兆」なのか。既に「指名した」のならば「予兆」と見るのは苦しい気がする。

記事の結論にも注文を付けておきたい。

【日経の記事】

先進国でトランプ氏と最も近い首脳関係を築いた安倍晋三首相。日本は「トランプ再選」の事態に身構えるだけでなく、その関係を世界や日本の安定にどう生かすか先取りして考えるべきだ


◎自分が教えてあげたら…

トランプ氏と最も近い首脳関係を築いた安倍晋三首相」と言うが、報道から判断すると親分である「トランプ氏」に従順なだけのように見える。「その関係」を「世界や日本の安定」に生かす道などあるのか。親分に従うしか選択肢はなさそうだ。従順でいることが「日本の安定」につながるとの考えもあるだろうが…

その関係を世界や日本の安定にどう生かすか先取りして考えるべきだ」と主張するならば、菅野氏が具体的に助言してほしい。「安倍晋三首相」が記事を読む可能性は十分にあるのだから。

「安倍さん、何とかしっかり考えてね」程度の話ならば「本社コメンテーター」などと大層な肩書に顔写真まで付けてコラムを書く意味はない。


※今回取り上げた記事「『トランプ再選』直視のとき
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190402&ng=DGKKZO43184160R00C19A4TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。菅野幹雄氏への評価もDを据え置く。菅野氏については以下の投稿も参照してほしい。

「追加緩和ためらうな」?日経 菅野幹雄編集委員への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_20.html

「消費増税の再延期」日経 菅野幹雄編集委員の賛否は?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_2.html

日経 菅野幹雄編集委員に欠けていて加藤出氏にあるもの
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_8.html

日経「トランプショック」 菅野幹雄編集委員の分析に異議
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_11.html

英EU離脱は「孤立の選択」? 日経 菅野幹雄氏に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/blog-post_30.html

「金融緩和やめられない」はずだが…日経 菅野幹雄氏の矛盾
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_16.html

トランプ大統領に「論理矛盾」があると日経 菅野幹雄氏は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_24.html

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