2016年7月11日月曜日

ぬる過ぎる週刊ダイヤモンドの鈴木敏文氏インタビュー

ここまで「ぬるい」インタビュー記事を作れるのは、ある意味で凄い。週刊ダイヤモンド7月16日号に載った鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問へのインタビュー記事「DIAMOND REPORT~流通のカリスマ ラストメッセージ  コンビニ誕生から退任劇、将来を語る」は、経済記事の書き手が反面教師とすべき内容になっている。

熊本城(熊本市) ※写真と本文は無関係です
鈴木氏の発言はツッコミどころが満載なのに、田島靖久副編集長と大矢博之記者は、ひたすら鈴木氏に気持ちよく語らせるだけだ。特に田島副編集長は、最後まで“鈴木教の信者”としての道を貫いているのだろう。しかし、インタビュー記事としては、明らかに問題がある。

まず、引退を表明した会見で鈴木氏が顧問2人とともに登場した件を見ていこう。ダイヤモンド5月14日号の「カリスマ退場~流通帝国はどこへ向かうのか」という特集の中の「絶大な権力を持ち続けた末に “裸の王様”になったツケ」という記事では、以下のように書いている。

【ダイヤモンドの記事】

前述した引退会見でも、鈴木会長の暴走は顕著だった。会見には、経営の表舞台からとうに退いたはずの顧問2人が出席。鈴木会長によれば、退任に至るまでの経緯について自分の話にうそがないかを証明する「証人」として招聘したとのことだ。

鈴木敏文・セブン&アイ会長(左端)の引退会見には村田紀敏・同社長の他、古参顧問も出席した。しかし、彼らの出席は、ただただセブン&アイの恥の上塗りをしただけだった。何しろ、語られた内容というのがひど過ぎた

「井阪隆一・セブン-イレブン・ジャパン社長の退任案を同氏の父親に伝えに行って了承してもらい、事を穏便に済ませようとした」という、およそ6兆円企業にあるまじきやりとりだったからだ。

古参顧問の出席は、直前に鈴木会長が決めたため止める間がなかったとも、説得は試みたものの時間切れで押し通されてしまったともいわれるが、いずれにしても、鈴木会長を止められる人物が同氏の周りにいなかったということに変わりはない。

絶大な権力を持ち続けたことで、いつしか裸の王様になってしまった鈴木会長。それに気付けなかったことが、大きなつまずきの要因だったのかもしれない。

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この件に触れている部分が今回のインタビュー記事に出てくる。

【ダイヤモンドの記事】

──それまでの過程は、大きな騒動になりました。

みっともないなと。僕は(会長辞任の)記者会見をしたときに、こんな大きな問題になると思っていなかった。新聞の隅っこに、記事が出るくらいだと考えていた。

でも、辞めるにしても、本当のことを言っておかないと、「悪いことをしたから辞めたんだ」という臆測が出てしまいかねない。だから、顧問の2人に一緒に会見に出てくれと頼んだんだ

──鈴木さんが辞めたら、それは大騒ぎになりますよ

記者会見をする前に自宅に電話して、妻に「辞めるから」と伝えたんだ。「どうして」と聞くから「僕が言っていることを、みんなが理解できないから」と伝えたら、妻は「ああそう」とだけ。それくらいの話だと思っていたんです。

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5月14日号の特集には田島副編集長も大矢記者も参加している。そこで「(顧問である)彼らの出席は、ただただセブン&アイの恥の上塗りをしただけだった。何しろ、語られた内容というのがひど過ぎた」とまで書いているのだから、インタビューでは「なぜ、あんな愚かなことをしたのか」と聞くのが当然だろう。

しかし、質問では「恥の上塗り」について何も問おうとしない。鈴木氏の方から言い訳が出てくるだけだ。その後に「2人を出席させたのは、結果的に失敗でしたね」ぐらいは言えそうなものだが、「鈴木さんが辞めたら、それは大騒ぎになりますよ」と何の追及もなしに話が続いていく。

もう1つ「なぜツッコミを入れないのか」と感じたくだりを紹介する。

【ダイヤモンドの記事】

──チェーンストア理論が寿命を迎えた後はどうなると考えますか。

それは自分たちで考えないと。米国の小売業は、ウォルマートをはじめどこも苦しい状況です。移民が多く、消費者が増えている地域ですら厳しいんです。日本のように人口が減っている地域がより早く苦境に陥るのは当然のことで、皆がそうしたことを考えないのは、僕には不思議で仕方がない。

国内の大型店が苦しいのは、海外のまねをすればいいと思っていたからでしょう。ダイエーさんや西友さん、そしてヨーカ堂だって、海外のチェーンストア理論を金科玉条のようにまねしてきた。それじゃあ駄目なんです

コンビニだって、扱う商品は弁当やおにぎり、雑貨だと、みんなが勝手に定義しているわけですよ。僕はそんな定義なんかしない。自動車を売ってもいい。30坪の店で、何を売ったっていいんです。

──その発想の先にあるのがオムニチャネル戦略なのですか。

オムニチャネルと皆が言いますが、僕が目指すのはどこにもない取り組みです。インターネットとリアルの融合といっても、多くの場合は、メーカーの商品を集める単純なものばかりです。

僕の考えは、コンビニや百貨店、専門店、スーパーなどグループの多様な資源を使って商品を作り、ネット上で販売すること。それに加えて、メーカーの商品も扱う。ここまでできると、世界に例のない取り組みになります。

──商品作りまで手掛けることが重要だということですね。

そう。でも、今後うちができるかどうか分かんないよ。だって、僕が引いちゃったから。

今、百貨店やスーパーが苦しいのは、どこも同じ商品を売っているからです。なぜなら、問屋が同じだから。では、今成長している企業はどこですか。衣料品はユニクロ、家具はニトリ。全部、自主マーチャンダイジング(MD)をやっています。そして、最初におにぎりや弁当などの自主MDを始めたのがセブン-イレブンですよ

だから、人任せにしては駄目。新しい業態や、新しい消費を作り続けないといけない。そんなことは本を読んでも書いていない。

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そしてヨーカ堂だって、海外のチェーンストア理論を金科玉条のようにまねしてきた。それじゃあ駄目なんです」と鈴木氏は例によって他人事のようにヨーカ堂を語っている。「ダメだと分かっていたのなら、なぜ変えなかったのですか。セブン&アイの最高権力者として君臨してきた鈴木さんには、時間も権力もあったはずです」ぐらいの質問はしてほしい。

百貨店やスーパーが苦しいのは、どこも同じ商品を売っているからです」との鈴木氏の発言に関しても同様だ。「だったら、ユニクロやニトリのようなやり方をそごう・西武やヨーカ堂でなぜやらなかったのか。あなたはヨーカ堂のCEOをだったんですよね」と聞きたくならないのが不思議だ。“信者”とはそういうものだと言われれば、それまでだが…。


※記事の評価はD(問題あり)。書き手の評価については、大矢博之記者をD、田島靖久副編集長をF(根本的な欠陥あり)で据え置く。F評価については「週刊ダイヤモンドを格下げ 櫻井よしこ氏 再訂正問題で」を参照してほしい。田島副編集長と鈴木氏の関係には「度が過ぎる田島靖久ダイヤモンド副編集長の『鈴木崇拝』」でも触れている。

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