2016年7月10日日曜日

「東急不動産 賃貸、低価格で刷新」に見える日経の低品質

事実を伝えるだけのニュース記事は他のメディアとの差を付けにくく、コモディティー化しやすい。だが、日本経済新聞の場合、コモディティーとしての必要最低限の品質さえ満たしていない記事も多い。10日の朝刊企業面に載った「老朽賃貸、低価格で刷新 東急不動産、オーナー支援」もそんな記事の1つだ。
秋月城跡の桜(福岡県朝倉市) ※写真と本文は無関係です

その全文は以下の通り。

【日経の記事】 

東急不動産ホールディングス(HD)はグループ会社が管理する賃貸物件のオーナーに対し、低価格リノベーション(住宅の大規模改修)の提案を月内にも始める。DIYの関連商品を売る東急ハンズやリノベ業者と連携し、老朽化した物件の魅力を高める。特徴的な物件を紹介するサイトにも登録し、入居者確保などに悩むオーナーを支援する。

このほどリノベを手掛けるgooddaysホールディングス(東京・千代田)と資本・業務提携した。出資額は非公表。グループ会社が施工やサイトでの物件紹介も担う。月内にもモデルルームを東京・代官山エリアに開き、初年度で100戸の受注を目指す。

東急不動産HDは以前からオーナーにリノベを提案している。分譲マンション仕様のリノベで広さ60平方メートルまでで定額290万円(税別)のプランがあるが、より低価格で、多様な改修プランを求める声が上がっていた

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東急不動産HDは以前からオーナーにリノベを提案している」らしい。そして「低価格リノベーション(住宅の大規模改修)の提案を月内にも始める」というのが今回取り上げた「ニュース」だ。つまり「低価格」が記事の根幹部分になる。それは「老朽賃貸、低価格で刷新」と付けた見出しからも明らかだ。しかし、「低価格」に関する情報はわずかしかない。

分譲マンション仕様のリノベで広さ60平方メートルまでで定額290万円(税別)のプランがあるが、より低価格で、多様な改修プランを求める声が上がっていた」--。これが「低価格」に関する情報の全てだ。

月内にも始める」提案では「60平方メートルまでで定額290万円(税別)」より低価格になるのだろうとは思う。ただし、記事では「より低価格で、多様な改修プランを求める声が上がっていた」と書いているだけだ。「より低価格にする」とは断言していない。

しかも、現状と比べてどの程度の「低価格」になるのか全く手掛かりがない。せめて「従来より○○%以上安い」ぐらい情報は欲しい。月内にもモデルルームを東京・代官山エリアに開くのであれば、ある程度の価格政策は決まっているはずだ。

本来なら「他社と比べても低価格なのか」「なぜ低価格にできるのか」といった情報も欲しい。記事の性格から判断して、そちらをまず書くべきだ。

gooddaysホールディングス(東京・千代田)と資本・業務提携した」ことが「低価格」と関連しているのであれば、なぜ提携が低価格につながるのかの説明も要る。低価格と提携の関係が乏しいのであれば、提携に関する記述を削ってでも「低価格」の詳細に紙幅を割くべきだ。

ついでに言うと「DIYの関連商品を売る東急ハンズやリノベ業者と連携」という部分も引っかかった。「DIYの関連商品を売る」ことと「リノベーション」に直接の関係はないので、何のために「東急ハンズと連携」するのか謎だ。記事中にも説明はない。

また、東急ハンズは東急不動産HDの傘下にある企業だ。「連携」も何もないだろう。事業会社の東急不動産が中心になり、東急ハンズも手伝うという話だとは思うが…。

記事中で東急ハンズを東急不動産HDの傘下企業と明示していないのも感心しない。「そのぐらい読者は知っているはずだ」との前提で記事を書いているのであれば、不親切が過ぎる。


※記事の評価はD(問題あり)。筆者にはきちんと記事を仕上げる能力が身に付いていないと思われる。記事を担当したデスクの力量ももちろん不足している。

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