2016年7月19日火曜日

日経 小平龍四郎編集委員の奇妙な「英CEO報酬」解説

経営者への基本報酬を抑えて、業績や株価に連動する部分を厚くすると、経営者は「長期志向」になるだろうか。基本的には「短期志向」になりそうな気がする。しかし、日本経済新聞の小平龍四郎編集委員は逆だと考えているようだ。18日の日経朝刊景気指標面に載った「英国首相のガバナンス改革」というコラムでは、以下のように書いている。
KITTE博多(福岡市博多区) ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

人事・財務コンサルティング会社のウイリス・タワーズワトソンの調べによると、英大企業の2015年度の最高経営責任者(CEO)の平均報酬は、円換算で7.1億円だった。巨額報酬がしばしば問題になる米国(14.3億円)の半分にすぎないが、内訳を見ると様相が異なる。業績や株価にかかわらず保証される基本報酬だけを抜き出すと、英CEOは1.8億円と全報酬の約25%。これに対して、米CEOの基本報酬は1.5億円と10%強にとどまる。

英CEOは経営成績にかかわらず得られる報酬が多く、企業価値を長期的に高める金銭的な動機が米CEOより弱いとの指摘もある。英エコノミストのジョン・ケイ氏は「経営者の長期志向の欠如が投資や研究開発の不足を招き、英国の産業競争力を低下させた」と指摘している。

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・米CEO=業績・株価連動型の報酬が厚い=長期志向

・英CEO=業績・株価連動型の報酬が薄い=短期志向

このような図式が成り立つと小平編集委員は判断しているようだ。しかし、何か奇妙だ。仮に今期で退任するCEOがいたとする。今期の業績が減益ならば報酬は1000万円だが、増益ならば10億円、30%以上の増益ならば30億円の報酬を得るとしよう。その時に、このCEOは「減益になってもいいから、10年後、20年後のために研究開発費を積極的に使おう」と考えるだろうか。常識的に考えれば、例に挙げた報酬体系は「短期志向」への強烈なインセンティブになる。

例えば「今後20年の経営を任せ、20年後の業績と株価で最終的な報酬が決まる」といった長期インセンティブを設定すれば「業績・株価連動型の報酬が厚い=長期志向」との図式も成り立つだろう。しかし、普通は数年レベルの話のはずだ。そうなると、どうしても「短期志向」になってしまう。

「数年でも十分に長期だ。1年超は長期なんだ」と小平編集委員は言うかもしれない。しかし、それだと「短期志向」と「長期志向」を分ける意味はほとんどなくなる。


※記事の評価はD(問題あり)。 小平龍四郎編集委員への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。F評価については「基礎知識が欠如? 日経 小平龍四郎編集委員への疑念」を参照してほしい。

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