2018年8月27日月曜日

「真央ちゃん企業」の括りが強引な日経 中村直文編集委員

日本経済新聞社の中村直文編集委員を社内の誰も止められないのか。27日朝刊企業面の「経営の視点~『真央ちゃん企業』の技術点 身体深掘り 消費つかむ」という記事も苦しい内容だった。記事の全文を見た上で具体的に指摘したい。
崎津教会(熊本県天草市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

「真央ちゃん企業」が消費のリンクで舞っている。真央ちゃん企業とは勝手に名付けたものだが、フィギュアスケートの浅田真央さんとパートナー契約を結んでいるだけにとどまらない。華麗なイメージの裏でデータ蓄積などブランドを支える地道な土台づくりに余念がない企業のことだ

その一つが寝具のエアウィーヴ。高岡本州社長は「形あるものはまねされる。形にならないデータの蓄積やブランドはまねされない」と話す。スタンフォード大学などと睡眠と体調に関する研究を重ねてきた。

同社のマットレスやパッドはデータの塊というわけで、消費者が気づかない最適解を探る。近く売り出すマットレスはゾゾスーツのようにアプリで体形を採寸し、部位ごとに適した硬さの素材を組み合わせる。

「睡眠負債」が流行語になるように眠りへの関心は高い。だがこれまで寝具を買うときは触り心地、寝心地など感覚を重視していた。「売り場の感覚だけでは価格競争になる。身体への確かな効果を提供するには長期的かつ多様な実験の裏付けが必要」(高岡社長)

もう一つの真央ちゃん企業がサッカーのクリスティアノ・ロナルド選手のCMで有名なMTGだ。浅田真央さんは水ブランドのブランドパートナー。同社も「生体評価によるエビデンスのない商品は作らない」という。

例えばシックスパッド。松下剛社長が美顔器でロナルド選手とパートナー契約を結ぶと自宅に招かれた。そこで筋肉を電気刺激するEMSを活用したトレーニングの話で盛り上がり、共同開発に至る。松下社長はEMSの権威である京都大学の名誉教授を見つけ、2015年に商品化した。

新しい技にも挑戦。「首から下を鍛えるものはたくさんあるのに、なぜ顔を鍛える機器はないのか」(松下社長)。同じように権威を探すと東京大学に専門家がいた。4年半かけて開発したのが「PAO」だ。

MTGはパナソニックやトヨタ自動車、資生堂出身の専門家を招き、顧問会を組織。品質や設計面で常に助言を受ける。ちなみに「華(イメージやデザイン)と権威(データや知見)」も経営方針だ。

モノに消費生活の満足度を高める「コト」性がないと、デフレから抜け出せない。例えば低価格眼鏡で成長してきたジンズ。ユニクロをモデルとしてきたが、田中仁社長は「事業領域は眼鏡ではない。見ること」と脱・モノ戦略を進める。

スポーツジムのルネサンスと組み、眼鏡型端末「ジンズ・ミーム」で身体バランスを測ったり、日の丸交通とドライバーの眠気をチェックする実証実験を進めたり、目からのデータ分析にいそしむ。最近ではランニングをサポートするアプリを提供しているほか、大学教授と認知症の早期発見にも取り組む。

データの精度向上や消費者への認知度などもちろん課題は多い。だが過去の基準で考えた消費者像では新しいステップを踏めない。イマドキ消費は価格以上に人生の満足度を突き詰める「自分」探し。企業もまた、謎に満ちた人の心理や身体領域に入り込み、演技と技術を磨く段階に来た。



◎なぜ「真央ちゃん企業」で揃えない?

今回の記事で取り上げたのは「エアウィーヴ」「MTG」「ジンズ」の3社だ。「『真央ちゃん企業』が消費のリンクで舞っている」と打ち出したのに、「ジンズ」は「真央ちゃん企業」ではないようだ。これは辛い。

2017年4月21日の日刊スポーツの記事によると「浅田真央は、9社とCMやイメージキャラクターの契約を結んでいる」という。その中にはネピア、ロッテ、アルソア化粧品なども入っている。現時点で契約が切れた企業もあるかもしれないが、記事では「全社とも引退後も変わらぬ支援を続けるとした」と書いている。

「『真央ちゃん企業』が消費のリンクで舞っている」と宣言して3社を取り上げるのならば、その3社は「真央ちゃん企業」に絞るべきだ。

さらに言えば「MTG」に関しては「真央ちゃん」ではなく「サッカーのクリスティアノ・ロナルド選手」とのエピソードが前面に出ている。「真央ちゃん企業」というより「ロナルド企業」だ。

最初に持ってきた「エアウィーヴ」についても問題なしとしない。「データ蓄積などブランドを支える地道な土台づくりに余念がない企業」を「真央ちゃん企業」として括るのであれば、「浅田真央さんとパートナー契約を結んでいる」ことが「データ蓄積などブランドを支える地道な土台づくり」を促す要因になっていないと苦しい。

浅田真央さんとパートナー契約を結んでいる」企業が偶然にも「データ蓄積などブランドを支える地道な土台づくりに余念がない企業」である事例が7社も8社もあるならば、そこに因果関係がなくても「真央ちゃん企業」でまだ許せる。

しかし、記事を読む限り「真央ちゃん企業」は2社しかない。その2社にたまたま共通点があったからと言って「真央ちゃん企業」として括る意味があるだろうか。


※今回取り上げた記事「経営の視点~『真央ちゃん企業』の技術点 身体深掘り 消費つかむ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180827&ng=DGKKZO34537740U8A820C1TJC000


※記事の評価はD(問題あり)。中村直文編集委員への評価もDを維持する。中村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

無理を重ねすぎ? 日経 中村直文編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/11/blog-post_93.html

「七顧の礼」と言える? 日経 中村直文編集委員に感じる不安
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_30.html

スタートトゥデイの分析が雑な日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_26.html

「吉野家カフェ」の分析が甘い日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_27.html

日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」が苦しすぎる
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_3.html

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