2016年7月24日日曜日

強引にオーナー企業を持ち上げる日経1面「市場の力学」

24日の日本経済新聞朝刊1面に載った「市場の力学~選ばれる会社(中)オーナー企業、株高の秘密 株主の視点、強さの源泉」という記事は、オーナー企業を持ち上げるための強引な説明が目立つ。「サラリーマン経営者よりオーナー経営者の方が優れたパフォーマンスを示す」という明確な根拠があるのならば、それを示して記事をまとめればいい。しかし、取材班が持ち出してきたのは、ご都合主義の臭いが鼻を突くランキングだった。

柳川の川下り(福岡県柳川市) ※写真と本文は無関係です
記事では以下のように書いている。

【日経の記事】

在任中に株の時価総額をどれだけ増やしたか。経営者の通信簿ともいえるランキングには日本電産の永守重信社長などオーナー経営者が並ぶ。神戸大学大学院の三品和広教授は「長期の視点で大胆な飛躍を目指せる」と強さの秘密を解説する。

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記事には「オーナー社長が上位に(在任中の時価総額増加率)」という表が載っていて、確かに「ランキングには日本電産の永守重信社長などオーナー経営者が並ぶ」。しかし、これでオーナー経営者とサラリーマン経営者を比較するのは無理がある。創業社長であれば社長在任期間が数十年に及ぶ例は珍しくない。一方、サラリーマン経営者では社長を10年以上続けることすら例外的だ。

ランキングでは上位6人を「オーナー系」が占め、6位の三木谷浩史氏(楽天)でさえ時価総額を10.8倍にしている。社長在任中に時価総額を10倍以上にしようとすれば、在任期間が長い方が圧倒的に有利だ。そして、在任期間にはオーナー経営者とサラリーマン経営者には決定的な差がある。記事に載せたランキングをオーナー経営者の強さの根拠とするのは、厳しく言えば誤りだ。

しかも、このランキングには「時価総額1兆円以上の企業で社長就任月末と比較」との注記がある。上場企業全体ではなく「時価総額1兆円以上」とする意味は何なのか。推測だが、上場企業全体とすると、マイナーな企業ばかりになったり、非オーナー系企業が上位に多く入ったりするのだろう。ここにも「ご都合主義」の臭いがする。

ついでに記事の後半部分にいくつか注文を付けておく。

【日経の記事】

出光興産は昭和シェル石油との合併を巡り創業家と現経営陣が激しく対立する。オーナーシップは継承が課題だ。ソニーも創業者世代が退くと経営が迷走した。平井一夫社長らが代替として選んだのが自己資本利益率(ROE)になる。経営の効率性を示し、投資家が重視する物差しだ。

見違えたのが10年連続で赤字だった薄型テレビだ。16年3月期まで2年連続で黒字となり今や安定収益源だ。テレビ子会社の高木一郎社長は「株主視点が経営に緊張感をもたらし、利益を生む原動力になった」と話す。

東京海上アセットマネジメントは経営者が実質的に株主である企業に投資するファンドを運用する。北原淳平マネジャーは「オーナーは株主と利害関係が一致する。最強のガバナンス体制だ」と話す。投資家とは未来の株主だ。株主視点の経営には資金が集まり、それが企業を強くする。

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◎ROE重視でテレビが黒字化?

ROE重視にしたら「10年連続で赤字だった薄型テレビ」事業が「16年3月期まで2年連続で黒字となり今や安定収益源」に生まれ変わったらしい。そんなに簡単な話ならば苦労は要らない。赤字で苦しむ経営者には「ROE重視にすればいいんですよ。それで黒字化します」と教えてあければいい。ROE重視を「魔法の杖」のように描く記事の書き方は感心しない。

◎「投資家とは未来の株主」?

投資家とは未来の株主だ」という説明は奇妙だ。例えば、現在ソニー株を保有している人は、ソニーから見て「投資家」とは呼べないのだろうか。常識的に考えれば、どこから見ても「投資家」だ。

◎オーナー経営が「最強のガバナンス体制」?

オーナーは株主と利害関係が一致する。最強のガバナンス体制だ」というコメントも気になる。記事の流れからして、取材班もこのコメントに同意しているのだろう。ならば話は簡単だ。上場審査の際には創業家の持ち株比率をなるべく高くしてもらい、創業家から社長が出ている場合はガバナンスの細かい決め事なども免除してあげればいい。なにせ「最強のガバナンス」なのだから、そうなるように上場企業を導くべきだろう。

だが、本当にそれは良策なのか。取材班はじっくり考えてほしい。

※記事の評価はD(問題あり)。

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