2016年7月31日日曜日

作り手の未熟さ目立つ日経1面「クルマ 異次元攻防(1)」

31日から日本経済新聞朝刊1面で始まった連載「クルマ 異次元攻防」は苦しい展開になりそうだ。第1回のテーマは「攻めるIT、トヨタ動く」。内容に目新しさがないのはいいとしても、ツッコミどころが多いのは困る。これでは中身がすんなり頭に入ってこない。
黒川温泉(熊本県南小国町)※写真と本文は無関係です

順に問題点を指摘していこう。

◎読点を打つだけなのに…

【日経の記事】

自動車産業に大きな変革の波が押し寄せている。環境規制の強化に加え、人工知能(AI)を駆使した自動運転車の開発や相乗りに象徴されるシェアエコノミーの浸透など、IT(情報技術)業界も入り交じった主導権争いが激しさを増す。次世代のクルマを巡る異次元攻防の前線を追う。

-------------------

人工知能(AI)を駆使した自動運転車の開発や相乗りに象徴されるシェアエコノミーの浸透」という部分は分かりにくい書き方になっている。作り手の未熟さが出てしまっている。

最初に読んだ時は「自動運転車の開発」や「相乗り」が「シェアエコノミー」を象徴していると解釈しそうになった。それだと意味不明なので立ち止まって考えてみて、ようやく分かった。「自動運転車の開発」と「相乗りに象徴されるシェアエコノミーの浸透」を並べているのだと。

ならば話は簡単だ。「人工知能(AI)を駆使した自動運転車の開発や相乗りに象徴されるシェアエコノミーの浸透」とすれば問題は解決する。読点を1つ打つだけだが、日経ではそれさえ難しいようだ。

◎この「会話」はどう理解すべき?

【日経の記事】

「全ての車のワイパーの状況が分かれば、各地の詳細な気象情報が把握できる」「最近あの通りでオープンした店は行列ができている」――。日米の乗用車に通信機能を標準搭載するトヨタ社内ではこんな会話が交わされている。世界で数千万台が走るトヨタ車がセンサーになり様々なデータを取れれば、無限のビジネスが生まれる。

----------------------------------------

最初の「全ての車のワイパーの状況が分かれば、各地の詳細な気象情報が把握できる」という話は分かる。しかし、次の「最近あの通りでオープンした店は行列ができている」は謎だ。「日米の乗用車に通信機能を標準搭載するトヨタ社内」で「最近あの通りでオープンした店は行列ができている」という会話を耳にしても、単なる世間話としか思えない。例えば会話の内容が「最近あの通りでオープンした店は行列ができているといった情報を車載カメラから得られないか」となっていれば、すんなり読めるのだが…。

◎子会社設立で「自前主義と決別」?

【日経の記事】

動きは速い。昨年11月に三井住友銀行などと共同で新技術に投資するファンドを設立。2カ月後には「日本では必要な人材を確保できない」(内山田氏)として、米シリコンバレーにAIの研究開発子会社を設けるなど、これまで貫いてきた自前主義と決別した

----------------------------------------

トヨタがこれまで自前主義だったかどうか疑問は残るが、とりあえずそうだとしよう。しかし「米シリコンバレーにAIの研究開発子会社を設ける」ことは「自前主義と決別した」根拠にはならない。むしろAIに関しても「自前」で研究開発を進める方針だと読み取れる。外部との連携はあるのだろうが、子会社をわざわざ作るのであれば「AIに関しても自前でやる」と解釈するのが当然だ。「違う」と取材班が主張するのであれば、「子会社でAIの研究開発を進めることが、なぜ自前主義との決別なのか」を読者にきちんと説明すべきだ。


※記事の評価はD(問題あり)。

0 件のコメント:

コメントを投稿