2018年8月23日木曜日

編集長が参加しても問題多い週刊ダイヤモンド「平成経済全史30」

週刊ダイヤモンド8月25日号の特集「平成経済全史30 さらばレガシー、その先へ」では深澤献編集長自ら担当者の1人として名を連ねているが、それでも問題が多かった。ダイヤモンドへは以下の内容で問い合わせを送っている。
マリゾン(福岡市早良区)※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドへの問い合わせ】

週刊ダイヤモンド 編集長 深澤献様  池冨仁様 片田江康男様

8月25日号の特集「平成経済全史30 さらばレガシー、その先へ」についてお尋ねします。質問は以下の7つです。

<質問1>

47ページのグラフに「株価急落に反比例するように自殺率が上昇」という説明文が付いています。これは「株価急落に比例するように自殺率が上昇」の誤りではありませんか。「反比例」を使いたいならば「株価に反比例するように自殺率が上昇」でしょうか。グラフからは、「株価急落」が進行するにつれて「自殺率が上昇」する傾向が読み取れます。


<質問2>

60ページに「平成時代に入って以降、経済指標はよくて横ばいで、賃金はむしろ下がっている」との記述があります。しかし48ページのグラフには「労働者の犠牲と努力の結果 企業業績は過去最高レベルに」「平成前半のリストラで企業業績は回復」との説明文が付いています。

企業業績は過去最高レベル」なのに「平成時代に入って以降、経済指標はよくて横ばい」と言えるでしょうか。「平成時代に入って以降、経済指標はよくて横ばい」との説明は誤りではありませんか。


<質問3>

70ページの写真に「平成時代に発生した災害の中でも、阪神淡路大震災(写真左)と東日本大震災(写真中・右)は、被害規模と範囲は戦後最大規模だった」との説明文が付いています。

阪神淡路大震災」に関しては「戦後最大規模」とは言えないのではありませんか。同ページのグラフでも示しているように、死者・行方不明者で見ると「東日本大震災」の2万2010人に対し、「阪神淡路大震災」は6437人と3分の1にもなりません。被害の「範囲」も「東日本大震災」の方が圧倒的に広域です。福島で深刻な原発事故が起きたことも併せて考えると、「戦後最大規模」と言えるのは「東日本大震災」のみだと思えます。


<質問4>

32ページの「野口悠紀雄(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問)インタビュー 」という記事の冒頭で「1989年、バブルの到来とともに幕を開けた平成」と書いていますが、誤りではありませんか。

記事の説明が正しければ「バブルの到来」は「1989年」となります。しかしインタビューの中で野口氏は「89年にピークを迎えたバブル」と述べています。だとすると、89年に「到来とともに」「ピークを迎えた」のでしょうか。

バブルの起点を明確に定めるのは困難ですが、バブル景気の始まりが86年末なので、この前後だと考えるのが妥当でしょう。


<質問5>

44ページに「不良債権の処理を先送りにしていった結果、北海道拓殖銀行や山一證券など、つぶれることはないといわれていた名門企業の破綻を経験」との記述があります。「山一證券」は1965年に破綻寸前まで追い込まれた後に救済されています。90年代に「つぶれることはない」と言っていた人が存在したかもしれませんが、「つぶれることはないといわれていた名門企業」として取り上げるのは不適切ではありませんか。


<質問6>

56ページの「業界別再編史 小売り編」では「小売業界の2大巨頭であるイオンとセブン&アイ・ホールディングスは対照的な平成30年間を歩んだ」「セブン&アイ・HDは、業界内の拡張路線と一線を画し、自力での成長を追求」と解説しています。

しかし図を見ると、「平成30年間」に「セブン&アイ・HD」は西武百貨店、そごう、ニッセンホールディングス、バーニーズジャパン、赤ちゃん本舗などを傘下に収めています。「自力での成長を追求」という説明は誤りではありませんか。


<質問7>

60ページの「デジタル革命 新たに生まれた経済構造にどう対応するか」という記事で「スマートフォンのアプリやメディアサービスで、あらゆる娯楽や便利な機能を無料あるいは格安で手に入れることができる」と書いていますが、誤りではありませんか。

例えば「プライベートジェットで北欧にオーロラを見に行きたい」という「娯楽」を望む場合、「スマートフォンのアプリやメディアサービス」を使うと「無料あるいは格安で」実現できるのですか。本当ならば夢のような話ですが、違うでしょう。

質問は以上です。

今回の特集には「変わろう、変わらねばならないと考えながら、惰性で昭和の価値観を引きずり、停滞どころか後退した平成年間だった」との記述があります。読者からの間違い指摘を握り潰して無視する対応を続ける御誌にも当てはまる言葉です。

メディアとしての説明責任を果たせない今の週刊ダイヤモンドについて、編集長の深澤様は「変わろう、変わらねばならない」と考えていますか。深澤様は「平成元年入社」だそうですね。30年前の深澤様ならば、正しい判断ができたはずです。

次の時代にも「負の遺産」を引きずっていくのか。決めるのは、入社から30年の時を経て編集長を務める今の深澤様自身です。

◇   ◇   ◇

※今回取り上げた特集「平成経済全史30 さらばレガシー、その先へ
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/24269


※特集全体の評価はD(問題あり)。池冨仁記者と片田江康男記者への評価はDを据え置く。深澤献編集長への評価はE(大いに問題あり)を維持する。深澤編集長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

AIに関する週刊ダイヤモンド深澤献編集長の珍説を検証
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_6.html

西船橋は「都心」? 週刊ダイヤモンド特集「勝つ街負ける街」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/01/blog-post_79.html

「昔の人は早熟」? 週刊ダイヤモンド深澤献編集長の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_11.html

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