2016年7月23日土曜日

日経への疑問 「2年で物価上昇率2%」日銀はまだ拘泥?

23日の日本経済新聞 朝刊経済面に「物価上昇率 2%目標『2年にこだわらず』 日銀内で浮上」という記事が出ていた。見出しを見てすぐに「まだ『2年』にこだわっていたの?」との疑問が湧いた。異次元緩和の導入が「2013年4月」。既に3年以上が経過し、現在の達成時期の目標は「17年度中」だ。18年3月に達成した場合、5年かけた計算になる。しかし、記事では「2年程度で2%」がまだ達成可能かのように書いている。
黒川温泉(熊本県南小国町)※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

日銀内で「2年程度で2%」の物価上昇率を達成するとする目標について、将来的には柔軟な運用を検討すべきだとの声が出てきた。

日銀の物価安定に向けた強い決意を示す象徴だったが、最近では会合のたびに緩和観測が強まり、相場が荒れる原因にもなっている。「2年」にはこだわらずに持久戦を視野に入れるべきだとの考え方だ。

日銀は2013年4月の異次元緩和導入以来、「2年」という短期間に集中的に強力な金融緩和を進め、物価上昇2%を一気に実現しようとしてきた。ところが原油価格の下落などもあって、達成時期の先延ばしが繰り返され、日銀は終わりの見えないまま大規模な金融緩和を続ける事態に陥っている。

現状の年80兆円ペースで国債を増やすことは数年のうちに限界を迎えるとみられており、粘り強く緩和を続ける枠組みを探るべきだとの声が行内で上がってきた。

現状の金融政策の効果と問題点を丹念に分析し、時間をかけて市場との対話を進めるべきだとの意見がある。

現状でいきなり「2年」という目標を取り下げれば、債券市場などが混乱する可能性がある。日銀執行部内では、2%の達成時期が大きく先送りされる状況となった場合の選択肢として意識され始めている

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記事を読む限り、「2年程度で2%」は現時点でまだ達成可能との前提を感じる。「日銀はその姿勢を崩してないから、それに沿って記事を書いているんだ」と記者は弁明するかもしれない。しかし、その前提は正しいのだろうか。

6月20日付で産経新聞は以下のように伝えている。

【産経の記事】

日銀の黒田東彦総裁は20日、慶応大で講演し、日銀が掲げる2%の物価上昇率目標について、「2年程度での実現はできなかった」との認識を初めて示した。その上で、期限を示した理由について「5年先なのか、10年先なのか、時期を定めないと、実現に向けた(具体的な)政策が決まらない」と説明した。

平成25年4月に日銀が大規模な金融緩和を実施した際、当初は「2年程度で2%の物価上昇率目標を実現する」としていた。この表現は撤回していないが、達成時期については先送りを繰り返しており、目標時期は「29年度中」としている。

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日銀として「(2年程度で2%という)表現は撤回していない」としても、黒田総裁自体が「2年程度での実現はできなかった」と認めているのであれば、既に「2年」にはこだわっていないと見るべきだ。仮に「こだわっている」としても、「普通の感覚では『2年程度』はとっくに過ぎている」という点を日経の記事では言及してほしかった。

日経の「現状でいきなり『2年』という目標を取り下げれば、債券市場などが混乱する可能性がある」との説明も引っかかる。黒田総裁が「2年程度での実現はできなかった」と認めているのに、債券市場に目立った「混乱」は起きていない。形式的に残っている「2年」という期間を取り下げたぐらいで、そんなに「混乱する」だろうか。

日経の記者は「(「2%」の取り下げは)2%の達成時期が大きく先送りされる状況となった場合の選択肢として意識され始めている」と記事を締めている。しかし、達成時期の目標を「17年度中」としている今でも、十分に「大きく先送り」されている。「2年」にこだわるかどうかに、もはや実質的な意味はないと思えるが…。


※記事の評価はC(平均的)。

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