2021年12月28日火曜日

東洋経済オンライン「『追加接種』ファイザーとモデルナどちらが正解?」に感じた問題点

ナビタスクリニック内科医師の久住英二氏が28日付で東洋経済オンラインに書いた「『追加接種』ファイザーとモデルナどちらが正解?~各社が開発急ぐ『オミクロンワクチン』の是非」という記事には色々と疑問を感じた。「ファイザーとモデルナどちらが正解」か考える前に3つの問題を考える必要がある。

雪の日の河童像

(1)そもそも2回接種は感染抑制に効果があったのか?

(2)リスクを勘案しても「追加接種」すべきなのか?

(3)「追加接種」は4回目、5回目と続いていくのか?

久住氏はこの3点に言及していない。なのに「追加接種」する前提で話を進めているのが引っかかる。記事の一部を見ていこう。


【東洋経済オンラインの記事】

南アフリカ共和国から広がった「オミクロン株」が、新型コロナウイルス変異株の勢力地図を塗り替えようとしている。日本国内でも市中感染が報告され始めた。

一番の気がかりは、ワクチンの効果の低下や、接種を完了していても防ぎきれない「ブレイクスルー感染」だ。

現時点での最善策は「追加接種」――というのが世界の共通認識だ。イスラエルは世界に先駆け、4カ月間隔で4回目接種の実施を発表した(12月22日AFP通信)。

「同じようなワクチンを繰り返し打つだけで意味があるの?」と思う人もいるかもしれない。しかし最新研究を見る限り、ファイザー製もモデルナ製も、3回接種を受ければオミクロン株にもギリギリ対抗できそうだ

ファイザーについては12月14日、イスラエルの共同研究の成果が示された(査読前論文「medRxiv」)。ファイザー2回目接種から5~6カ月経った人の血液では、オミクロン株に対する十分な「中和抗体価」(無力化し予防する能力)は確認できなかった。

それが3回目接種で100倍に回復。デルタ株への効果に比べれば4分の1にとどまるが、それでも十分との見方だ

モデルナ製についても12月15日、研究結果が公表された(査読前論文「medRxiv」)。やはり2回接種者の血液では、オミクロン株の中和能力は従来株と比べて1/84~1/49と、大幅に減少した。

3回目接種後はワクチン半量だったが、従来株比1/6.5~1/4.2で踏ん張り、減少スピードも緩やかで、十分と判断された

つまりモデルナの3回目接種では、ワクチンの量が半分で済む。同社ワクチンは「モデルナアーム」(2週間後に接種部位に現れる局所的な炎症。T細胞の反応とされる)が起きやすいことも指摘されてきた。半量だとこうした副反応もマイルドになると期待できる。


◎「3回接種を受ければオミクロン株にもギリギリ対抗」?

ファイザー製もモデルナ製も、3回接種を受ければオミクロン株にもギリギリ対抗できそうだ」と久住氏は言う。裏返せば「3回接種」なしでは「オミクロン株」に「対抗」できないということか。「オミクロン株」は「従来株と比べて」重症化リスクが低いと言われている。新型コロナウイルスは以前から無症状者や軽症者が多いとされてきた。その傾向がさらに強まっているのだから、ほとんどの人は「3回接種」なしで「オミクロン株」に「対抗」できると見るのが自然ではないか。

しかも「3回接種」でも「ギリギリ対抗できそう」という頼りないレベルだ。「副反応」の問題を考慮して「3回接種」の利益がリスクを上回ると判断できる根拠があるのか。それを示さずに「追加接種」へ誘導する書き方は問題ありだ。

この記事では以下の説明も引っかかった。


【東洋経済オンラインの記事】

そもそも新型コロナワクチン2回接種を完了すれば、私たちは晴れて“自由の身”になれるはずだった。

日本国内ではファイザーもしくはモデルナのワクチン接種を2回完了した人が、約8割に到達しようとしている(12月22日時点)。スマホでのワクチンパスポート「新型コロナワクチン接種証明アプリ」の運用も開始された。

そこへオミクロン株の登場である。番狂わせもいいところだが、仕方ない。従来ワクチンの効果を揺るがす変異株の出現は、科学者たちが当初から予想していたことだ


◎オミクロンがなければ2回接種で“自由の身”?

新型コロナワクチン2回接種を完了すれば、私たちは晴れて“自由の身”になれるはずだった」「そこへオミクロン株の登場である。番狂わせもいいところだが、仕方ない」と書くと、ワクチンの効果は十分で「2回接種」によって「“自由の身”になれるはず」が「オミクロン株の登場」で計画が狂ったと取れる。しかし明らかに違う。

海外では「オミクロン株の登場」前から「3回接種」が進んでいたし、日本でも「オミクロン株の登場」によって「3回接種」へと動いた訳ではない。そこは久住氏も分かっているはずだ。なのに、なぜこんな書き方をしたのか。医師としてのモラルが問われる。

しかも「番狂わせもいいところ」と言いながら「従来ワクチンの効果を揺るがす変異株の出現は、科学者たちが当初から予想していたこと」と矛盾する説明をしてしまう。「出現」が当然視されていたのならば「番狂わせ」ではない。

そもそも「変異株の出現」が続くのならば、「“自由の身”」になる日は訪れない。「ワクチン2回接種で得た新型コロナへの抗体の効力は、オミクロン株でなくても半年で大幅に減ることが世界中から報告されている」のだから、今後は「半年」に1回以上のペースで「接種」を続けるのだろう。それは本当に必要なことなのか。健康な人にとってもリスクより利益が上回る選択なのか。

そこを久住氏には考えてほしい。


※今回取り上げた記事「『追加接種』ファイザーとモデルナどちらが正解?~各社が開発急ぐ『オミクロンワクチン』の是非

https://toyokeizai.net/articles/-/479780


※記事の評価はD(問題あり)

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