2019年8月11日日曜日

色々気になる日経「サムスン、ベルギーから半導体材料調達」

色々と引っかかる記事が11日の日本経済新聞朝刊1面に載っている。ソウル発で金再源記者が書いた「サムスン、ベルギーから半導体材料調達 代替ルートに」という記事の全文を見た上で気になる点を列挙したい。
「酢屋の坂」と「塩屋の坂」(大分県杵築市)
        ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】 

韓国のサムスン電子が、ベルギーから半導体チップを製造するための化学材料を調達していることが分かった。サムスンの元幹部が、Nikkei Asian Reviewに答えた日本の韓国向けの輸出管理の厳格化を受けた措置とみられる。

同社は7月から日本からの輸出管理を厳しくする対象となったフォトレジスト(感光材)、フッ化水素(エッチングガス)、フッ化ポリイミドの3品目について供給確保を急いでいる。

サムスン元幹部で、漢陽大学で半導体工学を専攻するパク・ジェグン教授が、サムスンがベルギーに本拠を置く会社からフォトレジストを調達していると語った。社名は明言しなかったものの、2016年に日本の化学大手JSRとベルギーの研究センター、IMECが設立した合弁会社を指すとみられる。

教授によると、サムスンは6~10カ月分の化学材料を購入し、最先端の半導体チップを製造する工程で使用しているという。日本に代わる供給元を確保したことで「輸出規制の影響は限定的になる」とも述べた。

サムスンはベルギーからの材料調達については回答しなかったものの「日本の輸出規制に対処するためにサプライヤーを多様化している」と明らかにした。7月にはサムスンの関係筋が日本経済新聞の取材に、韓国メーカーへのチップ材料供給が遮断されるリスクがあるため、日本以外の企業からフッ化水素の調達を探っていると語った。

詳報をNikkei Asian Reviewに

◇   ◇   ◇


(1)「Nikkei Asian Review」が聞いた?

金再源記者は日経に属しているのではないか。だとしたら「Nikkei Asian Reviewに答えた」ではなく「日本経済新聞の取材に答えた」などでいい。日本経済新聞社所属の記者ではないのならば、その点を明示すべきだ。

詳報をNikkei Asian Reviewに」と末尾にあるので、「Nikkei Asian Review」の宣伝も兼ねているのだろうが、記事の作り方としては感心しない。


(2)「元幹部」が「語った」だけでは?

サムスン元幹部で、漢陽大学で半導体工学を専攻するパク・ジェグン教授が、サムスンがベルギーに本拠を置く会社からフォトレジストを調達していると語った」ものの、「サムスンはベルギーからの材料調達については回答しなかった」という。なのに「韓国のサムスン電子が、ベルギーから半導体チップを製造するための化学材料を調達していることが分かった」と断定してよいのか。

情報源の「パク・ジェグン教授」は「サムスン元幹部」であって今の「幹部」ではない。確かな情報筋なのだと判断しているのだろうが、「分かった」と断定するのは常識的に考えれば難しい。なのに朝刊1面に持ってきたのが解せない。


(3)いつから「調達」を始めた?

記事では「日本の韓国向けの輸出管理の厳格化を受けた措置とみられる」と書いているものの、いつから「調達」を始めたのかは教えてくれない。過去の話ではあるが、この件では時期が重要だ。

日本の韓国向けの輸出管理の厳格化を受けた措置」かどうかは、「調達」を始めた時期が分からないと何とも言えない。「パク・ジェグン教授」が時期を明らかにしないのならば、そう書いてほしい。


※今回取り上げた記事「サムスン、ベルギーから半導体材料調達 代替ルートに
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190811&ng=DGKKZO48475570Q9A810C1MM8000


※記事の評価はC(平均的)。金再源記者への評価も暫定でCとする。

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