2019年11月13日水曜日

謎かけのつもり? 日経夕刊「病院利益率2.8%どまり」の舌足らず

13日の日本経済新聞夕刊1面に載った「病院利益率2.8%どまり 昨年度~医師の報酬上げ要求へ」という記事は一読しただけでは内容を理解しにくい。筆者にそのつもりはないのだろうが、謎かけのような中身になっている。
のこのしまアイランドパーク(福岡市)
      ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

厚生労働省は13日、医療機関の経営状況を調べた医療経済実態調査を公表した。医療法人が運営する病院の2018年度の利益率は2.8%だった。17年度より0.2ポイント改善したが、診療所の6.3%と比べて低い水準にとどまる。人件費が膨らんだ影響が大きく、厚労省は20年度の診療報酬改定で医師の人件費を引き上げるよう求める

同日の中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)に報告した。ベッド数が20床未満を診療所、それ以上は病院と区分している。同調査は医療サービスや薬の公定価格である診療報酬を改定する際の基礎資料の一つとなる。

18年度の黒字額は病院が平均5290万円、診療所は同1020万円だった。国公立の病院はいずれも赤字で、国立病院の利益率がマイナス2.3%、公立病院がマイナス13.2%だった。


◎なぜ「人件費を引き上げるよう求める」?

医療法人が運営する病院の2018年度の利益率」が「診療所」より「低い水準にとどまる」のは「人件費が膨らんだ」からだ。だから「厚労省」は「医師の人件費を引き上げるよう求める」--。

記事を読むと、そう理解できる。しかし、これだと「厚労省」の判断機能が壊れてしまったかのようだ。「人件費が増えてるから利益水準が低いままなんだよ。だからもっと人件費を増やさないと!」と言われたら、多くの人が「どういうこと? 人件費を減らせの間違いでは?」と思ってしまうだろう。

この件を取り上げた「病院経営、人件費増で赤字 診療報酬改定に影響―厚労省調査」という時事通信の記事を読むと、日経の記者が何を伝えたかったのか、ある程度はつかめてくる。

【時事通信の記事】

厚生労働省は13日、医療機関の経営状況を調べた医療経済実態調査の結果を公表した。精神科病院を除く一般病院の利益率(収入に対する利益の割合)は2018年度でマイナス2.7%の赤字だった。17年度と比べると0.3ポイント改善したものの、医療従事者数の増加により人件費が膨らみ、経営に影響を与えていることが浮き彫りとなった。

調査結果は同日の中央社会保険医療協議会(中医協)に提出。医療サービスや薬の公定価格である診療報酬の20年度改定に当たって、基礎資料となる。

日本医師会などからは、診療報酬のうち、医師の人件費などに充てる「本体部分」の引き上げ論が高まっている。厚労省は本体部分を引き上げつつ、薬剤費などの「薬価部分」を下げ、全体でマイナス改定としたい考え。年末に向けて財務省と調整を進める。



◎「本体部分」と入れておけば…

厚労省」が「20年度の診療報酬改定」で求めるのは「診療報酬のうち、医師の人件費などに充てる『本体部分』の引き上げ」なのだろう。日経もそう書いてくれれば、すんなり読めたのだが…。

日経の記事ではもう1つ分からないことがある。なぜ「医療法人が運営する病院の2018年度の利益率」を前面に押し出しているのかだ。時事通信は「精神科病院を除く一般病院の利益率」で見ている。

日経の記事によれば、問題は「医療法人が運営する病院の2018年度の利益率」と「診療所」の利益率に差があることだ。「『本体部分』の引き上げ」が実現すれば「医療機関の経営」に全体としてプラスかもしれないが、それがなぜ「医療法人が運営する病院」と「診療所」の間にある「利益率の差」をなくす方向に働くのか。記事からは判断できない。


※今回取り上げた日経の記事「病院利益率2.8%どまり 昨年度~医師の報酬上げ要求へ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191113&ng=DGKKZO52102890T11C19A1MM0000


※記事の評価はD(問題あり)

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