2018年1月18日木曜日

「インフレ期待高まれば株高」と日経 荻野卓也記者は言うが…

インフレ期待の高まり」は日経平均株価が上値を追う上で「援軍」となるだろうか。その可能性はもちろんある。だが、マイナス面も無視できない。なのに17日の日本経済新聞朝刊マーケット総合1面に載った「スクランブル~株、インフレ期待の援軍 原油高・賃上げ、内需に恩恵」という記事では「インフレ期待の高まり→株高」と単純に捉え過ぎている。
西鉄福岡駅(福岡市中央区)※写真と本文は無関係です

具体的に見ていこう。

【日経の記事】

26年ぶりの高値水準を更新した日経平均株価。世界的な景気拡大への期待が最大の要因だが、足元では意外な援軍も現れている。インフレ期待の高まりだ。原油高や賃上げが背景にあり、恩恵を受けやすい内需株中心に投資マネーが流入している。この傾向が強まれば、相場の上昇基調に弾みが付く可能性がある。

 16日に相場の強さを印象づけたのが金融株の連騰記録だ。みずほフィナンシャルグループはこの日までに9営業日続伸した。2014年10月22日~11月5日の10日続伸以来の長さだ。かんぽ生命保険も同じく9日続伸で、こちらは15年11月の上場以来最長となる。太陽生命保険の熊田享司氏は「金利先高観が強まり、収益改善期待が広がった」とみる。金融緩和の縮小観測に加え、根底にあるのがインフレ期待の高まりだ。

変化を示すのが市場のインフレ期待の度合いを示す「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」だ。物価連動国債と国債の利回り差を基に算出するこの指標は、昨年秋から上昇基調を強め、18年は0.6%台まで上昇。業種別東証株価指数の「銀行」をみると、BEIと歩調を合わせる場面が目立つ。インフレ期待と銀行株の相関性の高さがうかがえる。


◎「金融緩和の縮小」が実現したら…

金利先高観が強まり、収益改善期待が広がった」から金融株に買いが入ったのは分かる。だが、「金融緩和の縮小」が現実となれば、基本的には株価にマイナスだ。筆者の荻野卓也記者はそこをどう考えているのか。記事には説明がない。
須賀神社(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です

仮に、インフレ期待が高まる中で金利上昇は実現しないという展開になったとしても、「収益改善期待」が崩れた金融株には失望売りが広がる公算が大きい。いずれにしても、単純に「インフレ期待の高まり→株高」と考えるのは無理がある。

続いての記述にも疑問を感じた。

【日経の記事】

インフレ期待を高める主因が原油価格の上昇だ。ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は12日に1バレル64ドル超と、約3年ぶりの高水準をつけた。原油は生活の様々な場面で利用されており、価格変動が物価に与えるインパクトが大きい

もう1つは日本で広がる賃上げの期待だ。経団連は16日、春季労使交渉の指針をまとめた。安倍晋三首相が要請した3%の賃上げを社会的期待と明記し、企業に前向きな検討を求めた。人手不足感が強まるなか、今回は踏み込んだ内容になるとの見方がある。実現すれば消費拡大を通じて物価を押し上げそうだ。



◎原油高で消費拡大?

今回の記事では「原油高・賃上げ、内需に恩恵」という見出しがまず気になった。「賃上げ、内需に恩恵」は分かる。しかし「原油高」は原則として消費にマイナスだ。原油高になれば、その分は日本の富が産油国に流れてしまい、消費に回せる余裕が乏しくなる。なのに荻野記者はそこに触れないまま、「原油価格の上昇」を「インフレ期待を高める」要因として株価の押し上げ材料と捉えている。

景気が良くなった結果として期待インフレ率が高まり、それを後追いするように緩やかに金利が上がってくれば、うまい具合に株高につながりそうな気がする。しかし、荻野記者のように「インフレ期待の高まり→株高」と単純に考えるのは分析が甘すぎる。


※今回取り上げた記事「スクランブル~株、インフレ期待の援軍 原油高・賃上げ、内需に恩恵
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180117&ng=DGKKZO25771770W8A110C1EN1000


※記事の評価はC(平均的)。荻野卓也記者への評価も暫定でCとする。

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