2022年1月24日月曜日

子供へのワクチン接種でも賛否を明確にしない日経社説の罪

24日の日本経済新聞朝刊 総合・政治面に載った「子どもの接種は『個別』対応で」という社説は残念な内容だ。「新型コロナウイルスワクチンの5~11歳を対象とする接種」に対して賛否を明確にせず「かかりつけ医や小児科医による個別接種で対応するのが望ましい」といった「接種」の進め方に焦点を当てて逃げている。

耳納連山と夕陽

子どもの接種」が子供のためにならないことは筆者も分かっているようだ。しかし社論としてワクチン接種を推してきた経緯もあり、歯切れが悪くなったのだろう。中身を見ながら問題点を見ていきたい。


【日経の社説】

新型コロナウイルスワクチンの5~11歳を対象とする接種が3月にも始まる。厚生労働省が21日、米ファイザー製を特例承認した。かかりつけ医や小児科医による個別接種で対応するのが望ましい。

子ども向けワクチンは投与成分量を12歳以上の3分の1にしたもので、3週間の間隔をあけて2回打つ。2月に輸入が始まる予定。政府は早急に供給計画を自治体に示す必要がある。

ワクチンは病気予防のため健康な体に打つ。接種するかどうかはメリットとデメリットとをよく考えて判断しなければならない

新型コロナは子どもの場合、感染・発症しにくく、かかったとしても重症化リスクは極めて低いとされてきた。高齢者にうつすと重症者増につながるとしても、接種の負担を子どもに強いることに慎重な専門家の意見もあった。

ただ、オミクロン型の大流行で状況は変わった。国内でも子どもの感染・発症が増え、全国で学級閉鎖が相次ぐ。

海外での臨床試験や先行例から深刻な副作用はほとんど報告されていない。行動制限を最小限にし学校での集団感染を防ぐためにも接種の意義はある


メリットとデメリットとをよく考えたら…

オミクロン型の大流行で状況は変わった」と言うが「子どもの場合」「重症化リスクは極めて低い」という「状況」は変わっていない。子供の健康に関して言えば「重症化リスク」や死亡リスクはほぼゼロだ。一方「ワクチン」にはある程度の「副作用」がある。「深刻な副作用はほとんど報告されていない」とも書いているが、わずかでも「深刻な副作用」の可能性があるワクチンを「重症化リスク」ほぼゼロの子供に打つ意味はない。

メリットとデメリット」を考慮すれば「接種はさせない」との結論に至る。

行動制限を最小限にし学校での集団感染を防ぐためにも接種の意義はある」とも日経は書いているが、子供に限定して考えればコロナ対応の「行動制限」はゼロでいい。「集団感染」が起きても子供たちは無症状か軽症なのだから「学級閉鎖」をする必要ない。体調が悪い子供が学校を休めばいいだけだ。

高齢者にうつす」といった話は大人の問題だ。「高齢者」を守るために、子供にとっては「デメリット」が上回ることが明らかなワクチン接種を求めるのか。子供を犠牲にして「高齢者」を含む大人を守るべきなのか。そこを考えてほしい。

そもそも「ワクチン」で感染を防げるのかという問題もある。国民の約8割が2回のワクチン接種を終えた日本でも「オミクロン型の大流行」は起きた。「接種から時間が経ったからだ」と言うのならば、子供への接種効果もすぐに消えて追加接種となる。そのころには新たな変異株も生まれているだろう。その変異株に対応したワクチンが開発されたら、また接種して…という繰り返しが予想される。

自分の判断で接種する大人がワクチン漬けになるのは自己責任とも言える。しかし子供は違う。大人を守るために、接種のメリットがない子供をワクチン漬けにしていくべきなのか。答えは明らかだ。

社説の後半も見ておこう。


【日経の社説】

発熱や注射部位の痛みといった副作用が想定される。高熱を出すと子ども特有のけいれんを引き起こす懸念もある。接種後の体調管理が重要で、医師と意思疎通しやすい個別接種で進めるのがいい。

市区町村の中には集団接種を選択するところも出てくるだろう。その場合も医師会の協力を得て、会場に小児科医らが常駐する体制をとるべきだ。

打つかどうか本人が納得して判断することも大事になる。保護者らはわかりやすい言葉で丁寧に説明することだ

2年間、不便なマスク生活を強いられた子どもたちには相当なストレスがかかっている。接種の有無で新たな差別やいじめを生まぬよう、学校や地域社会は目配りしてほしい。コロナ禍から子どもを守る大人の責務といえる


◎「大人の責務」を強調するなら…

子供への接種が問題含みなのは日経も理解しているのだろう。「打つかどうか本人が納得して判断することも大事になる」などと書いている。ワクチンにより重大な健康被害が出ても「本人が納得」して接種したのだからと責任逃れはしやすくなる。だが、これは酷い話だ。

5~11歳」が「メリットとデメリットとをよく考えて判断」できると本気で思っているのか。「注射は嫌だ。痛いのは嫌い」といった主張はできるだろうが、子供全員に冷静で合理的な判断を求めるのは無理な話だ。大人でも「メリットとデメリットとをよく考えて判断」している人は少数派だろう。

コロナ禍から子どもを守る」のが「大人の責務」だと日経の論説委員が本気で思っているのならば、子供への接種には強く反対すべきだ。「子どもの接種は『個別』対応で」などと逃げを打っている場合ではない。


※今回取り上げた社説「子どもの接種は『個別』対応で」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220124&ng=DGKKZO79478800U2A120C2PE8000


※社説への評価はD(問題あり)

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