2019年5月30日木曜日

「マイナス利回り」の説明に誤り 日経「長期金利、世界で急低下」

マイナス利回りとは、例えば額面100円の国債を101円で買うことを指す」という説明は正しいと言えるだろうか。個人的には違うと思うが、日本経済新聞ではそう解説していた。このケースでは「満期まで保有すると確実に損する」らしい。しかし、損するかどうかは表面利率次第だ。
長崎鼻にある 見えないベンチ(オノ・ヨーコ)
(大分県豊後高田市)※写真と本文は無関係です

日経には以下の内容で問い合わせを送った。


【日経への問い合わせ】

30日の日本経済新聞朝刊経済面に載った「長期金利、世界で急低下 日本も2カ月ぶり水準~マイナス金利国債残高が最高 貿易摩擦で景気悪化懸念」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

マイナス利回りとは、例えば額面100円の国債を101円で買うことを指す。満期まで保有すると確実に損するが、途中で102円で買いたい相手が出てくると見込めば、マイナス利回りでも取引は成立する

この説明を信じれば「額面100円の国債を101円で買う」と「マイナス利回り」になるはずです。しかし、そうとは言えません。利率が絡んでくるからです。表面利率1%、残存期間5年、投資金額101万円の場合で考えてみましょう。

得られる利子収入は5万円ですが、償還時に1万円の損失が発生します。差し引き4万円の利益が得られます。年間では8000円です。利回りは1%に届きませんが、当然にプラスです。「マイナス利回り」にはなりません。「満期まで保有」しても「」は出ません。

記事の説明では表面利率を無視して「利回り」を考えていませんか。「マイナス利回りとは、例えば額面100円の国債を101円で買うことを指す」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

せっかくの機会なので、記事で他に気になった点を記しておきます。

今回の記事のテーマは「長期金利、世界で急低下」です。しかし記事を読んでも「世界で急低下」しているかどうか、よく分かりません。

国内の債券市場では29日、長期金利がマイナス0.100%と2カ月ぶりの水準に低下した。金融機関が日銀に預ける当座預金の一部に課されるマイナス0.1%の金利水準と並んだ。米国の長期金利も28日に一時、米政策金利(2.25~2.50%)下限を下回った」といった記述はありますが、どの程度の「低下」なのかには触れていません。

また、いつと比べて「急低下」なのかも不明です。「23日時点の『マイナス利回り国債』の発行残高はこの半年間でほぼ倍増した」と書いているので「急低下」に関しても「この半年間」で見ているのかと思いましたが、それを確認できる記述は見当たりません。

世界で急低下」と打ち出しているのに「低下」の事例として出しているのが日米だけというのも感心しません。「マイナス利回り」の国債に絡めて欧州には言及していますが「長期金利」が「低下」しているとは書いていません。「世界で急低下」と言うのならば、日米欧に加えて新興国の動向も入れたいところです。

今回は日米のみ。しかもいつに比べてどの程度の「低下」かも説明せずに「金利が急低下」と言われても、記事を信じる気にはなれません。記事の作り方の基本ができていないと感じました。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「長期金利、世界で急低下 日本も2カ月ぶり水準~マイナス金利国債残高が最高 貿易摩擦で景気悪化懸念
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190530&ng=DGKKZO45423210Z20C19A5EE8000

※記事の評価はE(大いに問題あり)

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